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UEFA Champions league Final 2022-23 Manchester city Inter GFXGOAL

「数年前から世界最高」のマンチェスター・シティを破るには?インテルが“奇跡”を起こすために必要なこと【徹底分析】

いよいよ間近に迫った2022-23シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝戦。トルコのアタテュルク・オリンピヤト・スタドゥで、マンチェスター・シティとインテルが激突する。

昨季王者レアル・マドリーを準決勝で下して決勝へ進出し、プレミアリーグとFAカップの二冠をすでに達成しているマンチェスター・Cだが、選手たちやジョゼップ・グアルディオラ監督も三冠達成への思いを何度も口にしてきた。直近公式戦27試合の戦績は21勝5分け1敗。1敗はリーグ優勝が決まった後の紹介試合のみであり、現在「世界最強のチーム」との評価に相応しい戦いを続けてきている。

そしてスペイン大手紙『as』副編集長であるハビ・シジェス氏も、その意見に賛同。存在そのものが「奇跡」であるとも表現している。

では、そんな「奇跡のチーム」相手にインテルはどう戦うべきなのだろうか? マンチェスター・Cのどこを狙い、何を徹底すべきなのだろうか? 同氏が紐解いていく。

文=ハビ・シジェス/スペイン紙『as』副編集長

翻訳=江間慎一郎

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  • 20230603 Pep Guardiola(C)Getty Images

    マンチェスター・シティこそ、奇跡

    1つのアイデア、1人の監督。彼の率いるチームがその価値を認めさせるためには、勝たなければならない――フットボールの世界において、これ以上に不公平なことなどないだろう。

    フットボールの試合結果にはどうしたって偶然の要素が含まれてしまうが、多くの人々にとっては、その結果だけが成功を測る物差しとなっている。その物差しにおいても、マンチェスター・シティはあと一勝を収めるだけで、一部の人々が頑なに否定してきた現代フットボールの盟主としての立場を証明できる。だがしかし、ペップ・グアルディオラと彼の率いるシティが有している価値は、本来はタイトル獲得に左右されてはいけないはずだ。

    グアルディオラのマンチェスター・シティは何も今季からではなく、ずっと前から世界最高のチームなのである。

    彼らは私たちの五感にとってご馳走であり、その優位性を見栄のようにひけらかすというより、ただシンプルに素晴らしいフットボールを提案してくれている。彼らのパフォーマンスは、どのような非難も届かない高みにまで到達しているのだ。

    イスタンブールを舞台とした今季チャンピオンズリーグ決勝は、あまりにも不均衡な対戦カードである。その理由はインテルが悪いチームだからではなく、シティがあまりにも近寄り難いチームになってしまったから。シティの攻撃はアーリング・ハーランドのペナルティーエリア内外の貢献によって、少しだけ存在した機能不全が解消された。守備では相手のトランジションからの攻めに対してそこまで手薄にならず、より良い対応を取れるようになった。グアルディオラはレアル・マドリー戦の1stレグのように己の信条に背くこともあったが、常に正面切って攻撃を仕掛けるのではなく、身を守った方がいいときもある。

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  • Erling Haaland Manchester City Manchester United FA Cup final 2022-23Getty

    シティの攻撃論

    今季のシティは、攻撃の方法論を強化している。グアルディオラはポジショナル、トランジションのどちらの攻撃も、細部の細部まで入念につくり込んだ。システムは1-3-2-4-1で、中央でもサイドでも複数の攻めのバリエーションを持つ。ピッチ中央にはジョン・ストーンズとロドリが位置して、イングランド人がより自由に動き回り、片やスペイン人は指揮棒を持ってチームを操る。元アトレティコ・デ・マドリーMFのプレーを見ていると、グアルディオラの手にかかった選手は確実に進化を遂げるのだと改めて実感できる。ロドリのフットボール的才能はもちろん生来のものだが、ペップの指導を受けたことによって戦術的センスは眩いばかりに磨かれた。

