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アイデンティティーの相克、マドリーダービーは新局面へ!最強の顔をのぞかせるレアル vs ついに選手層で凌駕した反逆者アトレティコ

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人生において、チャンピオンズリーグ(CL)で行われるマドリーダービー以上に面白いことなど、ほんのわずかしか存在しない。

さすがに大袈裟だって? いや、そのことを証明しているのは、これまでの歴史にほかならない。CLで行われるマドリーダービーは、2013-14、2015-1シーズンの決勝での対戦を含めて、確かにいつもマドリーが勝利をつかんできた。しかしアトレティコは、ときに感動的なまでの抵抗を見せることによって、この首都決戦の勝利の価値を極限まで高めている。

シーズン終盤に突入する中、チームが機能するためのパズルを解きつつあるマドリーは、リヴァプールと並びCL優勝を果たせるポテンシャルさえ感じさせ始めた。だがアトレティコはそんな彼らを止められる可能性を持つ、数少ないチームの一つなのだ。

文=ハビエル・シジェス(Javier Silles)/ スペイン紙『アス』副編集長

翻訳= 江間慎一郎

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    アイデンティティーの対比

    マドリーとアトレティコのライバル関係は、フットボールの枠を越えた感情的なものだ。マドリー、またはアトレティコに注ぐ愛情は基本的に親から子へと受け継がれていくもので、彼らはスペイン首都でずっと火花を散らしてきた。

    地域にもよるが、やはり数で勝るのはスター選手揃いの常勝軍団マドリーであり、小学校の1クラスでは30人中20~25人が彼らの信奉者だったりする。そして、そうしたマドリーの支配的ムードに、アトレティコの信奉者たちは抵抗し続けてきた。劣勢を押しのけて勝利をつかもうとするからこそ彼らの応援は熱狂的で、またダービーの翌日にはたとえ負けたとしても……いや、負けたからこそ赤白のユニフォームを着て登校し、我がクラブへの愛情を堂々と誇示する。

    マドリーが勝って当たり前のクラブならば、アトレティコは信じることを止めずに努力していれば、いつの日か成功に届くという人生哲学の反映である。……まあ、シメオネが監督となってから彼らも勝利に慣れ親しむようになったのだが、マドリーとの関係性から見れば、その立ち位置は変わらない。CLで15回優勝しているマドリーが、優勝直後から次のビッグイヤー獲得を宣言するのに対して、アトレティコはただ1回の優勝を追い求め続けているのだから。

    アトレティコの人々は約10年前のダービーで「お前たちのような人間でないことが誇り」との横断幕を掲げたが、今なおそうした感情を抱え続けている(言い換えれば、彼らのアンデンティティーはマドリー抜きで語れないのだろう)。一方のマドリーは下から這い上がっていくのではなく、毎試合勝つのが当たり前の常勝軍団であるがゆえに、ドラマチックに描写するのが難しいクラブでもある。しかし単純に世界最高のスター選手たちが躍動する魅力、常に巨大な重圧を抱えながらも勝ち続けていく逞しさ、逆境の中でも自分たちの誇りを輝かせて逆的勝利を果たす様子には、心を動かされるものがある。

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    “最強”に届き得るチーム

    欧州スーパーリーグ創設、下部組織の選手の強奪、スペインフットボールの審判問題……マドリーとアトレティコは最近、あらゆるテーマで対立しており、両クラブの関係性はかつてないほど緊張が走っている。いずれにしても、彼らが決着をつけるべきはピッチの上にほかならない。

    マドリーは調子を上げながら、シーズン終盤の入り口にたどり着いた。……そう書くにはあまりにバツが悪く、CLダービー直前のベティス戦でこれまでの悪い癖をさらけ出しながら負けてしまったが、それでも“最強”に届き得るチームであることはすでに示している。アトレティコ戦では、間違いなくそちらの方のマドリーが見られるはずだ。

    今季のマドリーはエンバペが加入したこともあって攻守のバランスが取れなくなっていたが、ここ最近大きく改善されている。ピッチ中央のやや後方で展開する4-4-2の守備ブロック、リスタート時に仕掛ける適切なプレッシングによって、彼らの守りはようやく安定を見たのである。

