わずか半年前、コンテ監督はナポリを4度目のセリエA優勝に導いたが、今や、選手たちとの関係は成績以上に悪化しているようだ。ボローニャ戦で全く覇気を感じさせないような敗北を喫した直後、監督はチームを「死体」に例えた。
一体、イタリア王者のナポリに何が起きているのだろう。コンテ監督は本当に選手たちの信頼を失ってしまったのか。それとも、自身の去就が危ういと言うことで、不振のチームからやる気を引き出そうとしているだけなのか。
Getty/GOALわずか半年前、コンテ監督はナポリを4度目のセリエA優勝に導いたが、今や、選手たちとの関係は成績以上に悪化しているようだ。ボローニャ戦で全く覇気を感じさせないような敗北を喫した直後、監督はチームを「死体」に例えた。
一体、イタリア王者のナポリに何が起きているのだろう。コンテ監督は本当に選手たちの信頼を失ってしまったのか。それとも、自身の去就が危ういと言うことで、不振のチームからやる気を引き出そうとしているだけなのか。
Getty Images Sportコンテ監督が論争の的になるのは珍しいことではない。短気なことで有名な監督は何度もオーナーと対立してきたし、通常、その原因は、オーナーたちが移籍市場でカネを出し渋ることにあった。ユヴェントス時代に「ポケットに10ユーロ(約1,800円)しかないのに100ユーロ(約18,000円)のレストランで食事はできない」と嘆いた発言は伝説となり、イタリアサッカー界の格言となった。しかし、そんなコンテ監督の発言を理解する人々にとってでさえ、ナポリ監督として初めて指揮を執る前から投資不足を嘆いていた彼の言葉は問題となっていた。
もっとも、この件に関してはコンテ監督の不満にも根拠があった。ヴィクター・オシムヘンを巡る不手際な対応のせいで、クラブの夏の補強は本来より大幅に遅れた。コンテ監督と同じく率直な物言いで有名なナポリのアウレリオ・デ・ラウレンティス会長も、昨シーズンのスクデット獲得は実に驚くべき成果だったと認めている。なんと言っても、優勝争いの真っ最中に財政的理由でフヴィチャ・クヴァラツヘリアを売却せざるを得なかったのだから。
「コンテ監督は、様々な出来事や負傷者続出の中で、手持ちの選手をやりくりし、1つではなく4つか5つの異なる戦術システムを使いこなした」と、デ・ラウレンティス会長は5月の優勝パレードで熱く語った。「コンテ監督は、システムなど無意味だと世界中に示した。必要なのはサッカーの本質を深く理解することだけだ。だからこそ、彼は、我々を3年ぶり2度目のスクデット獲得へと導いた。彼に拍手を送ろう。ありがとう、ありがとう、ありがとう!」。
Getty Images Sportしかし、デ・ラウレンティス会長は、コンテ監督への感謝を述べたまさにその演説の中で、同時に「今後の彼の監督としての人生において、継続的な成功」を願うと述べた。これは、監督がすでに、1シーズン限りの指揮でナポリを去る決断を下し、ユヴェントスへ復帰するという噂を裏付けるように思われた。
もっとも、コンテ監督は終始、デ・ラウレンティス会長と話し合うまで自身の将来について決断しないと主張し、会長との真剣な話し合いの結果、クラブがシーズン中にいくつかの過ちを犯したことを認めたため、監督を続投すると宣言した。
「1月に起きたことは誰もが認識している」と、6月にコンテ監督は語った。
「シーズン中、私にとって不本意なことが、いくつかあった。新戦力が加入したのが(夏の移籍市場の)最終週だった。(スコット・)マクトミネイ、(ビリー・)ギルモア、(ダヴィド・)ネレス、(ロメル・)ルカクだ。正直、気に入らなかった」
「それでも私は状況を前向きに受け止め、選手や自分自身に言い訳をしない姿勢を貫いた。契約には名誉と義務が伴う。だが、話し合いの場で、彼らは過ちがあったことを認めた。新婚当初にはよくあることだ。いくつかの点で納得できたので、我々は継続で合意した。これからはスクデットの防衛に専念する」
Getty Images Sport残念ながら、コンテ監督とナポリの結婚は非常に簡単に離婚に終わる可能性がある。だがそれは、移籍を巡ってコンテ監督とクラブの間に新たな緊張が生まれたせいではない。
ナポリは夏にコンテ監督の望みをほぼすべて叶え、8人の選手を総額およそ2億ユーロ(約363億円)で獲得。同時にフリーエージェントとなったケヴィン・デ・ブライネと契約して、ルカクに次ぐクラブ史上2番目の高年俸選手とした。セリエAの基準では、これは途方もない支出であった。にもかかわらず、コンテ監督は、今シーズンこれまでのチームの不安定なパフォーマンスの言い訳としてナポリの補強を挙げている。
「昨シーズンは選手たちが限界まで自らを追い込み、あらゆる面で結束して優勝を勝ち取った」と、コンテ監督はPSV戦で2-6の衝撃的な敗北を喫した後、『スカイスポーツ』のインタビューで語った。
「私に言わせれば、新戦力9人は多すぎる。移籍市場を開いたのはやむを得ない事情があったからだ。戦力強化を試みたが、それには時間と忍耐が必要だ。9人の新戦力をロッカールームに受け入れるのは容易ではない。ベテラン選手や私自身、昨シーズンからのメンバーも、試合のレベルを上げ、結束を取り戻さねばならない」
