Guardiola worst defeats GFXGetty/GOAL

グアルディオラ監督史上、最悪の敗戦ランキング:本人が「監督キャリア最大の失敗」と認める黒星とは?

去年の11月まで、ジョゼップ・グアルディオラは「You're getting sacked in the morning(お前は明日クビだ)」というチャントが自身に向けられたことがなかったはずだ。今季序盤にアンフィールドで聞いた際には自身のプレミアリーグ優勝回数を意味する6本の指を立てて応戦したが、第24節アーセナル戦(1-5)にはそんなことをする元気もなかった。

ペップが5失点を喫したのは、監督キャリアで2回目。スタジアムにファンが入った試合では史上初のことである。本人はこの異例のスコアに、「私にも起こり得ることだよ。私は特別な存在ではない」と語っている。

そうした中で『GOAL』は、これまでペップが指導者キャリアで喫した屈辱的な敗戦をピックアップ。バルセロナ、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ時代を振り返って検証する。

  • Pep Guardiola Luis EnriqueGetty

    6バルセロナ 3-0 バイエルン・ミュンヘン(2015年5月)

    グアルディオラにとって、この試合はカンプ・ノウのアウェイチームが座るベンチで迎える初めての試合であり、盟友ルイス・エンリケとの初対戦となった。しかし、バイエルンは負傷者が続出する危機的状況。ロベルト・レヴァンドフスキはピッチに立ったものの、鼻の負傷でフェイスガード着用を余儀なくされている。

    リオネル・メッシ、ルイス・スアレス、ネイマールの“MSN”を要するバルセロナの攻撃陣を前に、グアルディオラはホームでのセカンドレグに望みをつなぐため、珍しく守備偏重で臨んだ。そのプランはうまくいっていたが、78分にメッシにゴールをこじ開けられたことで状況は一変。その直後、ジェローム・ボアテングが“アンクルブレイク”をくらってメッシの2点目を許し、ネイマールに3点目を奪われた。結局、セカンドレグでも逆転不可能な点差で敗れている。

    セカンドレグでは3-2で勝利し、ある程度の面目を保ったものの、グアルディオラ・バイエルンにとっては最大の敗戦の1つと言っていいだろう。なお、バルセロナはそのまま決勝に進出し、ユヴェントスを破って歴史的な三冠を達成。ルイス・エンリケは、6年前にグアルディオラが成し遂げた偉業を再現した。

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  • Claudio Bravo Man City Getty

    5バルセロナ 4-0 マンチェスター・シティ(2016年10月)

    マンチェスター・シティで迎えた最初のチャンピオンズリーグで、感動的な古巣への帰還になるはずだった。しかし、それは幸せな出来事とは程遠いものだった。

    試合前の記者会見からおかしかった。当時シティがメッシ獲得を狙っているとの噂が熱を帯び、グアルディオラは批判を浴びることに。そこで指揮官は、当時のバルセロナ会長ジョゼップ・マリア・バルトメウに対して皮肉を述べ、それが大きく取り沙汰されている。さらにセルヒオ・アグエロをメンバーから外すという決断もあり、試合開始前から暗雲が立ち込めていた。

    今度はボックス内でフェルナンジーニョがかわされ、再びメッシのゴールを許すことに。するとその直後、バルセロナ獲得したGKクラウディオ・ブラーボが一発退場。最終的にメッシのハットトリック、ネイマールのダメ押し弾で、悲しい夜を終えている。

  • Manchester City FC v Tottenham Hotspur FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    4マンチェスター・シティ 0-4 トッテナム(2024年11月)

    公式戦4連敗を喫し、まさに歯車が狂い始めていた時だった。それでも11月のインターナショナルウィークが悪夢を終わらせてくれるという期待と、数日前にはグアルディオラの契約延長が発表され、チームの士気を高めていたはずだった。

    しかし、雑な守備の間をジェームズ・マディソンに完全に攻略されて2点を失い、ペドロ・ポロの3点目を許し、最後はカイル・ウォーカーがティモ・ヴェルナーに完敗して4失点目。これでシティ指揮官就任以降、ホームでの最悪の敗戦が確定している。