    ストーンズ&ロドリの前でプレーするケヴィン・デ・ブライネ&イルカイ・ギュンドアンは、攻撃の創造性を担う2人だ。相手MFの背後を取ったり、2列目から飛び出したり、サイドバック&センターバックの間を突破したり……彼らはそうした動きと並外れたテクニックによって、対戦相手のどのような規律も混沌へと導く。またベルナルド・シウバとジャック・グリーリッシュはワイドに開いてドリブルを仕掛け、それだけでなく中央のレーンにも入ってきてその天才性を遺憾なく発揮する。

    そして最前線に君臨するのが、ハーランドである。シティがこれまでどのチームよりも生み出してきたチャンスを、誰よりもゴールに昇華できるフィニッシャーだ。彼は点を取るだけでなく、相手DF陣を引きつけながら味方の飛び出しを促すことができる……2人でも止められるかどうかという超ド級のストライカーが囮になるなど、相手にとってたまったものではない。加えて相手のプレスがあまりにもきついときには空中戦で強さを発揮し、チームがボールを奪った直後にはその大きなストライドを生かしたダッシュでDF陣のマークを外し、スルーパスのターゲットになれる。

  • Kyle Walker John Stones Man City FA Cup finalGetty Images

    シティ守備の有効性

    シティの攻撃の有効性は、守備の有効性に直結する。攻撃のフェーズを最後まで移行できれば、強靭なプレスで相手を追い回すことが可能になるのだ。マドリーとの2ndレグ、彼らの守備の機能性はマスターピースの域にあった。1-3-2-4のシステムは、ボールを奪われた直後に信頼できる盾にもなる。センターバック3枚と、一手先を読んだプレスでボールを奪えるストーンズ&ロドリの2ボランチの守備は頑丈そのもので、後方に下がる必要がなくなる(下がりながらの守備はどうしても精度が悪くなる)。

    また、たとえプレスが破られたとしても、抜かれた選手の代わりに誰かが守りに入りバランスを取る意識が徹底されている……まあペップの攻撃的な嗜好は、ときに2対2の状況になることも想定の範囲内にしているが。いずれにしてもシティは各ラインをしっかりと狭めて、これまで以上に強固な守備ブロックを形成している。

  • ROMELU LUKAKU LAUTARO MARTINEZ INTER MAILAND 2022 2023Getty Images

    インテルは何をすべき?

    では、そんなシティを破るために、インテルは何をすればいいのだろうか?……シティの弱点を見つけるのは本当に難しい。彼らを破れるどうかは、然るべき瞬間のプレーの当たり外れ(インテルもシティも)など、偶発的な要素にほぼすべてが依存している。とにかくインテルがしなくてはならないのは、シティのボールポゼッションを可能な限り妨害して、ボールを奪ったらサイドのスペースを突き、ラウタロ・マルティネス&エディン・ジェコ(もしくはロメル・ルカク)とシティCB2枚が2対2で向き合う状況をつくり出すこととなる。

    インテルはデンゼル・ドゥンフリースとフェデリコ・ディマルコがサイドから攻めることで、シティの規律を狂わせる、プレスの判断を間違えさせることができるかもしれない。彼らに加えて、ニコロ・バレッラはシティのMF&DFのライン間で主役の座を狙わなくてはいけないし、ハカン・チャルハノールは得意のミドルシュートを積極的に打っていくべきだろう。インテルはそのほかセットプレーも武器にしており、そこからも好機を探ることができる。彼らがシティと競い合うためには、徹頭徹尾、完璧な試合を演じなくてはいけない。

    昨季、ペップ・シティはレアル・マドリーの「まったく説明がつかない」逆転劇によって、チャンピオンズ優勝のチャンスを逸した。今回はインテルが、マドリーのような奇跡を探し当てなければならない……。だが本当の奇跡は、マドリーが昨季に見せたような逆転劇ではなく、ジョゼップ・グアルディオラが指揮を執るマンチェスター・シティのことを言うのだ。彼らのようなプレーを見せるチームは、この世界に二つとないのだから。

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