昨年に40歳の誕生日を迎えたズラタン・イブラヒモヴィッチがミランの11年ぶり優勝に貢献した昨シーズンのセリエA。インテルやユヴェントスなどの巻き返しも予想される新シーズンだが、セリエAにはイブラヒモヴィッチのほかにも、チームの浮沈のカギをにぎるベテランプレーヤーが揃っている。今回は、イタリア在住ジャーナリストの片野道郎氏に、セリエAを彩るベテランのいぶし銀プレーヤーを紹介してもらった。
(C)Getty Imagesイブラヒモヴィッチだけじゃない! 35歳前後でも現役バリバリ、セリエAを彩るベテランのいぶし銀プレーヤーたち
(C)Getty ImagesFWズラタン・イブラヒモヴィッチ(ミラン)40歳
40歳を迎えた昨季は二度にわたって左膝を痛め、実質的な稼働期間はシーズンの半分にも満たなかったが、チームの絶対的な精神的支柱としてピッチ外でもリーダシップを発揮し、11年ぶりのスクデット獲得に重要な貢献を果たした。5月にその膝の手術に踏み切ったこともあり(全治8カ月で復帰は年明け1月の見込み)、このまま引退という可能性も取りざたされたが、7月に入って正式に1年間の契約延長にサイン、復活ミランのシンボルとして41歳で自らのさらなる可能性にチャレンジする。
もうすぐ日本語版も発売される2冊目の自伝『アドレナリン』で本人が語っているように、近年は体力的な衰えを自覚してプレースタイルを変え、ペナルティエリアの外で自身にボールを集めて攻撃の最終局面を演出し、必要に応じて自らもフィニッシュに絡むなど、ゴールに限らない形でチームに貢献する「ラスト30mのオーガナイザー」とでも呼ぶべき新たなあり方を確立した。今シーズンは、戦列復帰までの前半戦はリーダーとしてのカリスマ性を通して、ピッチに戻ってくる後半戦には、セリエAの首位攻防戦やチャンピオンズリーグの決勝トーナメントという重要な場面において攻撃に決定的なプラスアルファをもたらす切り札として、違いを作り出すことが期待される。
(C)Getty ImagesFWオリヴィエ・ジルー(ミラン)35歳
ミランが昨シーズン、そのイブラヒモヴィッチの不在を感じさせることなく終始首位争いを演じ、スクデットという偉業に到達できたのは、チェルシーから加入したこのジルーの活躍も大きな理由だった。193cmの長身を活かして最前線でロングボールやくさびの縦パスを収め、フィニッシュへの起点を作る基準点としての働きは、縦への志向性が強いミランの攻撃において決定的な重要性を担っている。DFを背負って潰れ役になるようなハードワークもこなしながらの11得点4アシストは、それ以外の総合的な貢献度も加味すれば十分以上の数字だった。
今シーズンは同じポジションにリヴァプールからディヴォック・オリギが加わったため、イブラヒモヴィッチが復帰する1月までは2人でセンターフォワードの座を分け合うことになりそうだ。ジルーがより古典的な基準点型CFなのに対し、オリギはポストプレーだけでなく裏への飛び出しでライン間を間延びさせる動きにも優れ、プレス強度も高いというタイプ的な違いがあるため、ステーファノ・ピオーリ監督は試合や状況に応じて2人を使い分けることになるだろう。年齢的に小さな故障が多くなってきており、無理が利かない部分もあるだけに、ポジションを分け合える競争相手の加入は、本来のパフォーマンスを発揮できる形で出場機会を得る上ではむしろプラス。今シーズンも2桁ゴールは期待できそうだ。
(C)Getty ImagesGKサミール・ハンダノヴィッチ(インテル)38歳
2012年にウディネーゼから移籍して以来、10シーズンにわたってインテルのゴールを守り続けてきた絶対的な守護神。昨シーズンは序盤戦でミスが目立ったことから、マスコミやサポーターの間からは衰えを指摘する声も湧き上がった。しかし終わってみれば1試合当たりの失点数、クリーンシート数、セーブ率のいずれにおいてもマイク・メニャン(ミラン)に次ぐリーグ2位と、例年通り安定して高いレベルのパフォーマンスを発揮している。
元々はゴールエリア内でのシュートセーブを最大の武器とする古典的なタイプのGKだったが、18-19シーズンにアントニオ・コンテ監督がGKを組み込んだビルドアップを導入して以来、それまで得意とは言えなかった足下のテクニックにも磨きをかけ新境地を開拓、現代的な戦術にも対応できるモダンなGKへとプレースタイルを変貌させた努力家だ。
今シーズンは後継候補としてアヤックスからカメルーン代表のアンドレ・オナナがチームに加わったが、シモーネ・インザーギ監督は引き続き、正GKは主将でもあるハンダノヴィッチ、オナナは競争でポジションを奪うべき立場、と明言している。この健全でフェアなポジション争いを新たな刺激に、38歳の守護神はさらなる輝きを見せるか。
(C)Getty ImagesFWアンヘル・ディ・マリア(ユヴェントス、34歳)
