Man City moments that won title GraphicGetty

マンチェスター・シティ三連覇における決定的な瞬間10選:ハーランド獲得にカンセロ放出、アーセナルの大失速

マンチェスター・シティは、2022-23シーズンのプレミアリーグで再び王者となった。これで三連覇、クラブ史上初の快挙だ。イングランドのトップリーグ全体でも史上5チーム目、この優勝は最も記憶に残る優勝劇の1つとなっている。

確かに今季は3試合を残してリーグ制覇が決まった。とは言え、決して簡単なシーズンではない。開幕前は誰もが予想していなかったアーセナルの驚異的な躍進により、終始押されっぱなしだったのは事実である。1月中旬には、8ポイント差をつけられたことも忘れてはならない。

それでも、終盤戦にかけて見せたメンタリティとチームを決して緩めないジョゼップ・グアルディオラの手腕は、ライバル相手にシーズンダブルを導き、7度目のプレミアリーグ制覇を成し遂げている。今回は、過去6年で5度目のプレミアリーグ優勝のおける決定的な瞬間10選を紹介する。

文=リチャード・マーティン

  • Erling Haaland Présentation Manchester CityGetty Images

    アーリング・ハーランドの獲得

    シティのリーグ優勝が決まったのは2022年6月13日、アーリング・ハーランドの契約が正式に決まった日と言っても過言ではない。7月の灼熱の日にファンへお披露目された彼は、エティハド・スタジアムの外でこう述べた。

    「一緒に楽しい時間を過ごせると思うよ。楽しければゴールも決められるし、試合にも勝てるしね」

    典型的なストライカーなしで、昨季リヴァプールに競り勝って優勝成し遂げたばかりだった。それでも、ハーランドは別格だった。考え得るすべての得点記録を更新し、いとも簡単にネットを揺らし続けた。そして彼のようなゴールマシーンは、すでに強力なチームを完成に導くものであった。他のどのチームにもチャンスはなかったのだ。

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  • Erling Haaland Manchester City United 2022-23Getty

    ダービーの大勝

    タイトルを狙うチームには、早い段階でその兆しを見せる必要がある。今季のシティにとっては、最初のマンチェスター・ダービーがそうだろう。加入直後に「最も楽しみな試合」と話していたハーランドは、期待を裏切らずにハットトリックを達成。さらにフィル・フォーデンも3発を叩き込み、6-3で粉砕。夢のような午後となった。

    ユナイテッドのファンは自分たちが見たものを理解できず、多くが試合終了前にエティハド・スタジアムを後に。アウェイスタンドは空席ばかりだった。シティにとって、トップチーム相手の今季最初の大勝であり、他のチームに警告を与えた瞬間だった。

  • Erling Haaland Manchester City 2022-23Getty

    トッテナム戦の復活

    大晦日にエヴァートンと1-1、カラバオカップではサウサンプトン相手に敗退、オールド・トラッフォードではユナイテッドに1-2で敗れるなど、2023年のスタートは不安なものだった。そしてアーセナルとの差は「8」まで広がり、タイトルレースで遅れを取った。

    そして対戦したトッテナム戦、前半を0-2で折り返し、ファンはブーイングを浴びせている。ペップは憤慨していた。それが後半の逆転劇につながった。終わってみれば4-2の快勝だった。

    だが、この試合後のほうが重要だったかもしれない。怒りの収まらないペップは、選手やスタッフ、ファンに向けてメッセージを発した。自己満足な姿勢を見せる彼らを「ハッピー・フラワー・チーム」と揶揄。選手たちのリアクションを求めた。そしてその日から、シティはわずか5ポイントしか落としていない。

  • Joao Cancelo Pep Guardiola Man City 2022-23Getty Images

    ジョアン・カンセロの放出

    1月下旬、「マンチェスター・シティがカンセロをバイエルンへレンタルで放出する」とのニュースが流れた時、開いた口が塞がらないサッカーファンもいたはずだ。過去2シーズンはシティのベストプレイヤーであり、今季も印象的な活躍を見せていたからだ。

    だが、ペップがハーランド用に改革したシステムにうまくフィットせず、ナタン・アケにポジションを譲ることに。カンセロは目に見えて不満を溜め込んでいた。そして指揮官は、“腐ったりんご”を放置せず、チャンピオンズリーグを争うであろうライバルへの放出を許可している。

