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補強ゼロでも問題なし?スロット・リヴァプールが見せた可能性

6日の朝、アルネ・スロット監督のもとに初めてリヴァプールの全選手が揃った。注目すべきは、AXAトレーニングセンターに集まった中で、新加入は監督自身だけであること。レッズはプレミアリーグで唯一、この夏の移籍市場でまだ誰とも契約していないチームである。

リヴァプールの新シーズンはおよそ2週間後のイプスウィッチ戦から始まるが、すでにアンフィールド周辺の緊張が高まりつつあるのは当然のことだ。オランダ出身指揮官の就任1年目での成功という希望が、フェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)の「倹約的な方針のせいで潰されるのではないか」という不安は消えない。

だが、不安が怒りに変わるようなことはまだ起こっていない。ひとつには、昨季限りで去っていったユルゲン・クロップの置き土産があるからだ。リヴァプールは昨年夏の中盤の総入れ替えが成功、チャンピオンズリーグへの復帰だけでなく、同時に“キッズ”たちがカラバオ・カップ優勝を達成した。

さらに、クラブのスポーツ部門での大改造のひとつとして新しくSD(スポーツダイレクター)に就任したリチャード・ヒューズが、マージーサイドに来て早々、比較的静かな夏が締め切り日直前に「最高潮」を迎えると語ったのだ。つまり、リヴァプールはこれから月末までに最低でも数回のビッグディールを予定している可能性がある。

しかし、補強のない状況でサポーターが比較的冷静でいられるのは、新監督の下で臨んだプレシーズンがほぼ完璧に近かったことが大きい。不安を抱く人々を信者に変えるという、前任の名監督を見習おうとするスロット監督の試みは、これ以上は望めないほど良いスタートを切ったのだ。

  • Mohamed Salah Liverpool 2024-25Getty

    完璧だったアメリカツアー

    もちろん、たかが親善試合を深読みしたところで大した意味はない。夏のこの時期、多くのスター選手たちは主要国際大会から回復途中であり、トップチームにベストイレブンが起用されることはほとんどない。試合に出ることがあっても、前半だけで交代するのが普通だ。

    しかしながら、プレシーズンに問題が発覚することもあれば、明るい見通しが現れることもある。慎重なサポーターでさえも、アメリカツアー中のスロット・リヴァプールが見せてくれたものに興奮しないわけにはいかなかった。

    レッズはレアル・ベティスに1-0で勝利した後、今度はアーセナルを2-1で撃破し、さらにマンチェスター・ユナイテッドを3-0で破った。3戦3勝、6ゴール1失点。数字だけ見ても素晴らしいが、実際のプレーはさらに素晴らしかった。

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  • Arne Slot Liverpool 2024Getty Images

    我慢強いポゼッション

    リヴァプールは決して毎試合「トータル・フットボール」をしていたわけではないが、魅惑的な質の高いパフォーマンスの連続で、心強くスロットのスタイルがどういうものかがさっそく明らかになった。球際は大胆かつ勇敢で、常に後方からのビルトアップを狙いつつ、自陣深くのタイトなスペースから素早いパス回しで相手のプレスをかわしていた。

    アメリカでの得点のいくつかは格別だった。リヴァプールは我慢強く見事なポゼッションを見せた後、突然きらめくような爆発力で相手を切り裂いたのである。

    ヒューズSDは以前から「スロットはクロップとプレースタイルが近く、後継者として理想的」と認めていたが、アーセナル戦ではクロップ時代の象徴であった爆発的なトランジションを見ることができた。特に1点目はクロップ時代の典型的なゴールを思わせるもので、GKクィービーン・ケレハーの正確なパスからほんの数秒で、ディオゴ・ジョタやハーヴェイ・エリオットの美しいワンタッチプレーが続いた後、モハメド・サラーがおなじみのゴールを叩き込んでいる。

  • スロット・スタイル

    それだけでなく、スロット監督の影響も早くも明らかになった。彼らは自陣でボールを持つとすぐに前線へ蹴るのではなく、選択肢が少ない場合はGKケレハーにボールを戻すことを厭わない。そして、状況を見つつ一気にスピードを上げるのだ。

