Real Madrid Barcelona 2021Getty

【徹底分析】レアル・マドリーにあってバルセロナにない「歴史」…勝利に導くジダンのプランを西紙分析担当が紐解く

10日に行われたラ・リーガ第30節、レアル・マドリーとバルセロナによる世界最大級の一戦“エル・クラシコ”は、2-1でホームのレアル・マドリーに軍配が上がった。

レアル・マドリーは13分、フェデ・バルベルデの推進力溢れるドリブルを最後はカリム・ベンゼマが華麗にヒールで完結させ、先制に成功。28分にはゴール手前で得たFKをトニ・クロースが直接蹴りこみ、リードを広げた。60分にはオスカル・ミンゲサに1点を返され、90分にはカセミロが退場になりはしたが、大雨が降りしきる一戦を2-1で制している。

では、今回の“エル・クラシコ”で勝敗を分けたものは何だったのだろうか? スペイン大手紙『as』で試合分析を担当するハビ・シジェスは、両クラブが歩んできた「歴史」を明確に映し出していると指摘する。では、その「歴史」とは何か? フットボール大国トップクラスのアナリストが紐解いていく。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■ジダンが示した知性、確信、抵抗

Zidane Barcelona Real Madrid Clasico 2021Getty

クラシコの歴史が双方のプレースタイルからその輪郭を浮き上がらせてきたとしたら、最新の一戦以上に好例はないだろう。レアル・マドリーとバルセロナは、すべての面で異なっていた。

ジネディーヌ・ジダンはその知性、確信、抵抗によってロナルド・クーマンに打ち勝ち、マドリーをラ・リーガ連覇へと導こうとしている。一方でバルサはまたもや大一番を落として、その力量に疑問符がつくことになった。彼らの負け方は、実際的に憂慮すべきものである。

クーマンは、結局はどこにも存在しない試合を想定していた。マドリーがハイプレッシングを仕掛けて、ボールポゼッションで競い合う試合になることを。だがジダンはそんなことを考えてはおらず、意図的にバルサにボールを譲り(バルサのポゼッション率は68.9%)、彼らの脆弱な攻撃から守備へのトランジションを突くことに集中。そのゲームプランは完璧に遂行され、リアクションが遅れたバルサはこれまでと同じようにやり切れない思いを抱くことになった。

■ゲームプランで勝利したマドリー

Valverde-real madrid(C)Getty Images

マドリーは走ることを望み、かつてないほど走っていた。ジダンがスタメンに含めたフェデ・バルベルデはDFライン、中盤、前線におけるプラスアルファの選手となったが、とりわけジョルディ・アルバにとっての完璧な蓋だった。彼らは自ゴールから平均45.9メートルと低いところにブロックをつくり、いつプレッシングを仕掛けて、いつそうしないかを見事に判断している。バルベルデがJ・アルバに対応することで最終ラインまで下がり、右サイドバックのルーカス・バスケスが3人目のセンターバックとなる5バックのような形でもって、リオネル・メッシ、ペドリ、J・アルバの連係を分断。時折、ルカ・モドリッチとトニ・クロースの背後を取られはしていたが、バルサのポゼッションをほぼ無効化して効果的な速攻を繰り返した。

マドリーは個々のデュエルで明らかに上回り、バルサは守備を最適化できぬままデリケートなエリアでボールを失い続けることに。マドリーは容易にボールを奪い、ボールを奪い返したいバルサの試みはモドリッチとクロースの技術を前にして無駄に終わった。マドリーの一時代を象徴する中盤2選手のタクトからカリム・ベンゼマ、ヴィニシウス・ジュニオール、バルベルデがそれぞれの長所を発揮し、対応するオスカル・ミンゲサ、ロナルド・アラウホ、クレマン・ラングレに先んじていった。バルベルデはJ・アルバが戻り切れないスペースを突き、ヴィニシウスはライン間やミンゲサの背後に入り込み、彼らをサポートするベンゼマはアラウホとの個人戦に勝利し続けている。ジェラール・ピケのいないバルサの3バックの守備は確かに緩慢だったものの、マドリーが狙い通りに試合を展開していたことも考慮しなくてはならないだろう。

バルサは前線からボールを奪うこともできなかったが、その理由は攻撃が良質なものではなかったからだ。しっかりとした攻撃が展開できたのは、ペドリが絡めたときのみ。スペースを得られないウスマン・デンベレは凡庸以下のストライカーとなり果て、かてて加えてエデル・ミリタンとナチョが持ち場を離れてスペースを得たときにも、効果的な動きを見せることがなかった。メッシも姿を表すことはなく、この夜のように冷え切っている。クロースのすぐ左でプレーしようとしていた背番号10だが、それはペナルティーエリアから遠ざかることを意味し、マドリーにとっては願ったり叶ったりのことだった。カセミロはバルサの中央での壁パスを阻み続けていた。

■“ライフ・ムービー”

Messi Real Madrid Barcelona Clasico 2021Getty

ゲームプランで勝利したジダンのチームは、カウンターからゴールをかっさらうことを予感させ続けた。が、バルサも後半にシステムを1-3-4-2-1から1-4-3-3に変えて、ある程度の改善を見せた。デンベレが右サイドに開き、メッシがライン間でボールに触れられるようになり、途中出場のアントワーヌ・グリーズマンがサイドと中央を動き回りながら攻撃の構築に関与。フレンキー・デ・ヨングの飛び出しにもマドリーは手を焼くことになった。その改善されたポジショナルな攻撃は、ボールを奪われた際にしっかりと予防線を張ることにも繋がっている。

あと少しでとどめを刺せたマドリーが、危機にもさらされていたことは確かだ。バルベルデがもう走れなくなったとき、J・アルバはこの試合のレベルに追いつけないアルバロ・オドリオソラ(負傷したバスケスに代わって出場)を抜け道とした。20回もボールを失うなど試合を通して不鮮明だったメッシは、それでもカセミロの両脇で解決法を探し続けた。ミンゲサの勇敢さとイライクス・モリバのシュートは、バルサを限りなく同点に近づけた。しかしながら結局、彼らは再び敗れ去ったのだ。

チーム全体の疲弊を受けたジダンは、マルセロを投入して5バックにシステムを変更。できる限りの必死の守備を見せて、実際にリードを守り切った。

マドリーがマドリーである理由は、そんなところにある。どんな形であっても自分たちが優れているときに勝ちを拾い、危機が訪れても生き残る術を知っている。それが彼らの歴史、バルサが持ち合わせていない歴史だ。バルサはどんな形であっても、とはいかない。勝利のためには徹頭徹尾、良質なパフォーマンスが必要であり、それはメッシにも同じことが言える。

クラシコが映し出したもの、それはマドリーとバルサの“ライフ・ムービー”だった。

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