Kuryu-Matsuki(C)Getty Images

凱旋試合で神業ボレー!帰ってきた松木玖生、”必然”のスーペルゴラッソ…U23アジア杯復帰から即躍動「次は勝たせるゴールを」/コラム

FC東京と柏による少々奇妙なジェットコースターゲームは、3-3のドローという結末に終わった。

キャプテンマークを巻いたMF松木玖生は中盤の中央で先発出場。AFC U23アジアカップ決勝から1週間空いての試合であり、本人がそれを口にするようなことはなかったものの、フィジカルコンディションはベストではなかっただろう。ただ、「相当気合いは入っていました」と言うように、メンタルについては明らかに充実していた。(取材・文=川端暁彦)

  • Kuryu-Matsuki(C)Hiroto Taniyama

    味スタ揺らした「最大のハイライト」

    最大のハイライトは37分に生まれたジャンピングボレーによるミドルレンジからのスーパーゴール。CKを敵味方が競ったこぼれ球がペナルティーエリアの外へ流れてきたところを待ってましたとばかりに左足で合わせ、鋭い弾道でゴールネットを揺らしてみせた。

    スタジアムへ観戦に訪れていた青森山田高校時代の恩師である正木昌宣監督(松木の在校時はコーチ)も「ポジション取り、反応、シュートスキル、すべてが完璧でしたね」と絶賛する一撃だった。

    「決まってよかったです。(ジャンピングボレーは)自然に出ました」

    本人がそう言って振り返ったシーンは、単に偶然こぼれてきた結果ではないのだとも言う。

    「(コーチの)時崎悠さんがセットプレーの攻撃を担当しているんですけど、今日は自分も(ペナルティーエリアの)中に入りたかったんですけど、『絶対あそこにこぼれてくるから』と言われいて、実際にあそこへこぼれてきて、自分も流し込むことができて良かったです」(松木)

    競り合いの強さ、ヘディングシュートの技術にも自信を持つ松木からすると、CKに対して中で競り合う要員になりたいと思うのは自然なこと。だが時崎コーチは「こぼれ球を蹴り込む要員」に指名。そして松木も、跳ね返りを予測しながらのポジショニングと反応の良さ、何より左足キックの技術によって、その期待に応えてみせた。

    また「前日から結構(キックが)当たっていた」という手応えもあったようで、トレーニングで培った感覚をゲームへと繋げられた結果でもあったようだ。

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  • Kuryu-Matsuki(C)Hiroto Taniyama

    前半の圧倒、後半の苦闘

    もっとも、松木のゴールは「前半のハイライト」にはなったものの、そこから先の道は期待に反して真っ暗闇だった。

    前半の主役は間違いなく青赤軍団。松木も「チームとして相手よりも走っていましたし、細かいボールを繋いでからサイドに入ったときもゴール前に人数をかけられていました」と、その試合内容に手応えを口にする。

    開始直後に相手のファーストプレスを受けて自陣深い位置でボールロスト。そこから失点してしまう最悪のスタートながら、直後に追い付き、その後も攻勢を継続。「PKを得た場面もカシーフから安齋の両サイドで崩したようなシーンだった」と松木が言うように、柏の守備陣を翻弄していたような時間帯も確かにあった。

    32分にそのPKをディエゴ・オリヴェイラが決めて逆転、37分には松木のスーパーゴールも突き刺さり、大差でFC東京の勝ちになってもおかしくないような流れになっていた。

    ただ、抜け目なく虎視眈々とFC東京の隙を狙っていた柏FW細谷真大のプレスに対し、DF森重真人が低い位置でボールを失い、窮地を防ごうと飛び出したGK波多野豪にはレッドカードが提示されることに。前半終了間際のこの退場劇が試合の様相を一変させた。

    後半、10人でコンパクトなブロックを形成して守ることを確認したFC東京だったが、その「ブロックの位置が低かった」(松木)ことが災いする形で後半開始早々に柏DF犬飼智也のロングシュートを被弾し、58分にはMF島村拓弥に同点ゴールも許し、心理的にも難しい戦いを強いられることとなった。

  • KUryu-Matsuki(C)Hiroto Taniyama

    勝点1を前向きに解釈

    結果は3-3のドロー。前半の内容を思えば、勝点2を失った試合という感覚だろうし、松木も「悔いの残る試合」と話すように、FC東京にとっては何とも納得できないゲームになったのは間違いない。

    ただ、「今日の難しい試合を勝ち点1取れたのはチームとしてもでかい」とも言う。難しい防戦を強いられ、相手の勢いに押され続ける流れの中でも各人が体を張って守り、粘り強く戦い切ったことを前向きに解釈する。実際、逆転されてもおかしくない流れではあったわけで、前半だけでなく試合全体の内容をを思えば、勝点2を失ったというより勝点1を拾ったゲームと位置付けるべきなのだろう。

    松木は「個人的にもすごく自信になりました」と自身のゴールへの手応えを話した上で、「チームを勝たせることできなかったので、次は勝たせるゴール取りたい」と連続ゴールへの意欲も宣言。勝点1を拾ったゲームを経ての再爆発を誓った。