アリツ・アドゥリス(1981年生まれ、サン・セバスティアン出身)は昨年5月、惜しまれながらスパイクを脱ぐ決断を下した。このアスレティック・ビルバオのレジェンドは、2015年のスーペルコパ・デ・エスパーニャでルイス・エンリケ監督率いるバルセロナをポーカー(4-0)で下してビルバオにタイトルをもたらし、アスルグラナの二度目の6冠を阻止した人物だ。
しかしフットボールのファンであれば、アドゥリスがただそれだけの選手ではないことをよく知っているはずである。昨季に記録したチレーナ(オーバーヘッド)でのゴールが今後も語り継がれていくはずなのだ。アドゥリスには自身が残した“レガシー”(とても謙虚なアドゥリスはこの言葉を好まないだろうが)の数々を振り返ってもらった。
■「39歳まで続けられた最大の秘訣は…」
(C)Getty Images――あなたのように一時代を築いたフォワードであれば、ゴールを決めるのを懐かしく感じると思います。ラ・リーガの歴史で最高のアタッカーのひとりになった今、ノスタルジーに浸ることもよくあるのではないでしょうか?
率直に言って、フットボール、特にこの間のスーペルコパ・デ・エスパーニャの決勝みたいに最高にエモーショナルな試合を観ると、強い感情が込み上げてくるのと同時に懐かしく感じているね。でも一方で身体には限界があるのも事実だ。私の身体が限界に達したというシグナルはコンスタントに感じていたし、今はそういった努力をする必要がなくなってとても調子がいい。今の私にはもうこなせないことだとわかっているからね。つまり一方では懐かしく感じているが、もう一方では以前のように自分が望むように楽しめないこともわかっているということさ。だから今はとてもいい時間を過ごしていると言えるかな。限界を迎える最後の瞬間までフットボールを楽しむことができたし、非常に満足しているよ。
――いずれにせよ39歳までプレーするというのはどの選手にもできることではありませんね。選手として長生きする秘訣は何でしょうか?
39歳でラ・リーガのフォワードとしてプレーするにはたくさんの要素が必要だよ。まずは遺伝的に幸運でないといけないけど、その点では私は家族に助けられたね。でも少なくとも私にとって最も大事だったのはいい時間を過ごすことだった。心から楽しむこと、基本はこれさ。競争が好きだったし、プレーや成長に対するモチベーションに溢れていた。常に克服すべき挑戦があったしね。毎日のトレーニングに行くのも好きだったよ。すべてはそこに集約されるのだと思う。
(C)Getty Images――引退の決断を下すのは難しかったでしょうか?
こういう類の決断は決して簡単ではないよ。フットボール選手にとって小さな頃から一番好きなものはボールなんだ。ボールとはずっと深い関係で結ばれてきた。ボールを使って楽しむのが最も満足できることで、それが25年後の仕事につながっている。それをやめるのは決して簡単なことではないけど、自分にできることをすべて出し切ったのであれば、たとえば身体がたくさんのシグナルを発したり限界を感じたりする瞬間が訪れれば、一歩を踏み出さねばならないね。心の準備はできていたよ。他のことに取り組む必要があったし、身体にも休息を与えないといけなかったからね。
――レアル・ソシエダとのコパ・デル・レイ決勝でお別れができないのは残念な知らせだったのではないでしょうか?
(引退の)決断がさらに難しくなったのは間違いないね。私にとって、アスレティックでタイトルを掲げることはフットボールの中でも最上の出来事なんだ。明確な形で勝利を示せるし、そうすることで自分のアイデンティティをより強く感じられる。他の誰をも貶める意図はないけど、私にとっては別のクラブでより大きなタイトルを取ることよりも意味のあることなのさ。ここでは物事が異なるのだと思う。自身にとってのフットボールの最高レベルに到達する可能性が目前に迫ったところでの決断は厳しいものだったよ。他の選手にはもっと違った夢があるのだろうけど、私にとってはそれこそが最高のことなのさ。
――レアル・ソシエダとの試合はまだ保留のままですが、あなたの元チームメイトたちはスーペルコパのセレブレーションではあなたに同じ芝生の上にいて欲しいと望みましたね。セビージャまでチームに帯同する招待はどのように受け取ったのでしょうか? また、そのとき何を思いましたか?
クラブの使節者を通じて、マルセリーノ・ガルシア・トラル監督がセビージャまで私がチームに帯同できる可能性があるかを知りたがっているという話があったんだ。その後一緒に話をした際に、監督から個人的に言われたよ。招待は嬉しかったし、ガイスカ・ガリターノ前監督の思いも込めて受け取ったんだ。チームに同行できたのは素晴らしかったし、私の人生にとって、アスレティックで最高の経験のひとつになったね。
■2人の後継者
(C)Getty Images――バルセロナとの試合では、ついこの間まであなたがこなしていた仕事をイニャキ・ウィリアムスとアシエル・ビジャリブレが見事にこなしてくれましたね。タイトルの味わいは変わりましたか? それとも変わらず自分のタイトルのように感じるのでしょうか?
