Pedri respect Barcelona GFX 16:9GOAL

現・世界最高の司令塔:ペドリはついにバルセロナで“アンタッチャブル”な存在へ

約1年前、スペインのあるメディアはペドリについて「(バルセロナ内で)もはやアンタッチャブルではなくなった」と報じた。多くの人間が信じなかっただろうが、実際にクラブが放出してもおかしくない状況は確かにあった。

まず、バルセロナの財政問題。チームを保つためには選手売却が必須となっており、高額な移籍金が期待できるペドリは放出候補になる可能性も排除できなかったのだ。さらに、当時の彼は継続的なケガに悩まされ続け、約3年間で6度目となるハムストリングの負傷で戦列を離れたばかりだったのだ。その類まれな才能に疑いの余地はないが、コンディション問題はクラブ内でも不安視されていた。スペイン代表として出場したEURO2024での再負傷は、世界屈指の才能を持つ彼を見守る世界中のファンが胸を痛めただろう。

それでも、ペドリはあの負傷から約8カ月後、キャリア最高の時を迎えている。

  • Real Valladolid CF v FC Barcelona - La Liga SantanderGetty Images Sport

    鮮烈なインパクト

    2020年夏にバルセロナへ加入から彼が残してきたインパクトは、今さら説明もいらないだろう。ラス・パルマスからたった500万ユーロでやって来たペドリは、数カ月後にはレギュラーを奪取。そして信じられないようなヒールパスで、リオネル・メッシの単一クラブにおける史上最多得点記録をアシストしたのだ。クラブ最高の選手は、もちろんペドリを指さして喜びを爆発させている。

    ペドリとメッシ。彼らは最高のコンビネーションを見せ、クラブの象徴と未来が同時に存在していることにファンは胸を躍らせたことだろう。彼らの関係が長くは続かなかったことは残念でならない。

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  • FC Barcelona v Cadiz CF - La Liga SantanderGetty Images Sport

    明らかな過負荷

    そんなペドリを、バルセロナとスペイン代表は働かせ続けた。2021年だけでクラブで52試合に出場、さらにEUROとオリンピックでスペイン代表としてプレーした。合わせて73試合に出場。当時18歳の彼の身体は、予想通り悲鳴を上げてしまった。

    2度にわたるハムストリングの負傷により、2021-22シーズンがほとんどプレーできず。3月のアトレティック・クルブ戦、涙を浮かべて交代した彼の姿は痛々しかった。ファンの中には、アンス・ファティと同じく巨大な才能が失われることを危惧した人も多かったはずだ。

  • FC Barcelona v Deportivo Alaves - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    復活への道

    しかし、バルセロナはペドリのためにあらゆる手を尽くしている。アメリカでペドリの筋遺伝子を詳細に分析、日々の筋力増強が欠かせないことを明らかにすると、手厚いサポートを行った。さらに、現在指揮を執るハンジ・フリックと彼のスタッフは、激しい負荷を強いるスタイルに無理なく適応できるよう、毎日コミュニケーションを欠かしていない。本人も『ムンド・デポルティーボ』でこう語っている。

    「フィジカル面では以前よりもずっと良くなったし、色々できるようになったと思う。トレーニングはハードになったけど、今のフィジカルトレーナーには本当に助けられているよ。試合にもそれが表れていると思う。チームとして70分や80分になってもペースを落とすことはないし、高いフィットネスレベルを維持できているんだ」

  • Hansi FlickGetty Images Sport

    フリックの功績

    そうした成果は、ペドリに身体にも表れている。22歳となった今シーズン、ここまで欠場したのは体調不良の1試合だけ。現代のMFとしては線が細いままかもしれないが、以前よりも遥かにたくましくなった。もちろん、クラブにおける重要度はさらに高まっている。

    繰り返しになるが、その点で重要な役割を果たしているのがフリックだ。バルサ全体のフィットネスレベルを向上させただけでなく、ジョアン・ラポルタとチャビの解任劇によって蔓延していた嫌な雰囲気を払拭した立役者もドイツ人指揮官である。ペドリは、前述のインタビューでこう語った。

    「ハンジは僕らと話すのが大好きみたいだ。すごくフレンドリーだね。真面目に見えるけど、冗談も好きなんだ」

    「僕らのような若い選手を本当に助けてくれる。みんなのニーズを常に把握しているんだ。でも、真剣にならなきゃいけない時はそうしてくれる。軍曹みたいなところはあるけど、話す時は本当に良い人だね」

  • FC Barcelona v Atletico de Madrid - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    バルサ最高の選手

    フリックはまた、ペドリのポテンシャルを最大限に引き出すために非常に重要なポジション変更も行った。以前はより攻撃的なポジションにいたが、現在はマルク・カサドやフレンキー・デ・ヨングのような、よりオーソドックスな守備的MFの隣でダブルボランチを形成している。

    考え方はいたってシンプル、「ペドリはバルセロナ最高のボールプレイヤーなのだから、できるだけボールに触らせればいい」だ。だが、この戦術はフリックの想定を上回る効果を見せている。今季はすでに5ゴール6アシストも記録したが、それ以上にチームを動かす心臓としてますます存在感を発揮している。

    今季のヨーロッパ5大リーグでボール奪取数は最多(233回)、チャンスクリエイト数(61回)はハフィーニャに次ぐクラブ2位だ。さらにファイナルフェーズでのパス成功率もチーム最多、タックル成功数(45)とデュエル勝利数(177)で2位、インターセプト数(23)はトップタイである。

  • Real Madrid v FC Barcelona: Spanish Super CupGetty Images Sport

    “アンタッチャブルな存在”

    フリックが「ペドリを他の選手と比較するべきじゃない」と主張するのも最もだ。彼が繰り返し称賛しているように、今現在は世界で最高の司令塔と言っても過言ではない。ペドリは「解放された気分だよ。フリックもそうだと思う。プレッシャーを感じずに、自分が学んできたことをやる。今は本当にリラックスできているよ」と語っている。フィジカルの安定により、自信と落ち着きは間違いなく高まっている。今後も超過密日程の中で彼の負荷を管理しなければいけないのは確かだが、そう簡単に壊れる選手ではなくなったのだ。

    バルセロナ加入から4年、ペドリはようやくケガのない体を手に入れた。2030年まで新契約を結んだ後、「これほどサッカーを楽しめたのは本当に久しぶり。僕は今、自分が最もいたかった場所にいる。数年後にはさらに強くなっているはずだ」と満足気に話している。

    昨年の報道から約半年、ペドリはついに“アンタッチャブルな存在”になったのだ。そして、バルセロナが今季可能性のある3つのビッグタイトルを手にしたならば、それは間違いなくこの魔術師の力によるものである。