Man Utd Top Four GFXGetty/GOAL

マンチェスター・ユナイテッドの復活:チャンピオンズリーグ出場権を獲得できた8つの理由とは?

マンチェスター・ユナイテッドは、25日に行われたプレミアリーグ第32節延期分でチェルシーに4-1と快勝。これで勝ち点を72まで伸ばし、1試合を残して来シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得した。

確かにこれは、マンチェスター・Uにとって最低限のノルマだったかもしれない。しかし、昨シーズンはプレミアリーグでの30年間で最悪の勝ち点を記録し、4位トッテナムとは13ポイントも差をつけられたことを考えると、この功績は称えられるべきだろう。今回は彼らが「自分たちのいるべき場所」へと復帰を果たした理由を考察する。

文=リチャード・マーティン

  • Erik ten Hag Manchester United Brentford 2022-23Getty Images

    エリック・テン・ハーグ効果

    今季就任したばかりのテン・ハーグだが、ロッカールーム内におけるスタンダードを高め、遅刻や不適切な態度を許さず、チームを引き締めて素晴らしいシーズンの原動力になった。

    プレシーズンのラージョ・バジェカーノ戦から始まり、トッテナム戦で二度目の試合途中に退席したクリスティアーノ・ロナウドに対して厳格な対応を見せると、ウォルヴァーハンプトン戦ではチームミーティングに遅刻したマーカス・ラッシュフォードをベンチに置くなど毅然とした態度を見せた。誰かに喧嘩を売ることもなく、選手を名指しで批判することもない。現チームには調和が取れた雰囲気が漂っている。だからこそ、大敗を喫した後もそのまま転落することがなかったのだ。

    サー・アレックス・ファーガソンが去って以来、ユナイテッドの監督としてはデビューシーズンで最高勝ち点を達成する見込みとなったテン・ハーグ。この10年間で最も適した監督だろう。たしかにルイ・ファン・ハールやジョゼ・モウリーニョほどキャリアで成功を収めていないかもしれないが、決定的な差は彼が今、キャリアのピークにあるということだ。

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  • Marcus Rashford Manchester United 2022-23Getty Images

    ラッシュフォード無双

    ケガと極度の自信喪失で惨めな1年を過ごしたエースだが、プレシーズン前にアメリカで個人トレーニングキャンプを行ってリフレッシュを図ると、偉大な選手への道のりへと戻ってきた。自分のフォームを再発見しただけでなく、より決定的で、爆発力があり、誰もが想像していなかったようなスタイルの選手に変身した。

    今シーズンは公式戦で30ゴールを奪っており、チーム内2位のブルーノ・フェルナンデス(18ゴール)を大きく引き離している。まだリヴァプール、アーセナル、マンチェスター・シティ、カラバオ・カップ決勝のニューカッスル戦、ヨーロッパリーグのバルセロナ戦と、重要な試合でもネットを揺らし続けた。

  • Cristiano Ronaldo Manchester United 2022-23Getty Images

    クリスティアーノ・ロナウドの退団

    2度目の結婚生活はおよそ8カ月続いたが、昨年夏にはすでに離婚届の準備が進められていた。選手は退団を望んだが、獲得に手を挙げるクラブはおらず。結局11月に世界中で物議を醸したインタビューが公開されると、そのままサウジアラビアへと去っていった。今季C・ロナウドがマンチェスター・Uで45分以上プレーしたのは、リーグ戦では5試合のみ。勝ったのはたった2試合だ。

    インタビューが公開された夜、マンチェスター・Uはフラムと戦っていた。C・ロナウドは帯同せず、クラブ批判を唱え続けていたが、その夜は18歳FWアレハンドロ・ガルナチョの劇的な決勝ゴールで2-1と勝利している。これは時代の転換期であることを示すサインだった。

    それから6カ月が経過し、C・ロナウド不在のほうが遥かにクラブとして良い状態にあると言えるだろう。

  • Lisandro Martinez De GeaGetty

    リサンドロ・マルティネスの加入

    身長175cmのアルゼンチン代表DFは加入当初、理想的な解決策とは見られなかった。しかしピッチに立てば、彼の存在がDFラインを引き締め、トップ4フィニッシュの原動力になったことは間違いない。