  • Liverpool v Manchester City - UEFA Champions League Quarter Final Leg OneGetty Images Sport

    3リヴァプール 3-0 マンチェスター・シティ(2018年4月)

    このシーズンは、イングランドサッカー界の主人公として、グアルディオラとユルゲン・クロップの熾烈なライバル関係が本格的に始まったシーズンでもある。同シーズン最初の対戦では、アンフィールドでの壮絶な戦いを経て、4-3でリヴァプールがプレミアリーグ優勝に向けて猛進するシティに最初に土をつけた。そしてチャンピオンズリーグ準々決勝での対戦が決まってさらに熱を帯びる中、ファーストレグは衝撃の結果になった。

    到着前にアンフィールドの熱狂的なサポーターにバスを包囲されるアクシデントがあったが、ピッチ上でも“レッズ”に完全に支配された。31分までにモハメド・サラー、アレックス・オックスレイド=チェンバレン、サディオ・マネにネットを揺らされ、指揮官もタッチライン際で呆然としている。

  • Erling Haaland, Gabriel MagalhaesGetty

    2アーセナル 5-1 マンチェスター・シティ(2025年2月)

    2年連続でタイトルレースを争ったことで湧き上がるライバル関係は、2024-25シーズンで決定的なものに。エティハド・スタジアムで行われた最初の対戦では、後半アディショナルタイムの劇的な同点弾で2-2で終わったものの、アーリング・ハーランドがガブリエウの頭にボールをぶつけ、さらに試合後に相手指揮官ミケル・アルテタへ「謙虚でいろよ」と発言。これで両サポーターの感情に火が付いた。

    そして最初の対戦から5カ月後、シティはアーセナルの強烈な反撃を受けることに。開始2分でミスからマルティン・ウーデゴールの先制弾を許すと、後半にはハーランドが同点弾を奪ったが、そこから1分もしない内に勝ち越し弾を浴びる。そこから完全に崩壊し、マイルズ・ルイス=スケリー、カイ・ハヴァーツ、イーサン・ヌワネリの得点を許した。これはグアルディオラにとって、指導者キャリア17年間で最悪の敗戦の1つとなっている。

  • Sergio Ramos Real Madrid BayernGetty

    1バイエルン・ミュンヘン 0-4 レアル・マドリー(2014年4月)

    おそらく、グアルディオラにとって最も悲惨な敗戦だろう。就任初年度から国内で圧倒的な強さを誇っていたバイエルンだが、名将カルロ・アンチェロッティ率いるレアル・マドリーとのチャンピオンズリーグ準決勝、敵地でのファーストレグは0-1で敗戦。ホームでのセカンドレグは勝利が必須だった。

    そして迎えたセカンドレグ、ファンだけでなく、選手やクラブ幹部たちも攻撃こそが最善策だと考えた。そしてグアルディオラは、この時ばかりはそうした声に流されている。当時は中盤を制圧するために3-4-3を基本にしていたが、セカンドレグでは4-2-4という超攻撃的なフォーメーションを採用。さらに試合前、選手たちへ「これは楽しむための試合ではない。相手を倒すために行くんだ。君たちはドイツ人なんだ。ドイツ人らしく、攻撃的に行くぞ」と伝えている。

    しかし、それが完全に裏目に出た。前半だけでセルヒオ・ラモスの2ゴールとクリスティアーノ・ロナウドの一撃を許し、終了間際にエースに2発目を決められ、終わってみれば0-4。惨敗だった。

    たしかに、スコアを見ればアーセナル戦が最悪だろう。だが、グアルディオラに深く刻み込まれた黒星という意味では、このレアル・マドリー戦を超えることはない。監督キャリアで最も怒りに震えた試合でもある。指揮官は後日、友人であり作家のマルティ・ペラルナウにこう認めている。

    「私は間違っていた。完全に間違っていた。とんでもない失敗、大失敗だ。監督キャリアで最大の失敗だ」