ヴィッセル神戸で複数のポジションをこなしながら成長を続けるMF郷家友太は、2020シーズンの明治安田生命J1リーグでは24試合に出場して5ゴールを記録した。21歳の気鋭のアタッカーは、新シーズンの目標をどこに定め、さらなる飛躍を目指すのだろうか。
■同僚になった憧れのスター
――本日のテーマはヒーロー。郷家選手が「ヒーロー」と言われてパッと思いつく人は誰かいますか。
チームメイトでもいいなら、アンドレス・イニエスタ選手です。日本に来てから、チームにタイトルまでもたらしてしまうんですから、いまでも僕のヒーローですね。
――昔から憧れの存在だったのですか?
ポジションが近いこともあって高校の時もバルセロナの試合をよく観ていましたし、それこそ小学生くらいの時からサッカーゲームで普通に“使ってたり”しました(笑)。改めて、そういう選手といま一緒にできているのはすごく何か不思議な感じもあります。クラブW杯で優勝したときの試合をテレビで観ながら、「こんな強いチームが世界にはあるんだ」と衝撃を受けたのも覚えています。
――確かに「強いバルセロナ直撃世代」ですよね。バルセロナが欧州王者になって世界も制した2011年、郷家選手は12歳ですから。真似したりもしてましたか?
みんな影響されていたと思いますし、アンドレスがちょっと靴紐をアウトサイドのほうに寄せる結び方をするんですけど、友達はそれを真似したりしていましたね。もうバルセロナに所属してる選手は全員異次元だろうみたいな認識でした。あのチームの選手は全員知っていましたね。
――それがまさか一緒にプレーすることになるとは…。
そうですね。朝起きたら、メッセージの件数がすごいことになっていて…。みんな僕より情報が早かった(笑)。
――「イニエスタ来るってマジか?」みたいな?
そうです、そうです。「サインもらっといて!」とかいうのまで、本当にいっぱい来てましたよ(笑)。
――実際に会ってみてどうでした?
もっと動揺するというか、びっくりするのではないかと思っていましたが、「不思議な感じ」が勝っちゃいました。「イニエスタいる。マジいるわ」みたいな(笑)。
――「あれ。何か一緒にボール蹴ってるぞ」という?
そうです、そうです。「いや、マジにイニエスタ来ちゃってるじゃん!」みたいな(笑)。そんな感じです。びっくりよりは、ちょっと何か不思議な感じでしたね。でも、アンドレスが来日してきて最初の練習のことはすごく覚えています。
ミニゲームのような練習をやりましたが、その中でも本当に全然ボールを取られないし、味方のスピードを落とさないようなスルーパスを繰り出すんですよ。それを初日から見てしまったので、やっぱりもう「すごい」という言葉しか出てこなかったですね。そんなに体も大きくないですけれど、ボールの置きどころや体の使い方は本当にうまいな、と思いながら見てました。
――技を盗んだりといったことも考えてましたか?
一緒にやって2年半くらい経ちますよね。本当に日々学ばせてもらっていると思いますし、いろいろアドバイスももらえますし、それは他のクラブではないことかな、と思います。
■イニエスタからのポジショニング指導
(C)J.LEAGUE――どんなアドバイスを受けましたか?
来て最初の頃はポジショニングをよく言われました。(ボールに)寄り過ぎちゃう癖があったので、そこを我慢してスペースで待つことの大切さはよく教えてもらっていました。
——あえて外に立って相手を引っ張るところなどですね。郷家選手自身、サイドでのプレー経験は少なかったですもんね。
そうなんです。ずっと真ん中でやっていたし、そもそもドリブラーでもないので…。プロになってからサイドやっていたときはすごく戸惑いもありました。そういうときにアンドレスから「好きに中へ入ってきてボールに触ってもいいぞ」ということも言ってもらえて、結構自由にやらせてもらえました。
――純粋な技術面では簡単には真似できないと思いますが、ボールの置き方など参考にした部分はありそうです。
ボールの置き方、本当にすごいですね。あとは「どうしてあんなに相手との距離を一定に保ちながらボールを前に運んで行けるのかな?」と思いながら観ていました。あと、テレビでは分からなかったことですけど、足腰の強さがまるで違うというのは実際にやってみて強く感じました。
――日本の同サイズの選手とは違う強さ?
