フルメンバーで来日するバイエルン。対戦相手がマンチェスターC、川崎Fである理由。マッチメイクの舞台裏

20230610-bundesliga-japan-tourGetty Images

バイエルン・ミュンヘンが来日する。7月26日にマンチェスター・シティ、29 日に川崎フロンターレと国立競技場で対戦するが、これらの試合は単なる「興行」ではない。スカパーJSAT株式会社で『ブンデスリーガジャパンツアー』のプロジェクトを推進する小松利光ゼネラルプロデューサー兼プロジェクトリーダーに来日ツアーの背景を聞くインタビュー後編は、マッチメイクと欧州クラブにとってのプレシーズンマッチの意味について。

◎前編:バイエルンが来日する理由はこちら

▶チケット抽選先行販売中!「川崎フロンターレ vs. FCバイエルン・ミュンヘン」スカパー!ブンデスリーガジャパンツアー2023

以下に続く

■対戦相手はいかにして決まったのか

 今回、バイエルンはトーマス・トゥヘル監督のもと、GKノイアーはじめ、キミッヒ、ムシアラ、そしてミュラーなどフルメンバーで日本を訪れるという。2試合が予定されているが、相手Jリーグで2020、21年に連覇を果たした川崎フロンターレ、そしてイングランド・プレミアリーグで3連覇を果たしたマンチェスター・シティだ。Jリーグファンはもちろん、海外サッカーファンもうなるマッチメイクとなっている。

20230610-bayern- Thomas-TuchelGetty Images

――マッチメイクの経緯を教えてください。。

 昨年12月にバイエルンを呼ぼうとなったとき、まずJリーグに話に行きました。2023年はJリーグ30周年ですし、「明治安田Jリーグワールドチャレンジ」として、Jリーグでも海外クラブを呼ぼうとしているのであれば一緒にやりませんかと。

 年明けから一緒に動き始めて、バイエルンはスカパー!が、マンチェスター・シティはJリーグ側が招聘したという経緯です。7月23日はJリーグが実施する試合として横浜F・マリノスとシティ。29日はスカパー!が仕切る川崎フロンターレとバイエルン。真ん中の26日はJリーグが実施する試合として、バイエルンvsシティをやろうよと合意形成して、そこに向かって各所が調整を続けてきました、

――バイエルンの対戦相手が川崎フロンターレになった理由は?

 バイエルンのスケジュールが関東近郊じゃないと難しかったのが第一です。と同時に「どうやったらブンデスリーガが日本に根差すか」をすごく考えました。点でやる一回だけのマーケティングではなく、ストーリーが必要だと感じていました。

 実は2018年にオリバー・カーン氏がブンデスリーガのアンバサダーとして(川崎Fのホームスタジアム)等々力に行っているんです。「カーン(ブンデスリーガ)とフロンターレ」の絆があるならば、もう一度そこを密にすることがストーリーになると考えて、フロンターレさんにお願いしたという経緯です。願わくは「Welcome back! オリバー・カーン」としてやりたかったのですが、先日バイエルンのCEOを解任されたのは残念ですね。

 フロンターレさんとの試合においては、ブンデスらしさ・バイエルンらしさの演出は組み込む予定です。例えば、アリアンツ・アレーナでは、選手入場時に“FC Bayern, Forever Number One”という曲を流してみんなで歌います。その後で選手が入場しますので、そういうことなども取り入れたいと考えています。

――ほかのクラブからの希望はなかったのでしょうか?

 Jリーグの他のクラブさんからもお声がけはいただいていましたから、今後はみなさんともやらせていただきたい気持ちをもちろん持っています。また、ブンデスリーガの他クラブからもオファーがありました。18チーム中、半分ぐらいが「日本に行きたい」と。通常、プロモーターは「来てくれませんか?」とお願いします。ブンデスリーガの協力もあって「日本に行きたい」を言ってもらえる環境で、ありがたいことだと思います。

 すでに来年も、ブンデスに限らず海外のクラブからもお声がけいただいています。欧州のクラブは「どこでファンベースを伸ばすか」を考えていて、その一つがアジアであり、日本なんだと思います。

■選手にとってはサバイバル?

 欧州クラブは8月に新シーズンを迎えるため、この束の間のシーズンオフを有効に使いたい。マーケティング面、競技面ともに、確固たる戦略を持ってこのようなツアーを実施しているという。

20230610-byern-MusialaGetty Images

――欧州クラブから多くのお誘いがあるとのことですが、彼らにとってファンベースを伸ばす以外にも目的があるのでしょうか。

 お伝えしたいのは、プレシーズンマッチは欧州のクラブにとって、「興行」だけではないんです。クラブ経営においては、マーケティングサイドとスポーツサイドとそれぞれ目的があります。マーケティングサイドにとっては、「いかに興行として稼げるのか、マーケティングバリューを上げられるのか」が大事です。

 一方で、選手と監督含めたスポーティングチームにとっては、「プレシーズンマッチとしてシーズン前の調整に当てられるのか」が大事です。

 世界ツアーは単純な興行ツアーだと思われているかもしれませんが、彼らは真面目にシーズン前の良い調整の機会としても来日を考えています。トゥヘル体制も今シーズンからが実質的なスタートなので、選手たちはここでアピールをしなければなりません。

 バイエルンの今年の夏のツアーは日本とシンガポールの3試合のみ。もちろん、来日前にキャンプはミュンヘン郊外で行いますし、シンガポールから帰国したあとも調整の試合はあるのでしょうけれども、90分のフルマッチは今のところ3試合なので、選手にとっては非常に大事な試合になるのは間違いないと思っています。

――そのような試合が見られることは日本のサッカーファンにとってもうれしいことです。

 トップレベルのチームが親善試合をやってくれる、日本がそういうマーケットと捉えられていることはありがたいと思います。集客があれば、呼ぶほうももっといろんなクラブを呼ぼうとなりますし、クラブもまた日本に行こうとなります。ニワトリとタマゴの関係だと思いますが、みんなで「マーケットを伸ばしていく」ことが、サッカーが文化として日本に根差していくことに繋がるのだと思います。

 ですので、多くの方にこの夏の海外クラブの来日をバイエルンに限らず話題にしていただきたいですし、いいノイズが上がってくれると嬉しいです。そして願わくば、ぜひスタジアムに足を運んでいただき、バイエルンを観てほしいですね。【聞き手・文=吉村美千代/GOAL編集部】

◎前編:バイエルンが来日する理由はこちら

20230610-skyperfectv-komatsu-sanGOAL

スカパーJSAT株式会社小松利光ゼネラルプロデューサー兼プロジェクトリーダー。子どものころ好きだった選手はユーリ・ジョルカエフとブラジル人のほうのロナウドとのこと。

■川崎フロンターレvs バイエルン・ミュンヘン
7月29日(土)19:00 KO

■バイエルン・ミュンヘンvsマンチェスター・シティ
7月26日(水)19:30 KO

▶チケット抽選先行販売中!「川崎フロンターレ vs. FCバイエルン・ミュンヘン」スカパー!ブンデスリーガジャパンツアー2023