ピッチにいればタイトルは自分の内部に感じられるし、自分のものだと非常に強く感じるのは間違いないね。でも自分でも認識しなくてはいけないことは、今回私はチームにいたときと同じかそれ以上の感覚があったということだ。チームの一員のように強く感じられたし、とても楽しむことができた。
――両選手とはサン・マメスのロッカールームで一緒に過ごした仲ですね。当時から助言を求められていたのでしょうか? それは今も続いていますか?
自分ができるやり方でサポートしようとはするけど、アドバイスを送ったりはしないかな。どちらの選手とも素晴らしい友情を築いているし、普段からたくさん話をしている。もちろんサポートにも努めているさ。将来、私が彼らをサポートできると彼ら自身が思えば、私は喜んでそうする。当たり前の話だよ。
――ウィリアムスとビジャリブレはあなたと同じようにバルセロナからスーペルコパのタイトルを奪い去りましたが、4ゴールは決められませんでしたね。もしあなたの後継者をひとり選ぶとしたらどちらを指名しますか?
その質問は答えられないな、無理だよ。それに、答えるのも気が進まない。父親と母親のどちらをより愛しているかと尋ねているのと同じだよ。ふたりとも素晴らしい友人だし、答えられないし答えたくもない。ふたりとも偉大なフォワードになって欲しいし、たくさんのゴールを決めてアスレティックの歴史を作ってもらいたい。私はふたりともそれを果たせると思っているよ。その質問には答えられないことを許して欲しい。
■ライバルさえ“愛着”
Getty――2015年には、あなたはバルセロナの二度目の6冠達成を阻止した人物になりましたね。
私たちが6冠を阻止したことはあのときもわかっていたけど、私たちはライバルを苛立たせたことよりもタイトルを勝ち取ったことに価値を感じていたよ。アスレティックのためにタイトルを取りたかったし、さっき話したとおりそれこそが偉大なことだった。バルセロナが望むものすべてを勝ち取ったとしても私には何の問題もないよ。でもあの瞬間は自分たちが勝ったこと以上の事実はなかったんだ。
――あのようなことがあっても、バルセロナとは誰とも遺恨がありませんね。むしろ逆です。あなたを苦しめてきたマルク=アンドレ・ テア・シュテーゲンは、あなたについてはいつも好感を持って話をしています。ディフェンダーやゴールキーパーといった本来あなたが苦しめるはずの相手から愛着を持たれるのは一体何故でしょうか?
私に誇りを感じさせてくれることのひとつだね。もし愛着という言い方をするのであればだけど、バルセロナのようなチームのライバルたちが私に愛着を持ってくれているとしたらほとんど信じられないような話さ。私にとって自分がフットボール選手になってプリメーラ・ディビシオンでプレーするなんてことはまともには考えられなかったことだから、テア・シュテーゲンがいるようなチームのライバルが私のことをそのように話してくれることがどんなに誇りを感じられることなのか、ぜひ想像してみて欲しいね。
――あなたのプロ選手としての最後のゴールはまさしくそのテア・シュテーゲンを相手に決めたチレーナ(オーバーヘッドキック)でした。選ばれた者にしかできない高みといえます。人生で二度クラブを去らなければならなかったにも関わらず、どのようにしてフットボール選手としてのキャリアを積み上げ、クラブのレジェンドとなったのでしょうか?
私はとても頑固者でね(笑)。欲しいものがあると手に入れるためにあらゆる手を尽くそうとするんだ。アスレティックで重要な選手になるのはとても大きな夢、最大級の夢だったね。私はそれを目指したのさ。フットボールと人生において最も重要なことは誠実で腐らないこと、もし転んだら起き上がること。それこそが私がいつも心掛けてきたことで、少なくともできることすべてに取り組んできたことについては誇りを感じているよ。
■3冠を目指すアスレティック
Getty――今年アスレティックが3冠を達成する可能性があること、そしてその大部分にあなたが関わることについては意識していますか?
もちろんわかっているよ。とてもね。選手には、タイトルをひとつ獲得した先にまだふたつのタイトルが残されていること、偉大な目標を持ち、可能性のあるものすべてを目指さなくてはいけないことを話したんだ。つまり3冠を意味するよね。ラ・リーガの行方がわからないというのは少し無邪気すぎる話かもしれないけど、コパ・デル・レイのタイトルには近づいているし、未来がどうなるかは誰にもわからない。可能性がある以上は少なくとも目指すべきなんだ。
――そして、あなたの今後の構想を聞かずにはこのインタビューを終えることはできません。近い将来チームを指揮する姿を見られるのでしょうか。それとも別の考えをお持ちですか?
引退はとても濃い出来事だし、少しリフレッシュする時間が欲しいね。プロとしてフットボールをプレーしたから何かが用意されていると考えるのは無邪気なことだと思う。そうではなくてゼロの状態から始めなくてはいけないんだ。学びも必要だし、自分が何をしたいのかも正確に知らなくてはいけないね。フットボールは大好きだけど、どうなるかは誰にもわからないよ。今はリフレッシュしたいし、家族や友人と過ごしながら充電期間にしたいね。
――アスレティックから何か話はありましたか?
ないよ。でも話を聞ける状態でなければ話を受けることもない。さっき話したとおり、今はどんな話も必要ないんだ。アスレティックであればどんな話でも拒否することはできないけど、今は少し時間が必要だよ。
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