――マンチェスター・シティは2022-23シーズン、ジョゼップ・グアルディオラ監督の下でついに3冠を達成しました。振り返ってみてください。
まさに「蓄積」と呼ぶべき7年間を経て、今季はその集大成だったと思います。ペップが就任した最初から今のようなサッカーができていたわけではありません。例えば、最初にペップがシティで優勝した2017-18シーズン。替えが利かなかったケヴィン・デ・ブライネを使い続けました。そのため彼は翌シーズン、ケガに苦しむことになる。つまり初期段階はこのパーツ(デ・ブライネ)は外せないというのがありました。ところが、ペップが指導していくうちに(イルカイ)ギュンドアン、ベルナルド・シウヴァ、(リヤド)マフレズ、(フィル)フォーデンらが進化し、5年前まではデ・ブライネに頼らざるを得なかった要素を、彼でない選手たちが遂行できるようになりました。
また、(2021年に)セルヒオ・アグエロがいなくなった時は、センターフォワードいないなりに全員で点が取れるチームを作りました。でも、やはり(CFは)いたほうが…というところに(アーリング)ハーランドを連れてきた。なんでもできる選手が6~7人いる中で点取り屋がいれば、それは強い。本当に隙がないなと思います。
――そのシティの魅力はどこにあるでしょうか?
止めると蹴るのレベルが今の欧州で最も高いところで揃っていることじゃないですか。基本技術のブレのない選手が揃っていて、センターバックも含めてレベルが高い。ボールスピードやボールを蹴る音、軌道など、普段我々がJリーグで見ているものとは全く異なるものが見られるんじゃないかなと思います。彼らはトリッキーなプレーするわけではありません。ただ止めてから次を選択するのが早いですし、選択するものの質も高いです。そこに通すの?というパスが平然と出てくる。それがマンチェスター・シティなんじゃないですかね。
――その中でも、下田さんが注目してほしいシティの選手を教えてください。
一番はベルナルド・シウヴァ。彼の凄さは凄く説明しづらいですが、うまいという大前提があった上でチームのために身を粉にして働ける選手です。例えば(ルカ)モドリッチみたいに分かりやすいスルーパスを出すわけではありませんが、どんなに敵が近くにいてもボールを受けて起点を作りますし、ほとんどボールを失わない。
加えて守備への切り替えが高いレベルで堅実。現代サッカーではその仕事がちゃんとできないと生きていけませんが、彼が守備に切り替わった時は凄みさえ感じることが多々あります。多くの人がハーランド、デ・ブライネ、ルベン・ディアスに注目すると思いますが、ベルナルド・シウヴァの職人ぶりは必見です。彼を見ているといつも何らかの「発見」があります。