アトレティコ・マドリーFWアンヘル・コレアが、故郷の貧民街について語った。
2014年に加入したスペインの強豪アトレティコで背番号10をつける171センチの小柄なストライカー、A・コレア。高い技術を生かした得点力、ラストパスによって同チーム及びアルゼンチン代表で輝くこのFWは、今から28年前にロサリオの貧民街“ラス・フローレス”で生を受けると、過酷な環境の中でフットボールに打ち込み続け、その後トッププレーヤーになる夢を叶えている。
A・コレアにとって人生と夢の出発地点となった“ラス・フローレス”は、今も変わらずに特別な場所であるようだ。スペイン『マルカ』とのインタビューに応じた同選手は、ここ最近に帰郷した思い出を振り返っている。
「この夏、アルゼンチンに帰ることができたんだけど、僕にはそうすることが必要だった。子供の頃の日々を懐かしく感じていたし、地元に戻っておきたかったんだ。すべてを思い出すために、力強くシーズンを始めるためにね」
「僕が生まれた地域は相変わらず困難な場所だ。だけどおばあちゃんに会いたかったし、小さな頃にフットボールに興じていた広場のコートを目にしなくてはいけなかった。僕はあの頃の気持ちを取り戻したかったんだよ」
「僕はあそこで友人たちとプレーしていた。ストリートで何時間も過ごしたし、いつもそこを歩いて通り、僕のプレーを目にしていた父さんの姿もイメージできる。僕が思い出したかったのはそういうことなんだ。10歳で父さんを亡くしたけれど、幸運にも自分には素晴らしい記憶と思い出がある」
A・コレアは、10才の頃には家族を養うようになっていたという。
「自分自身はそんなことを意識していなかった。プレーすることで少しお金をもらって、それを母さんに渡していたんだ。僕たち10人兄弟を食べさせる助けになればってね。母さんや兄弟を助けられることを幸せに思っていた」
ロサリオの貧民街でドラッグや犯罪に手を染めることなく、フットボールをプレーするというまっとうな道を歩んできたA・コレアだが、それは決して簡単なことではなかった。
「そういったことを回避していくのは難しい。大切なのは、自分が何をしたいのかを知ることだ。僕はとても小さい頃からフットボーラーになりたかった。地元で友人の誰かが悪いことをしていたり、興味を持てないことがあったりすれば、僕はすぐ家に帰った。家族を助けるためにも、ただひたすらにフットボールに打ち込んでいた」
A・コレアと同じくフットボーラーになることを志しながらも、悪の道を選んだ友人たちもいたのだろうか。
「いっぱいいたよ。本当に素晴らしいプレーを見せる人たちもいたけれど、悪い決断を下して道半ばであきらめてしまった」
2014年にサン・ロレンソからアトレティコへの移籍が決定したA・コレアだが、その際に心臓の問題が発覚して手術に臨むことになった。
「18才だったし、とても苦しい出来事だった。初めてヨーロッパを訪れ、メディカルチェックでその問題が見つかったときは本当に辛かったけれど、でも運良くすべてがうまくいったね。それから数カ月で練習できるようになり、もう一度自分がフットボーラーなんだと感じられるようになった。僕が前へと進むために、手術などすべてを請け負ってくれたアトレティコには感謝の言葉しかない」
「あの当時は父と兄弟を失い、まだ間もないと感じていた。だから手術のことはこうやって受け止めていたんだ。『もしうまくいかなければ、いなくなって寂しかった父さんとまた一緒になれる。でもうまくいけば、またフットボーラーに戻れるんだ』って。実際、僕が考えていたのはその二つのことだった」
アトレティコのイムノの一節、“勇気とハート(心臓)”をA・コレアほど体現している選手もいないだろう。
「その一節は本当にアトレティコって感じで、確かに自分と一致しているね。僕は毎シーズン、闘うための心構えをしている。悪い時期であっても、前へと進むためには闘い続けなくてはならないんだ」
A・コレアはその一方で、アトレティコ指揮官のディエゴ・シメオネ監督にも言及。PK戦で敗れた2015-16シーズンのチャンピオンズリーグ決勝レアル・マドリー戦で出場機会を得られなかったことについては、やはりその当時、激しい怒りを覚えていたようだ。
「もう過去のことだけどね。あの試合の後、僕はクラブを出て行きたかった。次のシーズンも同じだ。すべてをチョロのせいにしていたよ。僕はあの決勝でしっかりと準備をしていたのに、彼が起用してくれなかったからね」
「自分がもう少しで出場というときにチームが同点に追いつくと、彼は僕の起用を取り止めた。結局、僕たちはPK戦で試合を落としてしまい、僕は参加できなかったことに怒り狂うことになった。まあ、もう過ぎたことさ」
「シメオネは父親のようなもの? 彼とは素晴らしい関係を築いている。ほかのみんなと同じようにね。彼は誰とも特別な関係にならず、全員に対して同じように接している。僕たちが各試合で闘えるように、アトレティコのユニフォームを守っていけるように、ね」
「チョロが重視するのは出場時間よりプレーのクオリティー? 以前の僕だったらそういうことを考えなかったけれど、監督にとって20人以上から11人を選び出すのは難しいことだ。だからこそ、全員がチームを助ける心構えをしていることが大切なんだよ。そうできれば今季は素晴らしいシーズンになるさ」
文・翻訳/江間慎一郎


