元アスレティック・ビルバオMFイバイ・ゴメス氏(35)が、精神的問題に苛まれ続けた現役生活を振り返っている。
左サイドから右足で正確なクロスを送り、ダイアゴナル・ランで内に切れ込む……良質なサイドアタッカーだったイバイ・ゴメス氏だが、32歳と若くしてスパイクを脱ぐことを決断している。
そんな同氏はスペインのフットボールカルチャーマガジン『パネンカ』で、Bチームから在籍した“心のクラブ”アスレティック・ビルバオで、大きな重圧に苦しんだことを告白している。試合前には、眠ることすらかなわなかったという。
「次の日に先発すると分かっているときには、眠ることができなかった。朝の5〜6時までベッドで泣いていたんだ」
「私はプレーしたくなかったが、プレーするしかなかった。それがあの頃に感じていたことだ」
イバイ・ゴメス氏は、アスレティックのトップチームに5シーズン(2010〜2016年)在籍した後、同クラブとの契約を解除して同じくバスク州に拠を構えるアラベスに加入。アラベスで過ごした3シーズンで自信を取り戻し、2019年冬にアスレティックに復帰を果たしたが、しかし帰属意識や思いの丈が強い同クラブでは再び重圧が襲いかかった。
「私はまた、自信や期待を失ってしまった。ただ前回とは違ってもいたんだ。そのときは自分の精神状態をプロに委ねたんだ」
心理カウンセラーの助けを得たイバイ・ゴメス氏は、アスレティックでの第二期では3シーズンの間プレー。その後にはイランのフーラード、デポルティボで1シーズンずつプレーしたが心の充足を得ることは難しく、32歳で引退した。
批判を受けることが珍しくなく、頑丈な精神を持っている、または持つべきとも思われているサッカー選手だが、精神的に苦しんでいる選手たちは決して少なくない。
FIFPRO(国際サッカー選手会)が2018年に発表したデータによれば、現役選手の38%が不安症や精神的落ち込みを経験している。またスペインのプロサッカー選手組合であるFUTPROのデータによると、現役選手の80%が不安症、精神的落ち込み、ストレスを感じたことがあり、さらに60%がクラブからの精神的なサポートを感じられていないと答えている。元スペイン代表MFのアンドレス・イニエスタ氏が「生きる気力を失っていた」と、鬱病を患っていたことも有名な話だ。
現在はスペイン4部リーグ、アレナスで監督を務め、指導者としてのキャリアを進めるイバイ・ゴメス氏は、選手たちが自身の精神的問題に気づくこと、そして心理カウンセラーなど専門医の助けをためらわずに借りる必要性を説いている。
「当時は、心理カウンセラーのもとを訪れるのが非常に難しかった。自分が精神的に弱いと思われてしまうためだ。でも、今は“タブー”ではなくなりつつある」
「私は自分が精神的な問題を抱えているとは思っていなかった。最も難しいのは、自分自身がそれに気づくことにほかならない。自分が鬱病へのプロセスを歩んでいるとは分からなかったんだよ」