    それはマンチェスター・U戦でも同じだった。スロット・リヴァプールは、スペースを空けるまでは後方でボールを持っている。3点目はその完璧な例で、中盤深い位置でプレーするライアン・グラフェンベルフがDFとパス交換した後、ライン間にいたエリオットに預けた。多才な21歳は2タッチで決定的な仕事を見せ、コナー・ブラッドリーとの見事なワンツーから、最後はコスタス・ツィミカスが押し込んでいる。

  • Arne Slot Liverpool 2024Getty

    完璧主義者

    スロット監督自身も、リヴァプールがアメリカで「真に素晴らしい得点」を決めたと自画自賛したが、チームのパフォーマンスに必ずしも満足していないことも興味深い。例えば、最も素晴らしかった勝利はマンチェスター・U戦だろうが、指揮官は失敗したチャンスの数に苛立っており、最終的なゴール数に満足してはいけないと話している。

    さらに言えば、スロット監督は何度か「試合をコントロールできていなかった」とも嘆いている。監督がアンフィールドで本当に達成したいことが何なのかがよくわかる。スロットの目標が、できるだけ多く相手のポゼッションを奪うことであることは明らかだ。ペップ・グアルディオラのサッカー哲学を称賛してやまない監督の作戦としては、まったく当然のものである。

    そのため、すでに、スロット監督のプレースタイルはクロップ時代ほど選手を苦しめないだろうと言われている。クロップ・リヴァプールの容赦なさは、敵を圧倒するその方法、チームが疲労してしまったことも事実だ。もちろんまだ始まったばかりのことではあるが、スロットがチームを徹底的に追い込むのではなく、柔軟に対応しようとしているのは目に見える変化だ。

  • Harvey Elliott Liverpool 2024-25Getty

    輝くスターたち

    そして、スロット・リヴァプールがまだ最高の力を発揮しているわけではないことも覚えておくべきだろう。プレミアリーグ開幕戦で誰が先発するのか、まだ正確にはわからない。とはいえ、プレシーズンマッチで輝く選手が多かったのは好材料だ。

    前述したように、エリオットはスロットのシステムにぴったりとはまっているようだった。リヴァプールはポゼッションで3-4-4のフォーメーションを採用。ゴールキーパーが効果的にセンターバックの補助として機能し、サラーはケガの影響を受けた2023-24シーズンを終えて、全盛期が戻ってきたように見えた。

    ジャレル・クアンサーも、ニューカッスルがアンソニー・ゴードンのトレードの一環として求めたのをリヴァプールが拒否したことを100%肯定するパフォーマンスを見せた。興味深いことに、ファビオ・カルヴァーリョもアーセナル戦とマンチェスター・U戦で得点し、アンフィールドでの未来があるかもしれないことを感じさせている。

  • Arne Slot Liverpool 2024-25Getty Images

    忍耐と時間

    とはいえ、何人かの選手が移籍市場閉幕までに動くことはあり得るだろう。現在スカッドの選手が多すぎるのは事実だ。リヴァプールはアメリカツアーに28人を連れて行ったが、代表選手たちの復帰でさらに数が増えている。

    そのため、8月の最終週までに出入りがあることは避けられない。そして、新たに契約する選手たち次第で、今シーズンのリヴァプールがどれほどの高みを目指せるのかが決まるだろう。

    その点に関して、忍耐が必要なのは明らかだ。さらに、スロット監督にもプレミアリーグに慣れる時間は必要だろう。早々に多くを望みすぎるのはフェアではない。スロット監督は、2015年10月にクロップが来た時と似たような経歴を背負ってアンフィールドに来たのではない。スロット監督の就任をめぐっていくつか悲観的な意見があるのも当然のことなのだ。

    確かに、フェイエノールトでは素晴らしい仕事をした。彼のリヴァプールが競争力のある魅力的なチームであることは、すでにプレシーズンで明らかになった。不安を抱く人たちすべてが突然信者になるわけではないのは当然だが、スロット監督はそのうちの何人かを完全に黙らせた――少なくとも今のところは。