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「サッカーを上手くなりたい気持ちは年齢関係ない」。金崎夢生が小学生年代のサッカー大会に尽力する理由

 プロキャリアのスタートは2007年の大分トリニータだった。そこで3シーズンを過ごしたあと、鹿島アントラーズ、ニュルンベルク、ポルティモネンセでもプレーした。サガン鳥栖、名古屋ブランパスといった国内外のクラブを渡り歩いて2022年夏に再び、半年間トリニータへ。そしてFC琉球を経て2024年夏からはJFL・ヴェルスパ大分に加入した。

 三重県生まれの金崎夢生にとって、「大分」はサッカーがなければ縁がなかった場所でもある。その場所でいま子どもたちのサッカー大会に関わる新しい挑戦を続けている。12月21、22日に別府・実相寺グラウンドで開催された「2024 エフ・キャンカップ in 別府 Presented by TOYOTA COROLLA OITA 」。この大会への思いと、大分という街、そして自身について話を聞いた。(聞き手・文=ひぐらし ひなつ)[PR]

※写真:優勝したサガン鳥栖U-12。県外の強いチームと「真剣勝負ができる」ことも『エフ・キャン』の特長だ。

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    プロ最初の3年を過ごした大分という街

    ——まずは今回、大分県別府市で『エフ・キャンカップ』開催に至った経緯を教えていただけますか。

     エフ・キャンを主催しているCAPTAIN FIVE株式会社の落合謙翔くんは、僕の滝川第二高校時代の同級生なんです。それで、いまこういうことをやっているという話を聞いて、愛媛でエフ・キャンカップが開催されたときにゲストで参加させてもらって。実際に参加してみて「すごくいいことだな」と感じたので、僕がいま所属しているヴェルスパ大分のホームタウンである別府市でも開催できたらいいなと考えて、落合くんに話をしたのがきっかけでした。

    ――金崎選手にとって大分とはどんな街ですか。

     自分のプロ生活がはじまった最初の街なので、やっぱり思い入れがありますね。僕は九州に住むのも初めてだったんです。どんなところなのか全くイメージできずにやって来たんですが、最初の3年間もとても過ごしやすかったですね。ごはんも美味しかったし、地元の人たちのあたたかい人柄にも触れることができたし。その後、国内や海外のいろんなチームに移籍していろんなところで暮らして、大分より長い期間にわたって住んだ街もありましたが、大分で過ごした最初の3年間は、僕のプロキャリアの中で、いまでも特別で大事な時期です。本当に多くのことを学ばせていただいたので、いつか恩返しをしたいなと、ずっと思い続けてきました。

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    サッカー熱に感じる欧州っぽさ

    ――今回の大会は、メインスポンサーのトヨタカローラ大分をはじめ、たくさんの地元企業やお店が協力してくれていますね。

     はい。こういうところでもいろんな方に協力していただいて、開催を実現させることが出来ました。トヨタカローラ大分さんは、僕が大分でお世話になった方が紹介してくださったんです。そんなふうにさまざまなかたちで、お力添えをいただきました。

    ――いまはヴェルスパ大分でプレーしていますが、トリニータ時代のファンやサポーターもたくさん金崎選手の応援に駆けつけているようですね。

     そうなんです。チームが変わってもずっと応援し続けてくださったり、僕がこういう活動をしたいと話したときにもたくさんの人が協力してくださるので、本当にありがたいと思っています。

    ――そういうファンや協力者も含めて、大分の人たちのサッカー熱は感じますか。

     すごく感じますよ。スポーツの話題になると、やっぱりトリニータの話をする人が多いです。他の地域では野球やバスケットボールが根付いていたりもしますが、大分では古くからサッカー文化が、ある程度根付いている感触がありますね。ちょっとヨーロッパっぽい雰囲気を感じたりもします。ヨーロッパでは飲食店でもずっと試合映像が流れていて、みんな食事しながらサッカーの話をしているんです。成績のいいときも悪いときも、つねに日常の会話はサッカーのことで、街全体で地元のチームを応援している。そういう雰囲気に似たものを、大分では感じますね。

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    プロとのふれあいと真剣勝負の共存

    ――『エフ・キャンカップ』は全国各地で開催されているようですが、参加する少年たちの反応も、地域ごとに違っていたりするんですか。

     全然違いますね。人懐っこかったり人見知りだったり、地域によって言葉遣いも違いますし、そういう地域性は感じます。大分の子どもたちは一見おとなしいんですが、「ちょっと気になってるんだよな~」という感じで勇気を出して質問してくれたりするんです。その、勇気を出して質問するっていうのが、なんかいいですよね。さきほどもちょっとそうやって触れ合ってきました。