AFPしかしながら、アイントホーフェンで屈辱を味わったわずか4日後にインテルを破り、かつてのナポリらしさを取り戻したかに見えた一方、その後はチーム全体の連携不足と創造性の欠如による得点力不足に苦しんでいる。
インテル戦でPKを決めた際に負った深刻なハムストリングの負傷でデ・ブライネを失ったことは、当然ながらナポリの攻撃に壊滅的な打撃を与えた。ここ数週間、ラスムス・ホイルンドの得点力が枯渇している理由の一端も、そこにあるだろう。ロレンツォ・ルッカのレンタル移籍も結果が出ず、ルカクがまだ完全なコンディションに戻っていないことを考えると、これは重大な問題だ。実際、ナポリは全公式戦の直近3試合で得点を挙げられていない。
しかしコンテ監督を真に悩ませているのは、チームの運動量だ。ナポリは昨シーズンのような躍動感に欠けている。その理由が、昨シーズンはヨーロッパの大会に出場しなかったナポリが、チャンピオンズリーグへの参戦で増した負担にまだ適応しきれていないことにあるのは明らかだ。とはいえ、一部のサポーターや評論家はコンテ監督を非難している。
AFPコンテ監督は低迷するチームの監督になった最初の年にチームを立て直して優勝を果たすなどの成功を収めてきたが、ヨーロッパの大会での成績は惨憺たるものだ。その理由は常に、コンテ流の「時速200キロ」のサッカーを3~4日おきにプレーすることが物理的に不可能だという点にある。まさにそのために、ナポリMFスタニスラフ・ロボツカの代理人ブラニスラフ・ヤスレックがスロバキアのポッドキャストで「私のクライアントは、契約満了まで身体的に耐えられない可能性がある」と発言し、イタリアで話題となった。
「コンテの要求は残酷なほど過酷だ」と、ヤスレックは語った。「統計的に見ても、監督の要求する走行距離は他とは比べものにならない」。
ヤスレックは後にこの発言は冗談だったと主張したが、多くの関係者は、コンテ監督が主力選手の入れ替えを渋る姿勢を深刻な問題と見ている。さらに、ノア・ラングもコンテ監督のコミュニケーション能力の低さを非難したも同然の発言をした。ラングは夏にPSVから2,500万ユーロ(約45億円)で加入して以来、先発出場がわずか1試合に留まっている。
「他に何をすべきかわからない」と、ウイングのラングは、フィリップス・スタディオンで古巣に大敗した後に語った。
「僕は一生懸命トレーニングしている。彼(コンテ監督)とはあまり話していない。話したのは一度だけだと思う。でも何も言わない方がいい。他に選択肢はない。ここと契約した以上、現状を受け入れるしかない」
とはいえ、状況はすぐに変わる可能性がある。
Getty Images Sport今月初めのコモ戦とフランクフルト戦での精彩を欠いた引き分けの後、コンテ監督はインターナショナル・ブレイク直前のボローニャ戦で勝利し、今シーズンをよみがえらせようと選手たちに懇願した。しかし、ナポリはボローニャ戦で敗戦を喫し、セリエAの首位から4位に転落。監督は「シーズン終了まで『死体に寄り添う』つもりはない」と発言し、意図せずして、コメディ映画『バーニーズ あぶない!?ウィークエンド』を連想させることとなった。
「心臓移植は選択肢にない」と、コンテ監督は『DAZN』で語った。「我々ひとりひとりが闘志と粘り強さを取り戻す必要がある。あらゆる面でエネルギー不足だった。残念なのは、相手の方が我々よりも前向きで、意欲を見せていたことだ。これは反省すべき点である。今シーズン5度目の敗戦だ」。
「クラブとは話し合うが、開幕から3~4カ月が過ぎたのに、チームワークも、共に戦う意欲も生まれていない。状況を変えられるか、分からない。ピッチ上の技術や戦術について議論するのもアリだが、しかし他の部分を見ると、申し訳ないが、私がよい仕事をしていないということだ。あるいは、誰かが私の言葉を聞こうとしないのかも…」
この時点で、コンテ監督が辞任を真剣に検討しているとの憶測が飛び交った。デ・ラウレンティス会長は、こうした噂を「ナンセンスだ」と一蹴し、「私とコンテ監督の間には常に特別な調和が存在している。それは『3つのC』——人格(Character)、能力(Competence)、勇気(Courage)——を発揮する者同士を結びつけるものだ」と主張した。
それでもコンテ監督は休息を取る必要を感じ、56歳の指揮官はトリノへ北上して家族と1週間を過ごした。その間、アシスタントのクリスティアン・ステッリーニが練習を統括し、ナポリの何人かの選手は代表戦のため離脱していた。月曜日に復帰したコンテ監督は、活力を取り戻し、チームのシーズンを立て直す決意を新たにしていると報じられている。しかし、次の1週間が極めて重要だ。ナポリはアタランタとカラバフ相手に2つのホームゲームに挑むが、当然ながら勝利が期待されている。
だが、ある意味、元FWのロベルト・ソーサから「監督を追い出したいかのようなプレー」と批判されたナポリの選手たちにとって、結果以上に重要なのは試合内容だ。もし土曜に再び気力のないプレーを見せれば、コンテ監督はその願いを叶えることになるかもしれない。