Maghnes AklioucheGetty

マグネス・アクリウシェ:リヴァプールやレアル・マドリーも関心?大注目のモナコ産最新“アーティスト”【Hidden Gems FC パート3】

『GOAL』がお送りする新コーナー、「Hidden Gems FC」。かつてレスターで一時代を席巻したエンゴロ・カンテやリヤド・アマフレズのように、キャリア初期はあまり注目が集まっていなかったものの、今や世界最高レベルでの活躍が期待できるポテンシャルを秘めた各国リーグの選手にスポットライトを当てる。そして「Hidden Gems FC」第3弾は、モナコで活躍するMFマグネス・アクリウシェだ。

フランシス・ベーコン、フェルナンド・ボテロ、そしてケース・フェルカーデ……モナコという国は、これまで数々の世界的なアーティストを輩出してきた。そしてこの“リビエラの真珠”で芸術作品を生み出してきたのは、彫刻家や画家だけではない。スタッド・ルイ・ドゥでプレーするフットボーラーも同じく、数々の一流の芸術作品を残してきた。

そして現在のASモナコ最大の「アーティスト」が、マグネス・アクリウシェだ。昨季は公式戦43試合7ゴール13アシストと大ブレイク、今や世界中のビッグクラブからの注目を集める23歳だが、これまでの道のりは決して平坦ではなかった。今回は、モナコから新たに世界へと飛躍するであろう逸材を紹介する。

  • Maghnes Akliouche Monaco Champions League 2024AFP

    すべての始まり

    2002年2月25日、トランブレ=アン=フランスでアルジェリア系の家庭に生まれたアクリウシェ。6歳の時にヴィルモムブル・スポーツに加入すると、その後移籍したUSトルシーでストライカーとしての才能が注目を集める。すると、モナコのスカウトが熱心に勧誘し、翌年に加わっている。

    加入後はU-19チームで1年間を過ごしたが、コーチ陣は彼の才能と成長スピードを高く評価。3部リーグに所属するセカンドチームに昇格させた。その期待に応えるようにパフォーマンスを発揮すると、2021年10月のリヨン戦で途中出場。加入から4年間でトップチームデビューを果たしている。

  • 広告
  • ブレイクのきっかけ

    しかし、デビューシーズンはリーグ・アン7試合(計48分)の出場に留まり、翌シーズンも11試合に出場したが、いずれもゴールもアシストもなし。デビューからすぐさまスターになることはできず、苦しい時期も続いた。本人は当時を「僕は体の細い少年だったし、よくふっ飛ばされていたよ。簡単ではなかったね。それでも、時には考え過ぎずに、ただ無心で一生懸命に働くことが大切なんだ。そうすれば、最終的には報われるよ」と振り返っている。

    そして一心不乱に自らのプレーに集中し続けた結果は、2023-24シーズンに結果で現れる。右ウイングのポジションを確保し、リーグ・アン28試合で7ゴール4アシストをマーク。チャンピオンズリーグ出場権獲得に大きく貢献した。さらに2024-25シーズンは才能を開花させ、公式戦43試合で7ゴール12アシスト。スター選手に最も求められる継続性を見せ、モナコで絶対的な地位を確立している。

  • 選手としての長所

    そんなアクリウシェの主戦場は右ウイングと攻撃的MF。足元の技術は抜きん出ており、効果的なドリブルと優れたゲームセンス、精度の高いパスを駆使してチームメイトへチャンスを供給するプレイメーカーだ。さらに他のアタッカーと一線を画すのは、彼のハードワーク。いわゆるプレイメーカータイプとしては珍しいほどに、守備強度も高いのが特徴である。

    アクリウシェ本人は『テレフット』のインタビューで、「ジダンやイニエスタ、エジルの映像はたくさん見てきたよ。相手をパスで出し抜くのは最高の気分になるし、それが好きなんだ。チームメイトをアシストするのもね」と自身のアイドルや参考にする選手を挙げている。

    一方で、アタッカーとして1シーズンで7ゴールはやや物足りないことも事実。本人も認める通り、ややチームメイトへのアシストやチャンスメイクにこだわりすぎる傾向があり、自ら強引に仕掛けてゴールを狙うたくましさも必要だ。そうすれば予測できないより完成された選手に近づいていくだろう。

  • Maghnes Akliouche Monaco 03302024(C)Getty Images

    世界的な選手へ

    まだ改善すべき点はあれど、アクリウシェの注目度は確実に高まっている。CEOのチアゴ・スクーロも『テレフット』で「他のクラブが彼に興味を示すのは当然」と認めた。しかしその一方で、「だが彼は今もモナコの選手だ。ここから引き抜くのは簡単じゃないよ」とし、関心を抱くチームへ宣告している。『レキップ』曰く、モナコとの契約は2028年まで残っており、契約解除金もなし。クラブ側は7000万~8000万ユーロ(約136億円)を要求するようだ。

    では、現在アクリウシェに関心をいだいているのはどんなクラブなのか? すでにリヴァプール、マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、トッテナム、パリ・サンジェルマンからの興味は伝えられている。さらに『レキップ』によると、シャビ・アロンソがレヴァークーゼン時代から高く評価しており、レアル・マドリーに連れてきたいと考えているという。しかしスクーロの宣言もあり、交渉は困難を極めることになるだろう。だが、それでも獲得する価値のある選手であることも確かである。

    おそらく、アクリウシェが世界的なビッグプレイヤーになるのは時間の問題だ。そのためには、彼のようなタイプは「スタッツがすべてじゃない」ことを証明することが必要になる。今夏にどのような決断を下すかは定かではないが、どんな場所に行ったとしても、彼の持つ技術と独創性を効率性と結びつけることができれば、輝かしい未来が待っているはずだ。