    しかしこの出来事は、ペップ自身の強さを示すものであり、自分がボスであること、さらにその決定を受け入れるべきとの方針を示すものであった。そしてカンセロ退団後は、アケとマヌエル・アカンジが完璧に左サイドバックをこなし、これまで以上にまとまりのあるユニットを形成している。

  • Man City Banner Aston VillaGetty

    プレミアリーグの告発

    2月6日、サッカー界に衝撃のニュースが飛び込む。2009年~2018年にかけて100を超える財務違反があったとして、プレミアリーグがシティを告発したのだ。タイトル剥奪の危機だけではなく、イングランド・フットボールリーグからの除名すら囁かれた。

    これほどの衝撃であれば、チームの根幹が揺らいでも何ら不思議ではない。だかシティは、むしろチームにエネルギーを取り戻すことに。ファンもそれに応え、プレミアリーグとの法廷闘争の担当弁護士を応援するバナーまで作成している。

    そしてこのニュース以降、シティは全公式戦で1度しか負けていない。リーグ戦でも1度引き分けたのみで、勝ち点42中40を稼いでみせた。

  • De Bruyne Tomiyasu Arsenal Manchester CityGetty Images

    実力でアーセナルを打ち破る

    相手が誰であろうとボールを渡さない主義のペップだが、2月のエミレーツ・スタジアムでの首位攻防戦はポゼッションを譲っていた。だが、アーセナルよりも賢く、よりシニカルだったのは間違いない。

    冨安健洋のパスミスを見逃さないケヴィン・デ・ブライネがスーパーゴールを突き刺し、追いつかれた後も再び電光石火のカウンターでジャック・グリーリッシュが勝ち越し弾。最後はハーランドがダメ押しの3点目を奪い、3-1で勝利を飾った。そして勝ち点3以上に、ライバルの士気に大ダメージを与えたことが重要だった。

  • Grealish Manchester City LiverpoolGetty Images

    ハーランド抜きでリヴァプールに快勝

    4月上旬、シティは練習でケガをしたハーランドを欠いてリヴァプールを迎えることに。アーセナルを追いかけている状況で、シーズンの重要な局面を迎えた。さらにモハメド・サラーの先制点を許している。

    だが、全く慌てることはなかった。フリアン・アルバレスが同点弾を奪うと、後半には3ゴールを追加。4-1で近年タイトルを争ってきたライバルを粉砕している。

  • Bukayo Saka Arsenal 2022-23Getty

    アーセナルの崩壊、重ねる連勝

    4月上旬の段階でまだ主導権はアーセナルにあり、シティは彼らの失速を待つ必要があった。3つの大会で戦い、チャンピオンズリーグでのバイエルン戦を覚悟しながらも、リーグ戦ではサウサンプトンとレスター相手に楽勝を収めてその時を待った。

    すると、アーセナルはアンフィールドでリードを守りきれずに引き分けると、ウェストハム、サウサンプトン相手に連続ドロー。わずか3試合で一気にリードを手放した。その間もシティは勝ち続け、直接対決を前にタイトルを自分たちのものとしてしまった。

  • Kevin De Bruyne Manchester City 2022-23Getty

    エティハドでアーセナルを圧倒

    迎えた「優勝決定戦」。シティは、勝たねばならないアーセナルを4-1で粉砕。前半だけで4点差がついてもおかしくなかった。この試合終了後も、まだアーセナルが2ポイント差をつけて首位には立っていた。だが、シティは2試合を多く残しており、もはやタイトルが自分たちのものであると全員が理解している。

  • 20230514 Ilkay Gundogan(C)Getty Images

    グディソン・パークでのフィナーレ

    5月14日、エヴァートンとの一戦。最初の30分間はやや落ち着かなかったが、ギュンドアン圧巻の2ゴールとハーランドの一撃で3-0と快勝。11連勝を達成し、あと2勝まで迫った。

    だがこの試合の後、アーセナルはブライトンにホームでまさかの0-3と完敗。シティは残り1勝に迫るとともに、スリリングなタイトルレースの終了が決定した。ライバルが失速する中で、逆にギアを入れ替えたシティは、歴史的な三連覇に相応しいチームだ。

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