    守備意識が著しく欠けていたヴィニシウスとエンバペは、少なくともパスコースを塞ぐようになり、中盤ではチュアメニ、カマヴィンガ(またはモドリッチ。バルベルデは現状、人材不足の右サイドバックでプレーすべきだ)がライン間のスペースをコントロールし、ディフェンスラインとの距離が開かぬように注意を払う。FW、MF、DFのラインをしっかり狭めてコンパクトに守れるマドリーは、そこから強力無比なカウンターを発動することができる。

    マドリーにとってのカウンターは、アタッカーたちの圧倒的な個人技を解放する手段だが、その攻撃力はエンバペの加入で増大することになった。とはいえアトレティコとの試合では、シメオネが主導権を譲る気満々のために、カウンターの発動回数は激減するだろう。ただ現在のマドリーはポジショナルな攻撃も良い。そのことはCLプレーオフのマンチェスター・シティ戦、リーガ後半戦のマドリーダービーで証明されている。サイドからサイドにボールを動かし、2列目から何人もの選手を飛び出させる攻めは迫力十分。鍵を握るのはサイドに張って1対1を狙うロドリゴ、ヴィニシウスだが、彼らのドリブル能力はアトレティコのすべてのサイドバック(モリーナ、アスピリクエタ、ジョレンテ、ガラン、レイニウド)の守備力を上回っている。

    アンチェロッティは全選手に守備を義務付け、一方でボールを保持するときにはかなりの自由を与えている。頻繁なポジションチェンジは彼らの攻撃をさらに豊かなものにしているが、とりわけベリンガムがライン間で見せるリンクマンとしてのプレーは絶品だ。アトレティコ戦、彼の累積警告による出場停止は、あまりにも痛い……。バルセロナのぺドリもそうだったが、アトレティコの組織的な守備を揺さぶり、亀裂を入れる上で彼らのように複数のポジションに顔を出しながらプレーする選手は貴重である。

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    マドリーを凌駕する選手層

    ダービー勝利の本命がマドリーであるとしても、アトレティコにも可能性は十分ある。

    今季、アトレティコの攻撃のポテンシャルに疑いの余地はない。その一方、守備では脆さも目につくのだが(先のリーガのダービーではマドリーにシュートを打たせ過ぎていたし、バルセロナ戦ではセットプレーから2失点を献上している)、それでもどんな逆境にも立ち向かっていく彼らのスピリット、“心の強さ”は健在である。

    シメオネがマドリー戦で狙うことは、はっきりしている。マドリー全体を自陣に引き寄せていき、不用意に後方にスペースを空けようものなら、グリーズマンとフリアン・アルバレスを生かしたカウンターで一気に刺す考えだ。とりわけJ・アルバレスは絶好調で、あらゆるプレーが冴え渡っている。またマドリーが自陣に引いて守るときにはデ・ポールのスルーパス、ジュリアーノ・シメオネ、サムエウ・リーノの両サイドからの崩しが脅威となるだろう。

    そして、アトレティコの今季最大の武器と言えるのが、ベンチに控える選手たちである。アトレティコはマドリーよりも選手層が厚い……そう書いても、もはや詭弁ではない(もちろん、これは“層”の話であり、一人ひとりの“質”ではマドリーに軍配が上がる)。今季のシメオネは後半途中からレギュラークラスの強力な選手を投入することで、大きな成果を挙げてきた。J・アルバレス、グリーズマンとの対戦に神経をすり減らしてきた相手DF陣にとって、空陸両用の重戦車スルロット、機動力抜群のアンヘル・コレアが途中から出てくることが、どれだけ厄介なのかは想像に難くないだろう。

    一時期は停滞していたシメオネ・アトレティコだが、大型補強を実現した今季には競争力を取り戻しており、たとえマドリーであっても相当に骨が折れる相手であることは間違いない。フットボールに対する価値観、人生観の違いが際立つスペイン首都の2クラブによるCLダービーは、また新たな興奮や感動をもたらしてくれるだろう。ぜひとも、見逃さないでほしい。

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