©GOALルヴァンカップもいよいよプライムラウンド準々決勝を迎える。準々決勝には、プレーオフラウンドを勝ち上がった柏レイソル、サンフレッチェ広島、湘南ベルマーレ、横浜FCと、クラブワールドカップ（CWC）に出場した浦和レッズ、アジア・チャンピオンズリーグ（ACL）に出場したヴィッセル神戸、川崎フロンターレ、横浜Fマリノスを加えた計8チームがホーム＆アウェイを戦う。ここではサッカー解説者の水沼貴史氏とサッカージャーナリストの北條聡氏が、9月3日に第1戦、7日に第2戦が行われる準々決勝４試合を展望した。（取材日＝8月12日）
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©Getty Images北條：9月は夏の移籍市場を経てメンバーも代わっているところがあるので予想はなかなか難しいですよね。
水沼：難しい。でも、サッカー自体はハッキリしている時期でもあります。今年のレイソルは誰が見ても素晴らしいサッカーをしています。中心選手である熊坂光希が6月の代表活動で大ケガをしましたが、中川敦瑛が抜擢されて同じように機能しています。小屋松知哉、久保藤次郎らも覚醒しましたね。
北條：リカルド・ロドリゲス監督は、選手がもともと持っていた力を存分に活かせるようなチームを作りましたね。
水沼 ：渡井理己、小泉佳穂、垣田裕暉も覚醒しました。
北條：渡井、垣田は徳島時代の教え子ですね。
水沼：あと古賀太陽です。現代型センターバックとしてビルドアップのパスが素晴らしい。優勝争いをしていますが、「リカルド・チルドレン集合！」といった補強もあって、誰が出ても機能するチームになっています。
北條：スリーバックの左利きの選手がここまで揃っているチームはなかなかないですね。
水沼：強化もリカルド監督に合う選手を獲ってきています。準備が相当良かった。対する横浜FMは…相当準備が悪かった、ってことになりますね。監督交代が2度あり、今3人目ですから。夏に移籍する選手も多く出ました。でも、角田涼太朗が海外から帰って来ましたね。
北條：期待大ですね。新戦力ではディーン・デイビッド。
水沼：期待しています。サッカーの展開としては、柏に相当ボールを握られるでしょうから、マリノスは運動量がないとダメですよ。今年のマリノス、走れない試合が多かったですから。
北條：これは走らないのか、走れなかったのか。
水沼：見ていただいてみなさんに判断していただければ。
©Getty Images北條：夏移籍で湘南は主力3人が移籍しました（鈴木淳之介、福田翔生、畑大雅）。
水沼：毎年です。でもそれは強化の目利きがいいということでもある。
北條：優秀なんですね。そしてちゃんと育てている。強化も監督もいい選手をしっているからこそなんですが、同時に3人はやはりきつい部分もありますね。
水沼：山口（智）監督もやりくりを頑張っている。
北條： 毎年そういう状況の難しさがあるなかで、それでもうまくやってくるだろうという感じがあります。
水沼：走る湘南といったイメージから、今季はポゼッションもしつつ縦スピードだけじゃないサッカーを組み立ててきました。そこでまた3人抜かれて、新しい選手が入って来て、もう一度組み立てとなると大変です。GK上福元直人が大ケガをして、ポープ（・ウィリアム）を獲りましたが、難しさはあるでしょう。
北條：一方の広島はもっと勝ってもいいくらいの内容のサッカーをしていますね。競争があるからだと思いますが、いろいろな選手が使われています。あとはFWじゃないですかね。木下康介は獲りましたが。
水沼：木下が前にいればジャーメイン良は代表のように点が取れるはず。
北條：なかなか思うようにいかないですが、決定は結構ありますから。ジャーメインは守備でもすごくハードワークしますし、起点にもなっています。
水沼：攻撃陣でいえば、中村草太。最適解はどこなんでしょう。ウイングバック？ シャドー？
北條：自由度が高そうなポジションで考えるとシャドーのような気がします。あと個人的にはこの試合で田中聡選手に期待します。古巣ですから。湘南の側では藤井智也選手が古巣です。
水沼：選手は相当意識しますよ。
北條：サイドの攻防がバチバチして面白そうじゃないですか。
水沼：この選手はここがいいみたいなポジションが見えてくるかもしれない。強度も問われる対戦になると思います。
©Getty Images水沼：横浜FCも監督が代わりました。フィジカルの強さは残しつつ、また違うサッカーをしたいと三浦文丈監督が言っていましたが、ここもトップの最適解が分からない。櫻川ソロモンとルキアン、室井彗佑。
