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【識者が選ぶ前半戦ベスト11:セリエA編】大注目のストライカーに“禁断移籍”のあの司令塔まで!

あっという間に前半戦を折り返した2021-22シーズンの欧州サッカー界。各国リーグ戦も開幕から約半年で様々なドラマが巻き起こり、熱狂的な戦いが続いている。

そして『Goal』では、折返しとなる2021年末にプレミアリーグ、セリエA、ブンデスリーガ、ラ・リーガの4大リーグの前半戦ベストイレブンを決定。各リーグに精通する識者の方に11人を選出してもらい、前半戦を振り返ってもらう。

第一弾はセリエA。イタリア在住ジャーナリストの片野道郎氏が、前半戦のベストイレブンを選出した。※データは『Statsbomb』、『Stats-Opta』を参照。

  • Maignan MilanGetty

    GK:マイク・メニャン(ミラン/フランス代表)

    現代のGKには、ゴールを守るという本来の仕事に加えて、攻撃の局面における“11人目のフィールドプレーヤー”としての役割がますます強く求められている。その点で際立った存在感を発揮しているのが、このメニャン。後方でのパス回しに加わって数的優位を作り出すだけでなく、敵陣でフリーになったアタッカーに矢のような中/長距離のパスを直接送り込むこともしばしば。状況を読み取る戦術眼と的確な配球は、最後尾の「レジスタ」(ゲームメーカー)と呼ぶにふさわしい。もちろん肝心のゴールキーピングでも、的確なポジショニングと爆発的な跳躍力を武器に難易度の高いシュートセーブを連発。残したインパクトの大きさは、手のケガで6試合欠場したことを差し引いてもなお、前半戦ベストGKにふさわしい。

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  • Toloi Atalanta 202122Getty

    DF:ラファエル・トロイ(アタランタ/イタリア代表)

    今年もトップ4の一角に食い込む躍進を見せるアタランタを、最終ラインから牽引するリーダー。3バックの右CBを務めるが、SBとしてもプレーできる戦術的柔軟性を備えたモダンなディフェンダーで、タイトなマークからの鋭いパスカットに象徴される対人守備の強さに加え、高いビルドアップ能力と積極的な敵陣への攻め上がりで攻撃の局面においてもチームに大きな貢献を果たす。ナポリとの直接対決(第16節:3-2)で見せたデミラルへの同点アシストが象徴するように、ウイングバックやセントラルMFと連携した質の高い攻撃参加は、アタランタの武器である右からの仕掛けに厚みとバリエーションをもたらす重要な鍵となっている。ブラジル人だがイタリアの二重国籍を持ち、EURO2020直前に加わったイタリア代表にも定着、存在感を高めつつある。

  • Skriniar Inter NapoliGetty Images

    DF:ミラン・シュクリニアル(インテル/スロバキア代表)

    「冬のチャンピオン」として前半戦を首位で折り返したインテルの堅固な3バックを支えるキープレーヤー。デ・フライ、バストーニも彼に見劣りしない安定したパフォーマンスを見せているが、センターバックとしての総合的な完成度の高さを評価し、シュクリニアルを選出した。爆発的なスピードも高いテクニックも持ち合わせてはいないが、優れた戦術眼に基づく的確なポジショニング、強靭なフィジカルと駆け引きの妙を活かした1対1の圧倒的な強さで、トップレベルのストライカーとも常に互角以上に渡り合う。元々はオーソドックスな守備専業タイプの4バック向きセンターバックだったが、インテルでコンテ、インザーギという3バックの使い手に鍛えられ、ドリブルでの持ち上がりや組み立てへの参加など攻撃の局面でもチームに貢献する力を身につけた。強靭な体躯にもかかわらず守備の空中戦はそれほど得意ではないが、攻撃においては際立った強さを誇っており、今シーズンもすでにCKから2得点を叩き込んでいる。

  • Bremer Torino UdineseGetty Images

    DF:グレイソン・ブレーメル(トリノ/ブラジル)

