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久保建英、PSG相手に凄み見せるもレアル・ソシエダの“乾き”は潤せず

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    PSG相手にもあふれ出る”水”

    パリの夜は目まいがするほどだった。チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦ファーストレグ、PSGと久保建英擁するレアル・ソシエダの試合は、二つのフィロソフィーの対決だった。

    ラ・レアルは自チームの60%以上が下部組織出身で、久保ら外から来た選手もまるで自分の家と感じられるようなクラブアイデンティティーに包まれている。その一方でPSGはメッシやネイマールもいた頃より落ち着いたとはいえ、世界最高の選手エンバペもプレーしているスター軍団だ。

    PSGの本拠地パルク・デ・プランスで繰り広げられたプレーは、目まいがするほどだった。PSGはとにかく速かったが、ソシエダも勇敢にプレーしてみせた。とりわけ久保は、その天才的なドリブル技術でPSGが冬にサンパウロから獲得したベラルドをきりきり舞いさせている。

    鋭い切り返しから放ったサイドネットを揺らすシュート、あの凄まじく振りの速い左足から送られる高精度クロス……。ラ・リーガの全ライバルが行う徹底マークから逃れて、右サイドで1対1の状況を享受した久保は、PSGのどのスター選手にも負けない眩しさだった。だが、久保という源泉からいくら水があふれ出しても、ラ・レアルは4試合ノーゴールという乾きの時期を潤せなかった。

    ラ・レアルのサポーターはこの試合の前半、何度も「ウイィィ(Uyyyy)!」と叫んでいた。スペインやバスクで、惜しい場面で使われるその言葉を、私たちは何週間もずっと繰り返している。「ウイィィ!」から、先に行くことができないでいる。どれだけ「ゴォォォル(Goool)!」と叫びたくても、今のソシエダはそこに届かない。偽9番のオヤルサバルも負傷でおらず、1トップの人材不足が浮き彫りになっている(点を決める選手も久保とバレネチェアの両ウイングを生かせる選手も)。

    迎えた後半、約1時間にわたって好パフォーマンスを見せていたソシエダは、一つの過ちのツケを払った。PSGがCKを蹴る直前、アマリ・トラオレが痛めてピッチ外へ。その間にペナルティーエリア中央にクロスが送られると、マルキーニョスに当たったボールがファーに流れて、そこでフリーとなっていたエンバペがGKレミーロを破っている。

    このCKの場面で、本来トラオレがマークにつかなければいけなかったPSG最大のスターを見ていたのは、ソシエダで最も違いを生み出していた男、久保だった。彼は速攻を仕掛けることを意識してか、セカンドボールがファーに流れてくる前にエンバペのマークを外してしまっていたのだ。「ゴォォォル!」と、パルク・デ・プランスのスピーカーと観客が叫んだ。その後には速攻からバルコラもネットを揺らして、「ウイィィ!」の先にある叫びは繰り返された。

    良質なパフォーマンスは、久保の凄みは勝利をゴールの確率を高める。だがフットボールは決して勝利を約束してくれないのだ。ソシエダは0-2でPSGに敗れた。まったく、目まいがする結末である。

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    久保のミスだったのか…?

    勝負を分けたのはあのPSGの先制点だったが、あれは久保のミスだったのかどうか。エンバペをマークする役割はトラオレだったはずで、速攻の急先鋒を担う日本人は責められるべきではないように思う。久保は攻撃で違いを生み出す選手なのだから。しかも、彼が守備者として“違いを生み出させてはいけなかった”相手はエンバペである。“エンバペ対久保”という構図は試合前のポスターや番宣では魅力的だが、実際のマッチアップはあり得なかったはずだ。

    だがしかし、この日本人はこうしたことでも、私たちバスク人の心をつかむのだ。試合後、彼はこの試合をスペインで放送した『モビスタール・プルス』とのインタビューで、沈痛な面持ちで、反省の弁を述べたのだった。

    「実際、僕のせいでした。セカンドボールになったとき、僕はそこから去ろうとしてしまい……。イゴール(・スベルディア)が競り合いで勝ったのが見えましたが、直後に誰かの背中にボールが当たると、その瞬間エンバペにもう2メートル離されていました」

    「(深く息を吐き)個人的に、そのゴールは僕の責任が大きかったと思っています。それまでは良い試合を演じていましたし……。もうどうしようもないので、セカンドレグでもっと運があることを願っています」

    「僕たちはその場面で1人少なくて、自分がエンバペをマークする必要があったのですが……。マークし続けなければいけなかったのに、セカンドボールを追いかけようとして、出て行ってしまいました。僕のメンタル的なミスですし、修正したいと思っています。このような試合では、そういう小さなミスが人生を変えてしまうんですから」

    スペインには謝らない、自分の非を認めない人間が多い。選手もインタビューで、チームのミスには極力触れないようにする。しかし、久保は違った。たとえトラオレがいなかったとしても、エンバペを相手にしていても、自分自身の行動を省みた。すべてを飲み込んで前に進むことを、もっと成長することを、公の場で誓ったのだ。

    このインタビューの終わり、質問をしていたスタジオの進行役の女性が最後に「あなたはいつも誠実です。グラシアス。抱擁を」と言うと、久保は「グラシアス。こちらも抱擁を。アディオス」と返答した。進行役は画面越しの久保が去ると、笑みを浮かべながら「本当に抱きしめたいと思わせてくれる人ですね」「彼は家で、父親や母親と話をしているようでした。素晴らしい」との感想を口に。またコメンテーターたちも「純粋な人だ」「とても誠実だね」と口々に語っていた。

    久保の真摯な姿勢は、人の心を打つ。ラ・レアルのサポーターが彼に向ける愛情や信頼感は、ただただ増すばかりである。久保との2029年までの契約延長は、じつに素晴らしいニュースだった。

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    勝負はアノエタへ

    CLベスト16の決着は、まだついていない。3月5日に行われるセカンドレグで、私たちの本拠地アノエタは燃え上がるような応援でラ・レアルの背中を押すだろう。とことん誠実な日本人はもちろん、私たちが大きな期待を寄せる選手の一人である。

    もう「ウイィィ!」と叫ぶのは飽きた。私たちはアノエタで、目まいがするほど「ゴォォォル!」と叫びたいのだ。アジアカップから帰ってきて、ソシエダにさらなる忠誠を誓ってくれた久保が、さらなる活躍を果たすことを願っている。