2020_04_01_KIM Jin Hyeon©J.LEAGUE

【動画】「やはりうまい」。蹴り出さずつなぐ、セレッソ大阪GKキム・ジンヒョン。大幅なスタイル変更の背景

 Goalでは、選手の“特定のプレーだけ”を集めたTwitter動画企画「#集めてみた」シリーズを実施している。 アレクサンダー=アーノルドのアシスト久保建英のドリブル西川周作のキック。選手の強みを端的に表すプレー集ともいえるが、実際の選手はどう考えているのか? 今回は、セレッソ大阪GKキム・ジンヒョンの「最後尾からのビルドアップ」にフォーカス。ロティーナ・セレッソのカギとなる“地上戦”は、チームの躍進に大きな役割を果たしている。【取材・文=小田尚史】

■プレーモデルの変化、生みの苦しみ

 ロティーナ監督1年目の昨季、セレッソ大阪はリーグ5位と健闘。シーズン序盤こそ低迷するも、中盤以降は安定した戦いを続けて上位に迫った。中でもリーグ最少失点を達成した守備の固さは特筆すべきだった。距離感よく整理された4-4-2で、FWから連動して網を張って守る様は圧巻の機能美を誇った。

 個としても、最終ラインで跳ね返し続けたDFマテイ・ヨニッチとともに、GKキム・ジンヒョンの活躍ぶりが光った。セーブ率79%、ペナルティエリア外からのセーブ率は脅威の94.9%はどちらもリーグ1位で、毎年目標にしていた「J1最少失点」をついに成し遂げた。

以下に続く

 もっとも、昨季のC大阪は、ただの守備のチームではなかった。

「ボールを持つことはディフェンスの時間を減らし、より確実に相手のエリアまでボールを運んでいくことができる」

 ロティーナ監督のこの信念の元、ビルドアップにも力を入れ、相手のプレスをはがして前進していくスタイルにも取り組んだ。リスクを冒してつなぐよりも、シンプルにプレーすることを求めたユン・ジョンファン前監督(現・ジェフユナイテッド千葉監督)時代からプレーモデルは大きく変わったが、この変化によって、より適応に迫られたのがDF陣とGKだ。

 一昨年までなら大きく蹴り出していた場面でも、まずは味方につなぐことがファーストチョイスとなる。「GKから味方の頭を目掛けてロングボールを蹴る回数は減った。勝っている状態での、最後の時間くらい」(キム・ジンヒョン)。

 このスタイルを遂行する上で重要なのが、パスの出し手が複数の選択肢を持てること、受け手がボールを受ける位置をしっかりと取ることだ。ロティーナ監督が信頼を寄せるイバン・パランココーチの指導の元、ビルドアップのパターン作りは、日々の練習から落とし込まれた。

 ただし、スタイル適応に時間を要した序盤は、GKも含めた最終ラインでのパス交換の齟齬から失点する場面も見られた。“生みの苦しみ”となったこの時期だが、「リスクがあることは承知している。多少のエラーは受け入れる必要がある」とロティーナ監督は泰然自若の構えを貫いた。そんな指揮官の姿勢に対して「狙って、チャレンジしたことで起こるミスに監督が怒ることはなかった。一回、成功したらすごく褒めてくれた」と証言する。

■受ける側の進歩もあり

 練習や試合でトライ&エラーを重ねていくことと並行して、ロティーナ監督とイバンコーチは、「海外のサッカーも含めて後ろから打開していく映像を何度も見せてくれた。いくつものオプションを与えてくれた」という。こうした日々の取り組みの成果もあり、新たなスタイルに慣れていくにつれ、余裕を持って自陣からパスで打開していくことも可能になった。

 シーズンが進むにつれ、DFは、ただパスを出すだけではなく、ドリブルで相手をひきつけてパスを送り、GKもただ近くの味方に預けるだけではなく、一つ飛ばしたパスをフリーの選手に届けて局面を打開する場面も増えた。

この変化に関しては、「味方の選手が、相手がマークに付きづらいポジションを取れるようになってきたことで、パスの出しどころが増えていった」と、ボールを受ける側の進歩を強調する。だが、彼の卓越した足元の技術もこの戦術を成り立たせるために重要であったことは言うまでもない。相手のプレスを受け、ボールを後ろに戻した際に、GKが慌てて前に蹴るばかりでは、到底つなぐ戦術は成り立たないからだ。

「ロングボールを蹴っているだけではボールを保持できないし、自分としても、監督やコーチが求めるスタイルはチャレンジし甲斐がある」と前向きにトライし続けた。もっとも、「GKの一番の仕事はゴールを決めさせないこと、シュートを止めること」。スタイル変革を推し進める中でのセーブ率ナンバー1なだけに、よりその価値は増す。

 C大阪に加入して今季で12年目となる桜の守護神。昨年は、森島寛晃C大阪代表取締役社長が現役時代に記録した、クラブ歴代リーグ戦通算出場記録361試合を更新した。新たなクラブのレジェンドに近づくとともに、GKとしても円熟期に突入している。

「昨年は、サッカーのスタイルも変わって、自分もまだまだ成長できると思えた。(残した)数字以上に、そう思えたことが、昨年の一番の収穫。満足することはこの先もずっとないと思うけど、なるべくそこに近付けるようにやっていきたい」

 リーグ戦は中断しており不透明な状況は続くが、チームは舞洲で練習を重ねている。ロティーナ体制2年目となる今季も、チームのスタイルは不変。緻密な守備の最後の砦として、戦術の肝となるビルドアップの起点として、攻守に奮闘する守護神の進化に注目したい。

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