    インターセプト+タックル、ボール奪取、クリアなどDFのデータランキングの多くでトップに立つ圧倒的なパフォーマンスで、大きな注目を集めているブラジル人センターバック。188cmの長身にしなやかな身のこなしと爆発的なスピード、そしてブラジル人らしい高いテクニックを併せ持ち、やや粗削りながら対人能力の高さは特筆もの。オープンスペースでの走り合いやハイボールの競り合いでは、常にマークするFWの先手を取ってボールに触らせず、稀に後手に回ってもスピードと巧みなスライディングタックルでピンチを救う。21歳でブラジルのアトレチコ・ミネイロから加入して4年目。従来はラインコントロールやパートナーとの連携など、ゾーンディフェンスの原則に基づく戦術的な振舞いでのミスが目立っていたが、アグレッシブなマンツーマン・ディフェンスを基本に据えたユリッチ監督が就任した今シーズンは、短所が目立たない戦術の中で持ち味を存分に発揮している。まだ24歳でさらなる伸びしろを残しており、無名だがぜひチェックしておきたい“掘り出し物”だ。

  • Theo Hernandez MilanGetty Images

    DF:テオ・エルナンデス(ミラン/フランス代表)

    今やディフェンダーとして以上にアタッカーとしての側面が強くなりつつある左サイドバックというポジションの変容を象徴するプレーヤー。ボールを持てば一列内側のインサイドレーンを怒濤のようなドリブルで持ち上がって一気に局面を前進させ、時にはそのまま左足で強烈なシュートを叩き込む。オフ・ザ・ボールでトップ下のスペースに入り込むというセントラルMFのような動きを見せることも。大外レーンを駆け上がってクロスを折り返す旧来のサイドバック像を覆すプレースタイルの持ち主だ。爆発的な走力とパワー、流動的なポジションチェンジによるマルチタスクという現代的なサイドバック像を体現するプレーで、ここまで1得点5アシスト。昨シーズンに続いてミランを前半戦の主役に押し上げた立役者の1人だ。

  • de roon(C)Getty Images

    MF:マルテン・デ・ローン(アタランタ/オランダ代表)

    マンツーマンのアグレッシブな守備、サイドを効果的に使った組み立てから人数をかけてゴール前になだれ込む攻撃という特徴的な戦術で、ユヴェントス、ローマを押しのけ今シーズンもトップ4の一角を占めるアタランタ。献身的なプレーで中盤からチームを支える、目立たないながら重要な大黒柱がデ・ローンとフロイラーの2ボランチだ。ピッチを縦に半分ずつ分け合ってその内側を幅広くカバー、ボールホルダーにパスコースを提供し、空いたスペースを的確に埋めて攻守のバランスを保ち、機を見てゴール前に攻め上がったかと思えば、最終ラインに入って敵の攻撃をはね返すなど、プレーの量と質の双方でチームの屋台骨を支える。貢献度の高さは2人とも甲乙つけがたいが、今回はDF3人が故障欠場という非常時に4試合センターバックを務めて本職に引けを取らない仕事を見せたプラスαを評価して、デ・ローンを選出した。

  • MARCELO BROZOVIC INTERGetty Images

    MF:マルセロ・ブロゾヴィッチ(インテル/クロアチア代表)

    中盤を広く動き回って数多くのボールに触れ、攻撃のタクトを振るうインテルの司令塔。3-5-2のアンカーというと通常は中央低めに位置を取って組み立ての中核を担うことが多いが、ブロゾヴィッチは豊富な運動量を活かしたより動的なプレースタイルで攻撃をオーガナイズするのが特徴だ。センターバックとポジションを入れ替えて最終ラインに下がったかと思えば、中盤でポゼッションのリズムを作り、さらに敵陣深くに進出して前線のアタッカーにアシストを送り込むなど、あらゆるところに顔を出して組み立てからフィニッシュまでの全プロセスに絡み、リーグ最多得点を誇るインテルの攻撃を下支えしてきた。前半戦で最も目立った活躍を見せたゲームメーカーであることは間違いない。

  • Fabian Ruiz Napoli Bologna 28102021Getty

    MF:ファビアン・ルイス(ナポリ/スペイン代表)

    リーグで最も高いボール支配率(58.5%)を誇るナポリの中盤に君臨する左利きの大型MF。長短の正確なパスを自在に使い分けて局面を前に進める自陣からのゲームメイクはもちろん、そこから敵陣に進出して攻撃の最終局面をお膳立てする仕事までもこなす、文字通りの「レジスタ」(演出家)だ。ワンタッチ、ツータッチのシンプルなボールさばきから、爆発的なスプリントを武器とするFWオシムヘンのタイミングのいい飛び出しに合わせて繰り出される鋭い縦パス、さらには50m級のサイドチェンジや裏へのロングフィードまで、あらゆるパスが高精度。5得点2アシストという数字が示す通り、左足のミドルシュートも強烈と、セリエAで最も完成度の高いセントラルMFのひとり。12月に入って彼(とクリバリ)を故障で欠いた途端にナポリが失速したのは偶然ではない。