    ――どんなことを質問されたんですか。

     シュートの打ち方とかが多いですね。いきなり元気に「どうやって点取るの?」と聞いてくる子もいるんですが、何も言わずにずーっと僕の近くをウロチョロしていて最後の最後に声をかけてくる子もいる。ああ、ずっとそれを訊きたかったんだなと(笑)。頑張って最後に勇気を出してくれてうれしかったです。

    ――ゲスト参加する選手たちが実際にプレーをして見せることもあるんですよね。

     そうです。一緒にプレーする機会も設けています。落合くんもサッカー界で幅広い人脈を持っていますし、毎回、多彩な豪華ゲストが来てくれるんですが、できれば開催地のクラブで活躍しているプレーヤーを多く呼べるといいよねと話しているんです。だから今回も、僕が一昨年、トリニータに帰って来たときに一緒にプレーしたメンバーに多く声をかけました。彼らも地元の人たちと触れ合うことができて喜んでいるみたいです

     プロのプレーヤーと子どもたちが触れ合う機会は普段はなかなかないので、こういう場があるのはいいなと思いますね。そういうゲストとの楽しい触れ合いがあるのと同時に「エフ・キャンカップ」は真剣勝負のカップ戦でもあって、その両方があるのがいちばんいいですよね。どちらかというと試合がメインで、僕たちがそれをサポートする。そういうかたちであることが、僕がこのプロジェクトに賛同して参加したいと思った最大のポイントでした。

    ――少年サッカーの試合を見るときに、金崎選手はどういう目線になっているんですか。

     どうかな……僕は相手が小学生だろうと中高生や大学生だろうと、同じ伝え方になってしまいますね。サッカーを上手くなりたいという気持ちは年齢に関係なく共通していると思うので、僕はいつでも自分の感じたことを率直に伝えるようにしています。

    ――今回もたくさんのチームが参加していますね。

     サガン鳥栖ジュニアのように県外のチームにも参加してもらって、大分の地元のチームと真剣にサッカーができる。そんな大会が、僕が小さい頃にはあまりなかったんです。僕が小学生だった頃、Jリーグの下部組織チームと試合ができるときにはすごく燃えていたので、そういう機会をこうやって作っていけば、きっと僕らがそうだったように彼らにも喜んでもらえると思っています。

     落合くんから聞いた話ですが、子どもたちだけでなく、指導者同士の情報交換やスカウトの場にもなっているようです。みんなにとってアピールできる機会でもあります。

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    続けよう上手くなろうと思う気持ちを後押ししたい

    ――金崎選手自身、今後も現役プレーヤーであるのと並行して、こういう活動を続けていく予定ですか。

     そうですね。今回の別府でのイベントに関しても、僕が大分の人たちにお世話になっているので、何かしら自分のできることが少しでもあればと考えてやらせていただきました。いまの子どもたちがプロ選手と触れ合って、よりサッカー熱を高めてくれたらうれしいです。

     聞くところによると、小さい頃にサッカーをはじめた子たちが、小学校から中学校に上がるくらいのタイミングでサッカーを辞めてしまうケースが多いらしいんです。最初は仲のいい友達がやっているから一緒にという理由でやっていても、中学に進学する頃になるとそれぞれの進路もあるし。

     だからこういう大会や僕たちとの触れ合いを通じて、いまサッカーを辞めようか続けようかと迷っている子がもしも参加者の中にいたときに「よし、もう一回やってみよう」という気持ちになってくれたらいいなと。本当にちょっとしたキッカケですが、僕もたくさんの人にサッカーを通じていろんなことを学ばせてもらったので、今度は僕がそういうことが出来たらなと考えています。サッカーを続けよう、上手くなろうと思う気持ちを後押ししたいです。

    ――プロキャリア18年目で、現在35歳。セカンドキャリアのことなどは考えていますか。

     引退を決める時がいつかは絶対に訪れるものではありますが、まだ具体的なことは考えていません。いまは現役の選手としての生活に集中しながら、時間の許す範囲でこういうふうに社会や地域のためにできることをやっているという感じです。これからもこういう活動を続けていきます。

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