    確かにプレミアリーグのDFとしては小柄だが、溢れる闘志と決定的なディフェンスでチームを救うだけでなく、ビルドアップ時にも卓越したスキルでチームに自信を植え付けた。さらにカゼミーロと並び、ロッカールームではリーダー格としての振る舞いも見せている。ラファエル・ヴァランとの関係は素晴らしく、大きな影響力を持っている。

    そしてマルティネス以外にも、アーロン・ワン=ビサカは自信を掴んでレギュラーの座を勝ち取り、ビクトル・リンデロフもマルティネス不在時をカバー。そしてダビド・デ・ヘアは、確かにミスはあったかもしれないが、今季のプレミアリーグ最多クリーンシート達成は素直に称賛スべきだろう。

  • Manchester United vs. BarcelonaGetty Images

    オールド・トラッフォードでの強さ

    テン・ハーグの下、オールド・トラッフォードでの強さは驚異的だ。今シーズン、ホームゲームでは26勝を挙げているが、これはプレミアリーグとCLのニ冠を達成した2007-08シーズンの成績を上回っている。まだ1試合を残しているが、稼いだ勝ち点は45。昨季よりも10ポイント増えている。仮に最終節で勝利すれば、2002-03シーズンに達成したクラブ記録の27勝に到達することになる。

    開幕戦でブライトンに敗れて以来、現在のプレミアリーグではホーム戦最長の無敗記録を更新中。全公式戦でも、他に敗れたのは9月8日のヨーロッパリーグ、レアル・ソシエダ戦だけだ。

    そしてこれが重要なのは、アウェーゲームでの戦績をカバーしてくれたこと。今季のリーグ戦アウェイ19試合で獲得した勝ち点は、最大57の内、たった27。トップ10の相手には、アウェイ9試合で7敗を喫している。

  • Bruno FernandesGetty

    リーダーとしてのブルーノ・フェルナンデス

    すべての大会でヒーローとなったことは間違いない。中盤の様々な場所に顔を出し、カゼミーロ不在時にはそのエリアをカバーし、両ウイングから攻撃的MFまで、あらゆるタスクをこなし続けた。チーム状況に左右されながらも16ゴール9アシストとしっかりと結果を残したほか、ピッチ上で最も声を張り上げ、模範を示してチームを牽引。伝統的なリーダーとして存在感を放った。

    またピッチ上で努力し続けたにもかかわらず、あらゆる試合に出場する超人的体力も発揮。ケガでの欠場は1試合もなく、FAカップ準決勝で負傷を抱えながらも、4日後のトッテナム戦では元気に先発を飾っている。

  • Casemiro Manchester United 2022-23Getty

    カゼミーロの経験

    何年もの間“マクフレッジ(マクトミネイとフレッジ)”再編の必要が叫ばれる中、CL5回制覇を達成したこのブラジル代表MF以上に適任はいなかったはずだ。マンチェスター・Uに必要だった経験、献身、強靭なメンタリティをもたらし、ピッチ上で最も重要なエリアで巨大な存在感を放った。

    もちろん守備的な役割もそうだが、今季は11ゴールに直接絡むなど、攻撃面での貢献も無視できない。

  • Kai Havertz Jurgen Klopp Chelsea Liverpool 2022-23Getty Images

    ライバルの苦戦

    マンチェスター・Uは復活の兆しを見せ、自らの力でCL出場を達成した。だがそれと同時に、ライバルたちの苦戦に助けられたことも間違いない。

    昨季3位で終えたチェルシーは、今回の敗戦で12位まで転落。トッド・ベーリーがオーナーになってから2度の監督交代を含めて混乱が続いており、暫定的にフランク・ランパードにチームを託すという決断も事態を深刻化させた。

    一方でリヴァプールも、昨季の激闘によって燃え尽きたかに見えるほど、特に序盤戦はケガ人やチームの不調に苦しんだ。昨季はなんとか4位に滑り込んでいたトッテナムも、アントニオ・コンテ監督のあの会見から悪化の一途をたどり、今ではヨーロッパカップ戦の出場権を逃すことが決定的になりつつある。

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