そうですね。あと何か懐に入っていけない。ディフェンスで対峙しているときに。練習でプレスへ行ってるのに、なぜか好き勝手やらせてしまう、みたいな(笑)。で、そこで下手に食いつき過ぎると、今度はワンタッチで精度の高いパスを出してきたり、フリックで出して味方を使ったり…。ボールを持たれたら、突っ込めなくなるんですよ。
――でも、試合になればそれが味方なわけですから(笑)。
頼もしいです(笑)。特に印象深いのはアンドレスが初めてJリーグでゴールを取ったときのジュビロ磐田戦ですね。一緒に出ていたので。ターンをした時点で、もう「やばー」ってボソっと言っちゃってましたね(笑)。そこからさらにキーパーをかわして決めてしまうあたり、もうさすがだな、としか思いませんでした。
――彼のパスを受ける立場としては何か印象に残ってますか?
日本人のパスって、結構バインバインしてしまうボールが多かったりするんですが、そういういわゆる“汚い”ボールをきれいにするのがうまいな、と思います。味方が無理な体勢で蹴って、ちょっと浮いてるパスとかをなかったことにするパスがすごいです。次の人が受けたら楽になるパスを日々もらっているので、逆に僕もそういうレベルを追求したいなとも思います。
――適当にラフなボールが来ても、止めて蹴ったら全部スムーズに回っていくようなパスが来る感じでしょうか?
そうなんですよ、どんなパスも止めちゃうんですよね。速くて浮いたボールとかは処理するのが難しかったりするんですけど、それを一発でターンしながらきれいに処理して味方に繋ぐみたいなプレーを自然にしてしまえるのは本当に凄いです。味方のパスが雑でも、アンドレスを挟むと、結果的にめっちゃいい繋ぎになっちゃう、みたいな。
――むしろ雑なほうがイニエスタのところで変化が出てうまくいったり、みたいなシーンもあったりしますか?
僕が覚えているのは、去年のアウェイのサガン鳥栖戦ですね。僕がヒールでちょっと浮いてしまったパスを出したんですが、それを「10」をマックスの力としたら、「2」ぐらいの力の軽めのループパスで、ドウグラスにアシストしていました。
――ドウグラスのシュートもすごかったやつですね。
決まった瞬間、何というか、「ありがとう」しか言えなかったです(笑)。もう前線の速い選手も自分のタイミングで走ったらそこに絶対出てくるので、ウイングの選手にしてもすごくやりやすいと思います。
■二桁得点を達成してチームの中心になりたい
(C)VISSEL KOBE――ヒーローと一緒に戦った2年半で郷家選手個人の成長というのもあったのではないでしょうか。
自分のプレー映像を振り返ると、一昨年のプレーよりも周りを見える回数が1回、2回とか増えていたりして、やっぱり影響を受けているんだなというのは感じました。ただ、去年は(リーグ戦で)5ゴール取れたんですけど、もっともっと決められた場面もありますし、アシストももっとできたなと思います。そこはむしろ悔しさがあって…。もっと今年、数字として残していけたらなと思っています。
――今年、ヴィッセル神戸のヒーローに自分がなる、中心選手になっていくというイメージはありますか?
個人の目標として二桁ゴールというのを掲げていて、二桁を取っている選手で中心になれない選手は多分いないと思います。まずはそこを目指して達成し、チームの中心になりたいと思っています。
――ゴールを増やすための課題は、決め切る部分ですか? それとも、チャンスに絡む回数自体を増やしたいですか?
