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メッシとPSG、“愛の無い結婚生活”の終焉:QSIの「憎むべき全ての象徴」に

リオネル・メッシは、パリ・サンジェルマン(PSG)から2週間の活動停止処分を受けた。この結果、残りリーグ・アン5試合中2つを欠場する――少なくとも、だ。もう彼がPSGのシャツを着てプレーするかどうかはわからない。来シーズンは間違いなく、このクラブにはいない。

メッシがPSGと契約延長する見込みはもうない。終わったのだ。もちろん、これは必然だった。

毎年恒例となりつつあるチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16での敗退の後、『GOAL』の取材で明らかになったように、PSG側は商業的な理由から最多7度のバロンドールを手にした男を引き留めたかった。だがファイナンシャル・フェア・プレー(FFP)の懸念から、今夏の移籍市場でとんでもない金額を受け取るスーパースターの内1人は放出しなければならない。キリアン・エンバペがクラブの顔で、ネイマールを欲しがるクラブはない。故に、常にメッシがその候補だったのだ。

ワールドカップ覇者にして史上最高の選手の1人の去り方は、おそらく滑稽に映るだろう。だが、ふさわしいものでもある。

文=マーク・ドイル

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    「史上最高の移籍市場」

    確かにこれまでのことを考えれば、PSGの抱える問題の象徴としてサポーターから軽蔑され、険悪なムードのまま退団するのは当然と言えば当然である。

    2年前、メッシら獲得に成功したマーケットは「史上最高の移籍市場」と称えられた。だが、実際にその補強戦略は大失敗であることが証明されている。ヌーノ・メンデスとダニーロはまずまずの結果を残したが……ジャンルイジ・ドンナルンマはEURO2020の姿には程遠く、セルヒオ・ラモスも以前の面影はなし。ジョルジニオ・ワイナルドゥムはすでにローマへと去っていった。アクラフ・ハキミもどこに行くのかわからない。

    そしてメッシの到着は、間違いなく最もエキサイティングだった。だからこそ、失望は最も大きいのだ。

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    「メッシ効果」

    メッシは明らかにピッチ外での方が成果を出している。PSGのスポンサーシップ・ディレクター、マーク・アームストロングは2021年12月、『GOAL』のインタビューで以下のように語っている。

    「スポンサーやマーチャンダイジング、ホスピタリティ、チケット収入に至るまで、すべてのビジネス領域で効果を実感している。加入から1週間でSNSのフォロワーが2000万人増加した。選手獲得を発表する投稿では、史上最高のエンゲージメント率を獲得したんだ」

    これらの効果こそ、PSGがメッシをもう1年維持したかった理由だ。知名度の高い選手たちで構成されるブランドの中で、メッシは不可欠な存在だった。テレビ放映権から得られる収益が比較的少ないリーグ・アンで圧倒的強さを誇っているが、スター選手の名前がなくなった場合、世界的な舞台では関心がなくなってしまう恐れを抱えている。

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    「最も現代的な別れ」

    PSGの長年の目標はCL制覇であり、メッシも5度目の優勝を望んでいた。これが、この愛のない“便宜結婚”が実現した主な理由の1つだ。メッシは、PSGがもう1度ビッグイヤーを掲げるチャンスをくれると、純粋に信じていた。彼の法外な給与に応えてくれるクラブは他にあったのだから(それほど長いリストではないにしても)。

    しかし現実に目を向ければ、この契約は結局お金に関するものにしか意味がなかったのだ。だからメッシとPSGは一緒になり、だからこそこうして別れるのだ。

    この出来事は、「最も現代的な別れ」と言えるだろう。監督との衝突やスタメン落ち、軽率な夜遊びもない。メッシはサウジアラビアとカタールに浮気したのだ。それはPSGオーナーが公然と非難するはずだった。

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    「PSGのPRの勝利」

    今回の事件はPSGにとってPR面での巨大な勝利だ。少なくとも、彼らはそう見せようとするだろう。所属するスーパースターたち、そして何より長年苦しんできたサポーターへメッセージを送ったのだ。「パルク・デ・プランスで反抗的な態度は許さない。今後、選手は好き勝手できなくなる」と。

    一線が引かれ、新たな時代が幕を開ける。ファンはそれを買うか? それは疑問だ。彼らは馬鹿ではない。クラブの問題は根深く、メッシ以外にも及んでいることは知られている。メッシはクラブの哲学が欠落していることを象徴していたかもしれないが、彼がそうしたわけではない。

    だからこそ、5月3日に行われた一部ウルトラスの抗議活動は予想できたものだ。「Collectif Ultras Paris」は、「今こそ変革し、PSGの組織がその魂、精神、素晴らしさを取り戻すときだ。行動は平和的でなければならず、目標は構造的かつ知的な方法で物事を前進させることである」と声明を発表している。

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    「大失敗」

    もちろん、ファンが現チームを支持してくれるのが望ましい。だが先週末にはロリアンに敗れ、2位マルセイユとの差は「5」。メッシの欠場は、メディアの騒動と相まって、PSGのリーグ・アン制覇を後押しするものとは決して言えない。OBジェローム・ロタンは『RMC Sports』でこう語る。

    「この処分はトロワ戦前の重要な時期に行われた。まだタイトルや他の多くのものを失う可能性があるからだ。彼らはすでにPSGファンだけでなく、フランス全体のサッカーファンの支持を失っている。それが真実だ」

    「メッシの素晴らしいキャリアや才能を疑うつもりは一切ない。だが、PSG加入は大失敗だ。彼がプロとしての良心さえ持っていないのは信じられない」

  • Lionel Messi PSG 2022-23@Getty

    「メッシはQSIの憎むべき全てを表している」

    メッシはこの騒動を、活動停止処分とファンの反発をどう受け止めるのだろうか? おそらく、何も気にしていないだろう。少なくとも、ファンの間ではそう感じているかもしれない。試合後に挨拶へ行ったのはたった1度だけで、それもネイマールに促されてのことだった。ブーイングを浴びても浴びなくても、いつだって試合終了後にトンネルを降りる最初の選手だったのだ。チームのためにゴールやアシストを量産してきたが、サポーターとの絆を構築することに興味はなかったように見える。両者の間に愛情はない。あるファンの1人が『GOAL』に対し、こう語っている。

    「メッシはスポーツ面の契約より、マーケティング面での契約だった。結局、この3~4年間のQSI(カタール・スポーツ・インベストメント=2011年にPSGを買収)のプロジェクトで俺たちが憎むことすべての象徴となってしまった。彼はもっと違う、もっと素晴らしいキャリアを終えるに値するんだ」

    バルセロナへ復帰する可能性は十分にあるだろう。もちろん、「お金」を解決できればだが。しかし、カンプ・ノウへのロマンチックな帰還は、サッカー史上最悪の結果を経て、より納得できるものになったのは間違いない。この史上最高の選手にとって、こんな欧州キャリアの終わりはあまりにもふさわしくないからだ。