「他のクラブだったら行っていなかった。だがバルセロナとなったら事情は違う。これはまさに夢だ。僕にとって魔法のような場所なんだ」
2018年1月にリヴァプールからカンプ・ノウへの移籍が確定し、フィリペ・コウチーニョはこのように語っていた。
それから2年半。夢は悪夢へと変わってしまった。
コウチーニョは12日で28歳になった。しかし、脂の乗り始める年齢にあっても彼はまさにキャリアの岐路に立たされている。今夏は再び移籍先を探すことになるだろう。だが、移籍先はどこになるだろうか?以前の彼なら世界中のどこのクラブにだって移ることができただろう。しかし、今や選択の幅は急激に狭まってしまっている。
コウチーニョを一番に求めたクラブは、もはや彼を必要とはしていない。自身の地位を築き上げた時のクラブでさえ、彼の力を借りずに成功を収めている。コウチーニョがいなくなってからというもの、リヴァプールはこれまでより強く、ハングリーに、そして当時より素晴らしい結果を残せるようになったのだ。
コウチーニョはバルセロナの歴史において最も高額な選手だ。世界全体で見ても第3位。リオネル・メッシは彼にネイマールの代役になってほしいと望み、バルセロナのスポーツダイレクターであるロベルト・フェルナンデスも、アンドレス・イニエスタの不在を埋める存在になるだろうと語っていた。
しかし、どちらの期待にも沿うことはなかった。バルサでは1年もプレーできず、最後の出場機会は昨年の5月に行われたコパ・デル・レイの決勝戦。バレンシアに屈辱の敗戦を喫した試合だった。
■バルサ移籍からキャリアは暗転
Getty「これは必然だ」
スペイン移籍の際には、こんな見出しが踊ったものだ。しかしすぐにはっきりと分かってしまった。彼の実力はバルセロナの要求には程遠かったのだ。ワイドでプレーするにはさほど速くなく、中央でプレーできるほどは規律を守れない。リヴァプールにいた時はバルサに見合う実力のある選手だと思われていた。しかし実際に移籍してからというもの、バルサに見合ったプレーはほとんど見ることができなかった。
バルセロナでは当たり前のことだが、トロフィーを掲げることはできた。しかし、そんな中でもコウチーニョのパフォーマンスにはムラがあった。たしかに素晴らしいスタートを切ることはできた。最初の半年だけで、リーグとカップ戦の両方で計10ゴールを挙げた。このような序盤の成績からはコウチーニョの苦悩が想像できないかもしれないが、"バルサの18か月でベンチスタートだった試合数が、リヴァプールの5年間でベンチを経験した試合数と同じ"というデータがそれを雄弁に物語る。
Getty Imagesそのような状況に陥る可能性について、助言を受けなかったわけではない。ユルゲン・クロップは2016-17シーズン終了後コウチーニョと会談し、バルセロナが彼に興味を持っていることを明かした時のことだ。
クロップはコウチーニョを慰留する際、こう話したという。
「あそこでは、君は単なる一つのオプションだ。ここではもっと重要な存在になれる。もし残留すれば功績が讃えられ、キャリアの終わりには銅像の一つでも立つことになるだろう」
だが、この説得はコウチーニョの心を捉えず、夏の移籍に向けて精力を費やしていくこととなる。プレミアリーグの新シーズン開幕前日に移籍の意思を表明した上、「背中痛」と理由をつけて練習を欠席し、試合に出場しなくなった。
リヴァプールは毅然と対応したが、1月には売却の用意を固め、新たな道を歩むことにした。コウチーニョがいなくともチームが進化し、成長できることを見極めることができたのだ。移籍金は1億4200万ポンド(約217億円;当時)にも及んだ。
それから18か月。コウチーニョは再び移籍することになってしまった。1シーズンのレンタル移籍のためにバイエルン・ミュンヘンは850万ユーロ(約10億2000万円)を移籍金として支払い、1350万ユーロ(約16億2000万円)もの年俸を支払っている。
Getty今夏に完全移籍でコウチーニョを獲得する意思がある場合、1億2000万ユーロ(約144億円)を支払う条項が付帯していた。しかし、オプションは行使されそうにない。