北條：ボランチの山田康太をシャドーで使う手もありますよね。
水沼：守備はある程度頑張れるチームだと思いますが、左CBに誰を使うか。攻撃的にやる分には、福森晃斗を使いたいですね。
北條：彼がいればセットプレーが強くなります。
水沼：カップ戦だからそういう武器を持っていたほうがいいと思いますよ。
北條：ボランチの人選を見ても三浦監督はフィジカルの強い選手を優先しています。あと夏の補強では、アダイウトンも気になりますね。短い時間帯でも仕事しますし。でもまずは守備から入るでしょうけれど。
水沼：相手が神戸ですからね。負傷離脱していた武藤（嘉紀）や大迫（勇也）も戻って来ましたし。佐々木大樹、宮代大聖もずっといいですし。あと、横浜FMから獲得した永戸（勝也）もハマりましたね。
北條：神戸はあのポジション（SB）にずっと苦労してきましたが、大きな武器になりました。スキがないですね。
水沼： スキがなくなりましたね。ロースコア対決になるでしょう。吉田（孝行）監督は天皇杯のときに厳しいことを言っていました。「若手は何もできていない」と。セカンド的な選手たちが「出た時にどれだけできるか」。それは私も思います、彼らはもっとできるはずです。
©Getty Images水沼：ガンガン行ってほしい試合ですね。浦和はそんなイケイケではないですが、基本的にはプレッシャーをかけてボールを拾って速く攻める。スコルジャ監督はそこを狙っていると思います。その期待に応えられているかはクエスチョンマークな部分もあるんですけど、でも、狙いはそうなので。川崎Fも長谷部監督になってから少し変わりつつありますね。この対戦は、プレッシャーをかけ合って、ゴールに直線的に向かっていくようなシーンが多くあってほしいと思いますね。
北條： 固い試合よりも点を取り合うような。
水沼：両チーム、ボランチの二人ともハードワークができて、展開もできる。浦和の安居（海渡）とグスタフソン、川崎Fは山本悠樹とその相棒が誰か。橘田（健人）なのか河原（創）なのか。そこの展開や中盤の強度。その位置から前に入ってしまえば（決定機になる）とサッカーです。
北條：お互いそうですね。詰まっていても一瞬で局面を変えられる選手がいっぱいいます。
水沼：浦和は小森（飛絢）が加入しましたし、マテウス・サヴィオ、金子（拓郎）もいます。金子は結構流動的というか、インサイドに入ってくるので面白い。
北條：小森は典型的なワンタッチゴーラーで、不思議と固め取りが得意ですね。自分でというよりも、アシスト環境が整っていたら、ボールを渡してもらえれば、全部いける選手です。
水沼：こぼれ球のリアクションが早い。体の向きも作れるし、次どこに来るんだという予測を立てる力がある。
北條：浦和にとって一番欲しい最後のピースが入った感じですね。
水沼： 川崎FはCBがどうなるか。浦和には小森がいますし、サヴィオもいます。
北條：川崎Fにはマルシーニョがいますよ。
水沼：それに対する石原広教のリアクションも面白い。ここの攻防も楽しみですね。
©Getty Images北條：ルヴァンカップは若手選手が台頭するイメージもあります。
水沼：そういう選手たちに「出て来いよ」という意味も込めてこの大会が始まっているような感じもします。選手が出て来て、日本代表に入る、チームのレギュラーになって飛躍していくといったストーリー性があります。あと、監督としても多分使いやすい大会でもあるんです。そういう意味では、この大会をステップに、伸びていこうとする選手は多いだろうと思います。ファン、サポーターのかたたちは「あ、あの選手やっと出てきた」「プレーを見られる」といった楽しみ方ができますね。準々決勝に残っているチームにはアンダーの代表にも選ばれている広島の中島洋太朗、川崎Fの大関友翔、神田奏真といった選手たちがいますね。
北條：そんな若い選手たちの活躍を期待つつ。
水沼：若い選手はチャンスが欲しくて仕方がないので。チャンスでどれだけアピールできるか。あとチームメイトはその選手の能力の高さを分かっていますね。中島はそういった話をよく聞きます。大関も非凡なセンスの塊。浮き球のパスや空間を使うのがうまい。それは（中村）憲剛を見てきたんだろうなあと感じます。
北條：そういうところも一緒に楽しんでほしいと思います。
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