どっちもだと思います。まず精度も絶対に大事です。多くて1試合3本で、少ない試合は1本来るか来ないかだと思うので、そこを決めていけるかは本当に大事だなと思います。同時にチャンスに絡んでいってシュートを打つ本数自体を増やすのも必要で、やっぱり両方ですね。精度も数も増やしたいです。
――昨年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)では1点を争う、本当に負けたら終わりのシチュエーションでの試合が続いて、シビアな経験もしましたね。
蔚山との試合では特に感じました。GKをかわして無人のゴールが空いていて、僕自身も心の中で「入った」と思ってしまいましたけれど、入らなかった。そして、それを決められないことによって、最後の最後で失点してしまって負ける。これがサッカーなんだと改めて感じました。逆に決めていれば勝ってたかもしれません。決め切る大切さは本当に大事だなと痛いくらいに感じました。
■五輪世代の海外組にも負けない結果を
――ただ、昨シーズン全体を見れば、郷家選手個人が大きく成長を感じさせた年だったとも思います。精神的なゆとりも出てきたように見えました。
1年目はもう焦りしかなかったですからね。ちょっと遠慮していた部分も少なからずあって…。1、2年目のプレーは、後悔しか残らなかったです。でも、その苦い経験が3年目に生きたかなとも思っています。別にミスしてもいいし、シュート外して落ち込むのではなく、どんどんチャレンジして次のチャンスを狙っていこうという気持ちでプレーできていたので。でも、そこに満足せず、今年はもっともっとチャレンジしていきたいです。
――1、2年目はミスしないようにってビビっていた感じですか?
そうです、まず高校のレベルとプロのレベルが違うので、特に1年目はそこに衝撃を受けながらプレーしていて、自信も持てなかったですね。ボールを持ったら「大切に大切に」という、そういう心でプレーしてしまうことが多すぎました。
――それが変わった理由は?
やっぱり去年はゴールが付いてきてたので、決めるたびに自信がちょっとずつ付いていったというのが大きかったですね。やっぱり自信です。今年はそれを最初から、開幕戦から得点に絡んで、どんどんもっともっと自信を付けてやっていきたいというのがあります。
――外野から観ている立場としては、1、2年目はポジションがなかなか定まらなくて、色々やる難しさもあったのかなと思いました。
「どのポジションが自分に合っているだろう」とか考え過ぎてしまって、本当に落ち込むくらいに迷っていた時期もありました。ただ、いろんなポジションをやることによって得られたモノも今にして思うと大きかったですね。この三年間、サイドバック、サイドハーフ、ボランチ、トップ下とやらせてもらいましたけど、いろいろな角度からピッチを見る経験をできたのは大きかったんだと思います。
サイドハーフのときはプレー面ではすごく苦戦しましたけど、そこで点を取ったことで首の皮一枚繋がって今があるとも思うので。ACLではボランチで試合に出て、「やっぱりここが合っているな」というのを再確認できました。ボランチかトップ下がいいなという自分の中での結論が出た感じですね。
――昨年末の五輪代表候補合宿でも自信を付けたんだなと感じました。
トップ下は久しぶりにやったんですけれど、すごく良い感じにできたので、自信を持ちながらやれていたかな、とは思います。正直に言うと、昨年のシーズンが始まる前は東京五輪を夢として持ってはいましたけど、なかなか目標として設定することができてなかったですね。でも試合に出て少しずつ、まだ全然大した結果ではないですけど、若干結果を残していくうちに目標として変わってきたという感覚はあります。
――五輪世代のトップ下というと、すごい選手が他にもいっぱいいるし、海外でやっている選手も複数います。そこで勝負していくというハードルの高さについて、自分ではどうですか?
五輪は登録メンバーも本当に少ない(18人)ですし、トップ下には海外でバリバリやってる選手もいて、すごい厳しいポジションっていうのは分かっています。でも、Jリーグで結果を残していけば見えてくるところでもあると思っているので、海外の選手に負けないような結果を見せていきたいですね。
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