バルセロナ在籍時と同様に、コウチーニョはクラブでの明確な役割を見出すことができなかった。セルジュ・ニャブリとキングスレー・コマンはワイドで定位置を確保し、トーマス・ミュラーはハンジ・フリックの下で再び躍動。ミュラーはロベルト・レヴァンドフスキの欠かせぬ相棒となった。その一列後ろでは、ヨシュア・キミッヒ、チアゴ・アルカンタラ、レオン・ゴレツカが見事に中盤のバランスを取っている。
「時々、これまで出せなかった力を発揮することがある」。これはバイエルンの代表取締役社長、カール=ハインツ・ルンメニゲによる発言。一方、フリックは「コウチーニョの課題は、実力を見せようと力みすぎることだ」と語っている。
「時々自身にプレッシャーをかけすぎている。試合でプレーするたびに、自分を印象付けようとしている。だが彼の判断のすべてが正しいわけではないのが現状だ」
コウチーニョは5月にブンデスリーガが再開して以来、まだ試合出場がない。足首のケガが理由だ。一方、12月のヴェルダー・ブレーメン戦で獅子奮迅の活躍を見せたように、たしかに比類ない才能を一瞬発揮することがあった。とはいえ、その程度の活躍ではクラブもファンも完全移籍を望むことはないだろう。
■コウチーニョの今後は…
Getty Imagesコウチーニョの今後はどうなるのだろうか?
「基本的には、コウチーニョはバルセロナの選手だ」とキケ・セティエン監督は言うが、将来的にカンプ・ノウで姿を見ることはないだろう。バルサの財政は逼迫しており、負債を抱えてしまうかもしれないほどの状況だ。3月末、70%もの年俸削減を受け入れた選手たち。さらには、まだ結論には至っていないものの、来シーズンも減額するべきという案もあるほどだ。
一方で、今夏の市場においてバルセロナはインテルのストライカー、ラウタロ・マルティネスとの契約を望んでいる。さらにネイマールをパリ・サンジェルマンからチームに呼び戻そうとしているのだが、まず現有選手のサラリーカットをする必要がある上、可能な限り選手を売却して資金を稼がなくてはいけない。
コウチーニョ、ウスマン・デンベレ、そしてアントワーヌ・グリーズマンの3人はチームで最も高額な契約を交わしているため、資金確保要因に最適と見られている。しかし、コロナウイルス禍の影響が大きいヨーロッパにおいては、3人全員の売却はもとより、そのうち1人でさえ売り抜けるかどうか。状況は困難を極めている。
バルセロナは、プレミアリーグからコウチーニョに関心が集まることに期待してきた。リヴァプールでの大活躍が記憶に新しいと考えているからだ。しかし、コロナ禍の影響下にあって、彼に合った移籍先を見出すことは難しくなっている。
古巣リヴァプールはほとんど関心を示していないし、マンチェスター・シティも同様だ。トッテナムは資金が少なく、チェルシーは大型移籍に大枚をはたいている。ハキム・ツィエクとはすでに合意し、ティモ・ヴェルナーともまもなく合意するだろう。チームは十分すぎるほどの攻撃力を蓄えた。
レスターでブレンダン・ロジャース監督と再会しても、若いチームでスタメンを確保するのは難しい。アーセナルへ移籍すればチャンピオンズリーグから撤退することになる。一方、マンチェスター・ユナイテッドやエヴァートンはリヴァプールとの関係性から考えにくい。
期限付き移籍期間の延長がもっともあり得そうな線だ。「残留することになるなら、それはバルサが他のクラブを見つけられなかったということ」と語るのは『Goal』バルセロナ担当記者のイグナシ・オリバ。「ただ、他のクラブへの期限付き移籍の可能性についても、夏の移籍市場最終日まで除外はできません」
現状は、想像していた状況とはまったく違うはずだ。「夢の移籍」がこんな形で終わってよいものだろうか。
リヴァプールを去った時、コウチーニョは世界を股にかけたはずだ。今、彼の肩には世界からの視線が重くのしかかっている。
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