欧州スーパーリーグ創設、下部組織の選手の強奪、スペインフットボールの審判問題……マドリーとアトレティコは最近、あらゆるテーマで対立しており、両クラブの関係性はかつてないほど緊張が走っている。いずれにしても、彼らが決着をつけるべきはピッチの上にほかならない。
マドリーは調子を上げながら、シーズン終盤の入り口にたどり着いた。……そう書くにはあまりにバツが悪く、CLダービー直前のベティス戦でこれまでの悪い癖をさらけ出しながら負けてしまったが、それでも“最強”に届き得るチームであることはすでに示している。アトレティコ戦では、間違いなくそちらの方のマドリーが見られるはずだ。
今季のマドリーはエンバペが加入したこともあって攻守のバランスが取れなくなっていたが、ここ最近大きく改善されている。ピッチ中央のやや後方で展開する4-4-2の守備ブロック、リスタート時に仕掛ける適切なプレッシングによって、彼らの守りはようやく安定を見たのである。
守備意識が著しく欠けていたヴィニシウスとエンバペは、少なくともパスコースを塞ぐようになり、中盤ではチュアメニ、カマヴィンガ(またはモドリッチ。バルベルデは現状、人材不足の右サイドバックでプレーすべきだ)がライン間のスペースをコントロールし、ディフェンスラインとの距離が開かぬように注意を払う。FW、MF、DFのラインをしっかり狭めてコンパクトに守れるマドリーは、そこから強力無比なカウンターを発動することができる。
マドリーにとってのカウンターは、アタッカーたちの圧倒的な個人技を解放する手段だが、その攻撃力はエンバペの加入で増大することになった。とはいえアトレティコとの試合では、シメオネが主導権を譲る気満々のために、カウンターの発動回数は激減するだろう。ただ現在のマドリーはポジショナルな攻撃も良い。そのことはCLプレーオフのマンチェスター・シティ戦、リーガ後半戦のマドリーダービーで証明されている。サイドからサイドにボールを動かし、2列目から何人もの選手を飛び出させる攻めは迫力十分。鍵を握るのはサイドに張って1対1を狙うロドリゴ、ヴィニシウスだが、彼らのドリブル能力はアトレティコのすべてのサイドバック(モリーナ、アスピリクエタ、ジョレンテ、ガラン、レイニウド)の守備力を上回っている。
アンチェロッティは全選手に守備を義務付け、一方でボールを保持するときにはかなりの自由を与えている。頻繁なポジションチェンジは彼らの攻撃をさらに豊かなものにしているが、とりわけベリンガムがライン間で見せるリンクマンとしてのプレーは絶品だ。アトレティコ戦、彼の累積警告による出場停止は、あまりにも痛い……。バルセロナのぺドリもそうだったが、アトレティコの組織的な守備を揺さぶり、亀裂を入れる上で彼らのように複数のポジションに顔を出しながらプレーする選手は貴重である。