2年ぶりの王座奪回を目指してチームの再構築に取り組むユヴェントスが、ラスト30mにクオリティと創造性をもたらす攻撃のキープレーヤーとして獲得したワールドクラス。繊細きわまりない左足から繰り出される魔法のようなパスやアシストが最大の武器。これほどの才能の持ち主には珍しく、利他的かつ献身的なプレースタイルが大きな特徴で、ベンフィカを皮切りにレアル・マドリー、マンチェスター・ユナイテッド、パリ・サンジェルマンと欧州のトップクラブを渡り歩く中、ロナウド、ベンゼマ、メッシからイブラヒモヴィッチ、ネイマール、エンバペまであらゆるスーパースターを輝かせてきた。
34歳を迎えたとはいえ、長いキャリアを通して10試合以上の長期離脱は皆無というデータが示す通りフィジカル的には全く問題を抱えておらず、パフォーマンスはほとんど落ちていない。その意味で、ここで取り上げた中では「ベテラン」と呼ぶには最もふさわしくないプレーヤーかもしれない。ヴラホヴィッチ、キエーザ、ポグバなど強靭なフィジカルを誇るプレーヤーが主体のユヴェントスでは、その卓越した創造性とプレービジョンによって数多くの決定機を演出する攻撃のクリエイターとして唯一無二の存在。これまでは主役というより最高レベルの脇役として輝きを放ってきたが、ここでは絶対的な主役としての活躍が期待される。
(C)Getty ImagesMFフランク・リベリ(サレルニターナ)39歳
そのジルーと同じ元フランス代表で、さらに3歳年上の1983年生まれながら、今なお現役で気を吐いているのがフランク・リベリ。2007年から12年にわたって在籍したバイエルンに36歳で別れを告げた後、フィオレンティーナで2年、そして昨シーズンからは南イタリアの小さなクラブ・サレルニターナでプレーを続けている。
往年の強力な突破力こそ見られなくなったものの、ラスト30mで局面を打開するプレービジョンとアイディアの豊富さはなお健在。昨シーズンは故障がちで出場機会こそ限られたが、国際舞台はもちろんセリエAの経験すら多いとは言えない選手が大半を占めるチームでリーダーとして存在感を発揮、奇跡的な残留劇に小さくない貢献を果たした。39歳という年齢もありフィジカル的な衰えは隠せず、高いレベルのパフォーマンスを安定して発揮することは難しくなってきていることは確か。しかし、その偉大なキャリアがもたらした多くの経験を様々な形で還元することを通して、弱小チームのリーダーとして大きな貢献を果たすというのも、彼のようなベテランにとってひとつの生きざまには違いない。
(C)Getty ImagesFWペドロ(ラツィオ)35歳
「グアルディオラのバルセロナ」と黄金期のスペイン代表で、貴重な脇役として数多くのタイトル獲得に貢献した献身的なウインガーも、もう35歳。2015年から5シーズン在籍したチェルシーを経て、20-21シーズンにローマに移籍すると、続く昨シーズンは同じ首都のライバルクラブ・ラツィオに活躍の場を移している。
プレーの展開を的確に読み取り、絶妙のタイミングで敵サイドバックの背後から裏に飛び出してスルーパスを引き出すオフ・ザ・ボールの動き、外から2ライン間に入り込んで足下にパスを引き出し、FWとのコンビネーションでフィニッシュに絡むプレーなど、バルセロナ時代からのレパートリーは今なお鋭い切れ味を誇っている。チェルシー時代にも師事したマウリツィオ・サッリ監督に重用された昨シーズンは、32試合に出場して9得点4アシストと健在ぶりを示した。今シーズンも引き続きいぶし銀の輝きを見せてくれることを期待したい。
(C)Getty ImagesFWファビオ・クアリアレッラ(サンプドリア)39歳
ここまで見てきたのは、国際的なキャリアを誇るトッププレーヤーたちだが、カルチョ一筋のイタリア人の中で「ベテランの鑑」と呼べるのはやはりこのクアリアレッラ。2005-06シーズンに22歳でアスコリからセリエAデビューを果たして以来、ウディネーゼ、ナポリ、ユヴェントス、トリノ、そしてサンプドリアと有力クラブを転々としながら、セリエA歴代14位、現役選手の中ではチーロ・インモービレ(ラツィオ)に1得点だけ及ばない2位の181得点を記録してきた。これはガブリエル・バティストゥータ、ジュゼッペ・シニョーリ、アレッサンドロ・デル・ピエーロといったセリエAのレジェンドたちに迫る数字だ。
特筆すべきは、33歳で迎えた16-17から20-21まで5シーズン連続で2桁ゴールを挙げた上、18-19にはキャリアハイの26ゴールで35歳にして得点王に輝いていること。パフォーマンスに衰えが見え始めた昨シーズンは4得点止まりで、5年間続いた2桁ゴール記録がストップするなどやや低調に終わったが、今夏も契約を1年延長して現役を続行する決断を下した。目標はセリエAであと7得点を挙げ、上に挙げたレジェンドたちと肩を並べてセリエA歴代得点ランキングのトップ10に名を連ねること。40歳にしてカルチョの歴史にその名を刻むことはできるか。
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