「私は誰にもそのことを話さず、仮面をかぶって歩き回り、何も問題がないかのように振舞っていた。他人に打ち明けて自分の問題について話すタイプの人間じゃない。今までもずっとそうだった」
エヴァートンでの4年間、彼の公式戦の出場はわずか24試合。最後の2シーズンはたった3試合だ。当然彼の契約は更新されず、2009年の夏にフリーとなった。そんな彼を欲しがるクラブは現れるわけもなく、ファン・デル・メイデは絶望の淵に立たされた。そして何もすることがなくリヴァプールで1人暮らしを続けていた彼は、ついにドラッグに手を出してしまう。
「コカインをやり、酒を飲み、週7日パーティーに明け暮れた。フットボールにも、他のことにも、何にも集中できなった。私の人生はパーティーだけだった。リヴァプールという街は、自分をコントロールできない人間にとっては危険な場所だ。『リヴァプールに殺される』と思った。だからこそ、そこから逃げる必要があったんだ」
そうしてアムステルダムに戻ったファン・デル・メイデは、数年間の悪夢から目を覚ますようにアヤックスでのトレーニングに没頭すると、2010年春にはPSVと契約を結び、30歳にしてキャリアを取り戻そうとした。だが結局は出場機会を得ることもなく、そのまま退団。そして2011年春、輝かしい未来が期待されたはずだったそのキャリアを終えることになっている。
そんなファン・デル・メイデは、若い選手たちへ自身と同じ失敗を繰り返さないようにアドバイスを行っている。2011年の夏、ロイストン・ドレンテがエヴァートンへ移籍する際にも「リヴァプールは俺達のようなタイプにとってはあまりにも魅力的すぎる。気がつくとナイトクラブに魅了され、コカインでハイになって失敗するんだ」とリークされた音声メッセージで伝えていたことが発覚している……その警告は無駄になってしまったが。
今現在の彼は、もはやフットボールとはあまり関わっていない。一方で『Youtube』で大成功を収め、彼のインタビュー番組「Bij Andy in de auto」はオランダで人気を博し、37万人以上のフォロワーを獲得。ロメル・ルカクやハキム・ツィエク、ドゥシャン・タディッチといった選手たちも出演したが、旧友であるミドも登場した。そして、彼と一緒に車の中でこんなことを話している。
「若い頃に多額の金を稼ぐことは非常に危険だ。まだ子供なのに、突然口座に何百万という金が入るんだ」
ファン・デル・メイデはミドの話に深く同意する。おそらく、彼以上にその言葉の意味を理解しているフットボーラーはいないだろう。