Can Madrid avoid another crushing ClasicoGetty

レアル・マドリーの凋落:バルセロナとの決勝で訪れた「変化のチャンス」

レアル・マドリーのプランは、今のところうまくいっていない。今季三冠達成も期待されたロス・ブランコスだが、その期待を大きく裏切っていると言っていいだろう。チャンピオンズリーグでは準々決勝でアーセナルに大敗し、ラ・リーガでも「盤石の勝利」と言える試合はほとんどなくなってしまった。そうした中で、26日には宿敵とのコパ・デル・レイ決勝戦を迎える。

“クラシコ”は常に様々な思いが交錯する世界屈指の大一番であり、最終的な結果が直近の状態を反映していないことは往々にして起こり得る。特別な重みのある試合だからだ。今回もタイトル以上に、両チームのプライドをかけた一戦になることは間違いない。

しかし今回の“クラシコ”に関しては、あまりにも両チームの状況が違いすぎる。バルセロナが圧倒的なパフォーマンスを見せつつ未来を感じさせる一方で、レアル・マドリーは日を追うごとに低迷し、今ではその将来にも暗雲が漂っている。それがこの決勝戦で露呈する可能性は十分にあるだろう。

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    異変

    クリスティアーノ・ロナウド対リオネル・メッシ、ジョゼ・モウリーニョ対ペップ・グアルディオラなど……“クラシコ”はヨーロッパ最高の2チームが激突する場所だった。大差がつくこともあったが、常に張り詰めた空気が漂い、最後まで勝敗がわからない一戦だった。試合前の準備・戦術はもちろんだが、まさに「メンタルの決闘」と言える試合だったのだ。

    しかし、今季は違う。レアル・マドリーは、2度にわたってバルセロナによって叩きのめされた。最初のラ・リーガでの激突は0-4、次はスーペルコパ・デ・エスパーニャ決勝の2-5。カルロ・アンチェロッティは2度目の敗戦後、「悲しく失望している」と吐露している。

    「非常に悲しく、失望している。しかし、これがフットボールだ。その悲しみを抱えてここを去る。我々の悲しみはファンと同じ。本当に申し訳ない」

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  • Rudiger Arsenal Real MadridGetty Images

    脆弱な守備

    この2試合で9失点、誰が見ても守備が崩壊していることは明らかだ。前線の守備がハマらず(もしくは貢献せず)、中盤がペドリらに突破され、ラミン・ヤマルかハフィーニャに渡ったボールを奪えず、中央のストライカーにゴールを許す。失点の形は毎回同じだ。

    アンチェロッティは先日のアトレティック・クルブ戦後、「私の好みは4-4-2。守備が良くなるし、その点では最高のシステムだと考えている」と明かしていた。彼の言うようにキリアン・エンバペ&ヴィニシウス・ジュニオールを中央前に置くことで、その他の選手が適切な距離でコンパクトなユニットを形成することが可能になる。

    それでも、ダニ・カルバハルにエデル・ミリトンを欠く守備陣は脆弱であり、昨季の強みとしていた強固なブロックは幻になってしまった。名将の手腕でもいかんともしがたい状況が続いている。

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    エンバペとヴィニシウス

    さらに、そのエンバペが牽引する攻撃陣にも課題はある。加入初年度で40ゴールに到達しようとしているこのフランス代表FWが、十分な結果を残しているのは間違いない。しかし彼のポテンシャルを考えれば「もっとやれるはず」と思う人がいて当然だ。彼はNo.9ではない。本人は「今はチームに順応し、自分のスタイルでプレーできるようになった。本当に幸せ」と1月に語り、確かに加入当初よりは良くなった。

    それでもプレーしたいエリアがヴィニシウスと丸かぶりであり、強引に行くシーンと遠慮するシーンが極端に見えてしまっている。2人のポテンシャルを最大限引き出せてはいないだろう。また、いわゆるNo.9ではない事実はチームに重くのしかかっており、アーセナル戦では30本以上のクロスを上げたものの、効果的な攻撃はほとんどなかった。

  • FC Barcelona v RC Celta de Vigo - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    バロンドール候補

    シーズン開幕前、レアル・マドリーは「バロンドール有力候補が揃う世界最高の布陣」とも評価された。ヴィニシウス、エンバペ、ジュード・ベリンガムが並ぶチームは怖いものなしと語られていた。だが、その3人が今年バロンドールを掴む可能性は限りなく低い。奇跡的にニ冠を達成しても、ヴィニシウスが喉から手が出るほど欲しい栄光は2年連続で別選手にいくだろう。

    そして今年最高の個人賞を掴むのは、彼らの宿敵である可能性が高い。16ゴール21アシストのラミン・ヤマル、30ゴール23アシストのハフィーニャ、40ゴール3アシストのロベルト・レヴァンドフスキ……ラ・リーガ、チャンピオンズリーグ、コパ・デル・レイの三冠を達成すれば、トップ3がバルセロナの3トップになるはずだ。なお、ヤマル自身は「そんな話はしてないよ。もしタイトルを獲得できれば誰かが受賞すると思う。でも、バロンドールは気にしてないよ」と語っているのだが。

  • Getafe CF v Real Madrid CF - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    変化のチャンス

    フットボールは循環するものだ。どんなに優れた監督でも、どんなにタイトルを獲得しても、いつかはそのサイクルは終了する。先日、今季終了後のアンチェロッティ退任が決定的と一斉に報じられたが、まさに一時代の終焉が訪れたと言っていいだろう。

    シーズンを追うごとに、レアル・マドリーは崩壊に向かっている。根拠のない「俺達はレアル・マドリーだ」という主張は、アーセナルが幻想であることを証明した。このタイトルのかかった“クラシコ”でも、そうした主張は通用しないだろう。

    だからこそ、今回の一戦を「変化のチャンス」と捉える必要がありそうだ。宿敵バルセロナ相手に今季3連敗を喫したすれば、これ以上落ちることはない。ある意味で来季以降を見据えたフレッシュなスタートに期待すべきなのだろうか。