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プレミアリーグ序盤戦を振り返ろう!主人公は昇格組と“魔法使い”?高すぎる期待に応えられない名門も

2021-22シーズンのプレミアリーグが開幕してから、あっという間に1カ月半以上が経過。各チーム第7節までの日程が終了し、首位チェルシー(勝ち点16)、2位リヴァプール(同15)、3位マンチェスター・シティ(同14)と、優勝候補と目されていた強豪チームが順当に上位を占める結果となった。

しかし今季はそれだけでなく、躍進したサプライズチームや期待はずれの強豪チームなど、序盤戦には様々なドラマがあった。今回は10月のインターナショナルウィーク突入を前に、プレミアリーグに精通する田島大氏に◎(期待以上)、○(期待通り)、△(結果は出ずも今後に期待)、×(期待はずれ)の4項目から、各2チームずつをピックアップしてもらった。

文=田島大

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    ◎:ブレントフォード、ブライトン

    シーズン序盤戦の主役は、開幕戦でいきなり名門アーセナルを倒した(2-0)プレミア初挑戦のブレントフォードだろう。格上を相手にも臆することなく真っ向勝負を演じる彼らは、3-3の打ち合いとなった第6節のリヴァプール戦でも1点を追いかけて超攻撃的な「3-4-3」の布陣に移行すると、同点に追いついただけでなく、決勝点まで奪いかける勢いで優勝候補を追い詰めた。注目は、驚異的な反射神経を持つ守護神GKダビド・ラジャと、10月は見送られたがイングランド代表招集の噂があるFWアイヴァン・トニーだろう。さらに分析官兼セットプレー担当のベルナルド・クエバが編み出す多種多様なセットプレーも面白い。

    そんなブレントフォードに唯一黒星(0-1)を付けたのがもう一人の主役、ブライトンだ。彼らの場合は「期待以上」というよりは「期待値以上」だろう。実は、ゴール期待値(xG)で算出した勝ち点の統計ならば、昨季も彼らは上位にいた(トップ4に次ぐ5位!)。実際は決定力不足に喘いで16位に留まったが、今シーズンは昨季まで「xG」を大幅に下回っていたFWニール・モペイが期待値以上のゴール数を稼ぐようになり、7試合で勝ち点14の6位。ちなみに昨季は、開幕18試合で14ポイントだった。髭を貯えたグレアム“ポッター”監督は、本当に魔法が使えるようになったのかも……。

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    ○:リヴァプール、マンチェスター・C

    昨シーズンの失速は、やはりケガ人が原因だったようだ。大黒柱のDFフィルジル・ファン・ダイクが長期離脱から復帰した今季のリヴァプールは、30年ぶりにリーグ制覇した2019-20シーズンの輝きを取り戻している。同選手が最終ラインで貫録を見せるだけでチームメイトも自信を持ち、中央突破でもサイド攻撃でも迷わずにクロスやフィニッシュワークに持ち込むため、見ていて痛快だ。ここまで唯一の無敗というのも納得できる。これで南野拓実に出番が回ってくれば言うことないのだが……。

    そんなリヴァプールと優勝争いを演じるのは、3位につける王者シティだ。彼らはセルヒオ・アグエロが去り、ハリー・ケインやクリスティアーノ・ロナウドを獲り損ねて「点取り屋」の不在が危惧された。案の定、第5節のサウサンプトン戦では90分まで枠内シュートを放てずに攻め喘いでスコアレスドロー。それでも彼らのチーム力には疑いの余地がなく、その翌週には敵地でチェルシーを撃破(1-0)。ここまで14ゴールを12名で分け合うという総合力で連覇を目指す。それにしても第7節のリヴァプール対シティ(2-2)は、ペップ・グアルディオラ監督が試合後に振り返ったように「世界最高のリーグ」を証明する最高のエンタメだった!

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    △:アーセナル、クリスタルパレス

    無得点で開幕3連敗というクラブ史上初の屈辱で最下位。第4節のノリッジ戦は「残留争い天王山」と揶揄されアーセナルだが、そこから3連勝で何とか中位に踏みとどまっている。好転のきっかけは、バーンリー戦で決勝点となる完璧な直接FKを叩き込んだMFマルティン・ウーデゴールもそうだが、やはり最終ラインを安定させたGKアーロン・ラムズデールと日本代表DF冨安健洋だろう。ハイタッチで好守備を称え合う二人の姿は、悩める名門の希望だ。さらに第6節のノースロンドン・ダービーではエミール・スミス・ロウ(21歳)やブカヨ・サカ(20歳)など生え抜きタレントが大仕事をするなど、上昇気流を掴みかけている。

    そしてそんなアーセナルのレジェンド、パトリック・ヴィエラがチームを率いるパレスにも浮上が期待できる。ここまでわずか1勝で14位に低迷しているが、チェルシーからローン加入のMFコナー・ギャラガー(21歳)が積極的にアタッキングサードに侵入して2得点1アシスト、そして2本のPK獲得と大活躍。もちろんエースのウィルフリッド・ザハも健在で、堅守速攻から“組み立て型”へとスタイル変更を推し進めながら残留を目指す。ちなみに代表ウィーク明けの一発目が、ヴィエラ監督にとって古巣対戦となるアーセナル戦だ。

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    ×:トッテナム、マンチェスター・ユナイテッド、そして…

    エースの移籍騒動に揺れたスパーズは開幕3連勝スタートを切るも、そこから3試合連続3失点でロンドンダービー3連敗。宿敵アーセナルにも1-3で苦汁をなめさせられた。結局チームに残留したハリー・ケインも6年ぶりに開幕6試合不発。昨季の二冠選手(得点王+アシスト王)が影を潜めているため、韓国代表FWソン・フンミンに頼る部分が大きく、ヌーノ新監督も試行錯誤が続く。無論、タレントは揃っているし、新戦力のスペイン代表MFブライアン・ヒルが今後どのように融合するか楽しみだが、シーズン序盤戦は苦しかった。

    マンチェスター・ユナイテッドも高すぎる期待に応えられなかった。2位に入った昨シーズンからジェイドン・サンチョ、ラファエル・ヴァラン、そしてクリスティアーノ・ロナウドを新たに加えたのだから期待されて当然だ。いきなり2得点というC・ロナウドの鮮烈な再デビューで勢いづくかに思われたが、その後は結果だけでなく内容も振るわず、監督が矢面に立たされることに。ビッグ6(リヴァプール、トッテナム、シティ、チェルシー、アーセナル)との対戦を控える代表ウィーク明けの7試合が正念場だ。

    最後に、首位に立つチェルシーも、ここで満足して欲しくないので“期待外れ”にしておこう! トーマス・トゥヘルの元で進化を遂げる欧州王者は、優勝候補の本命とも目される。しかし、重箱の隅をつつくようだが、FWロメル・ルカクが燻っている。彼の潜在能力を最大限に引き出すためにも、往年のディディエ・ドログバのように、もっと大雑把にボールを預けて無理をさせても良いのでは?