  • Hakan Calhanoglu, InterGetty Images

    OMF:ハカン・チャルハノール(インテル/トルコ代表)

    右足の正確きわまりないキックを武器に2ライン間からの決定的なパスやアシスト、さらにはセットプレーからも違いを作り出す「10番」。ミランとの契約を満了し移籍金ゼロでインテル入りという“禁断の移籍”でインテリスタに快哉を叫ばせた一方、ミラニスタからは憎悪の的となった。さらにポジションがミラン時代のトップ下からインサイドハーフに変わったこともあり、シーズン序盤は精彩を欠く試合も目に付いた。しかし11月7日のミラノダービー(第12節:1-1)で自ら望んでPKを蹴り決めたことで吹っ切れたたのか、それ以降は自信に満ちた思い切りのいいプレーでチーム内での存在感を一気に高めている。6得点8アシストのうち、5得点5アシストはそのダービー以降の7試合で挙げたもの。12月4日のローマ戦(第16節:3-0)ではCKから直接ゴールを決めるなど、近年は鈍ったかに見えたプレースキックの切れ味をも取り戻した。今、セリエAで最も輝いている攻撃的MFだ。

  • Berardi Raspadori Sassuolo Lazio Serie AGetty

    OMF:ドメニコ・ベラルディ(サッスオーロ/イタリア代表)

    6月のEURO2020でもイタリア優勝に貢献したテクニカルなレフティは、右サイドからドリブルでカットインしてのシュート・アシストが最大の武器。リーグ3位(56%)という高いボール支配率から数多い決定機を作り出すサッスオーロにおいて、ベラルディの仕掛けとそこからの創造性溢れるチャンスメークは生命線だ。そのタレントが大きな注目を集めた20代前半にはパフォーマンスのムラや守備のサボり癖も目についたが、27歳を迎えた今はそれもほとんど消え、コンスタントに違いを作り出している。ゴール+アシストの総計(15=8得点7アシスト)でヴラホヴィッチ(19=16得点3アシスト)に次ぐリーグ2位タイという数字はその証明。セリエA有数のアタッカーとして際立った存在感を発揮している。

  • Vlahovic Fiorentina MilanGetty Images

    FW:ドゥシャン・ヴラホヴィッチ(フィオレンティーナ/セルビア代表)

    13節~18節まで6試合連続、8得点と絶好調。前半戦18試合で16ゴールを挙げて得点王レースのトップを走る、セリエA今シーズン最大の主役。身長190cmという恵まれた体格に高いテクニックとスピードを兼ね備えたレフティで、10代から将来を嘱望されてきた大器だ。2トップの一角で前線を広く動くことを求められていた昨シーズンまでとは異なり、今シーズンは新任のイタリアーノ監督の下、3トップの中央でポストプレーとフィニッシュに専念するというタスクを与えられたことでプレーが整理され、持ち前の得点感覚が全面的に開花した。ペナルティエリア内でDFと駆け引きし、タイミング良くマークを外して先にボールに触れる「嗅覚」は抜群。2023年で切れる契約の延長を拒否しているため、早ければ今冬、そうでなくとも来夏にはメガクラブへのステップアップが確実視されており、すでに争奪戦が加熱している。

  • serieA best11(C)Goal

    セリエA:2021-22シーズン前半戦ベストイレブン(4-3-2-1)

    GK:メニャン

    DF:トロイ、シュクリニアル、ブレーメル、テオ・エルナンデス

    MF:デ・ローン、ブロゾヴィッチ、ファビアン・ルイス

    OMF:ベラルディ、チャルハノール

    FW:ヴラホヴィッチ

    ※次点

    GK:オスピナ(ナポリ)

    DF:ディ・ロレンツォ(ナポリ)、トモリ(ミラン)、クリバリ(ナポリ)、ペリシッチ(インテル)

    MF:バレッラ(インテル)、フロイラー(アタランタ)、ジエリンスキ(ナポリ)

    FW:インモービレ(ラツィオ)、サパタ(アタランタ)、レオン(ミラン)