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マン・Uの希望、18歳コビー・メイヌー。名門復権へのキーマンとなる驚異の才能

マンチェスター・ユナイテッドは、エリック・テン・ハーグ監督が就任して最初の夏の大半の時間を、バルセロナからフレンキー・デ・ヨングを獲得するために費やした。新監督はアヤックスでこのミッドフィルダーを育て上げ、ユナイテッドが採用したいプレースタイルを実現する鍵になると考えたのだ。

冷静にプレッシャーをかわしながら攻撃に転じるデ・ヨングの能力は、テン・ハーグにとって非常に魅力的で、ユナイテッドはバルサに8500万ユーロを支払う用意があった。デ・ヨングがカタルーニャからマンチェスターに移籍することに興味がないことを知っても、ユナイテッドは1カ月以上も彼を説得し続けた。そして8月下旬にようやくタオルを投げ入れ、カゼミーロを獲得。カゼミーロは素晴らしい実績を有する選手だが、デ・ヨングとはまったく異なるタイプの選手だった。

カゼミーロは今シーズンに調子を落とすまで、ユナイテッドの競争心を高め、中盤にパワーと筋肉を与えた。だが、プレースタイルは以前とほとんど変わらなかった。流動的なプレーを望むチームへの移行をリードできるデ・ヨングのような存在はまだ欠けていたが、昨夏はオランダ人のような機動力のある守備的ミッドフィルダーを買い求めることはしなかった。

一方、コビー・メイヌーというティーンエイジャーは、すでにトップチームでのサッカーを経験し、さらに上を目指す準備ができていた。夏にインパクトを残した後、足首の負傷でトップチームでのプレーが4カ月遅れたものの、ようやく前節のエヴァートン戦でプレミアリーグデビューを果たした。

わずか72分の出場だったが、ユナイテッドはデ・ヨング獲得に乗り出した時に探していた選手を見つけたかのように見えた。メイヌーは若く、経験も浅い。だが、赤い悪魔のプレースタイルを変え、守備能力も兼ね備えるこの男はシーズンを救うポテンシャルがあると多くの識者がその才能を絶賛した。

  • Kobbie Mainoo Man Utd 2023-24Getty

    過酷な環境でレベルを示す

    エヴァートン戦前、メイヌーがユナイテッドで最後に先発したのは、カラバオカップのチャールトン・アスレチック戦で、10カ月以上ぶりのことだった。

    エヴァートンファンは勝ち点10剥奪への不公平を叫び、チームは腹をくくってプレーしていた。気の弱い人には向かない試合だったが、18歳は冷静さを絵に描いたようなプレーを披露した。

    「彼はここグディソン・パークで、この1年で最も獰猛な雰囲気の中、敵地に乗り込んだ」

    ユナイテッドの元キャプテンであるギャリー・ネビルは『スカイ・スポーツ』で、「彼が一流であることは知っている。私はいつも、試合の中で最も難しい局面で選手を判断する。マンチェスター・ユナイテッドが前半のハーフタイム直前の20分間、最も難しい時間帯を過ごしたとき、彼は唯一姿を現し、唯一自分らしさを保っていた選手だと私は思った」と称えた。

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  • Kobbie Mainoo Manchester United 2023-24Getty

    マン・Cの選手かのよう

    メイヌーはデビュー戦からユナイテッドに溶け込み、シニアのチームメイトと何年もプレーしているように見えただろう。だが実際、この18歳は他のユナイテッドの多くの選手よりも高い技術がある。今シーズンのユナイテッドでほとんど見られなかった自信とインテリジェンスを感じさせるプレーを見せた。

    「こんなことを言うのは心苦しいのだが...彼はマンチェスター・シティの選手のように見えた。私が彼に払える最大の賛辞だ。正直なところ、私が彼を見て思ったのは、ペップ・グアルディオラが『うちの中盤に欲しい選手だ』と感じただろうということだ」

    「彼はとても落ち着いていて、とても優雅だ。チームメイトのポジションを把握している。18歳であれだけのプレーができるのだから素晴らしい。今後はもっとタフな試合になるだろうし、長い挑戦が待っているし、ケガや浮き沈みもあるだろうし、他の選手も入ってくるだろう。だが、とても良かったよ」

  • Kobbie Mainoo Manchester United 2023Getty Images

    新たなプレースタイルを生み出す鍵

    メイヌーは後方からユナイテッドのビルドアップをリードし、ディフェンダーから頻繁にボールを引き出し、ボールを奪う前に周囲をよく観察していた。

    エヴァートン戦では、ユナイテッドの全選手の中で最も高いパス成功率(82%)を記録し、38本のパスを成功させた。もし、彼がグディソンでのパフォーマンスを再現することができれば、ユナイテッドは今シーズンの大半で見られた、リーグで最も弱い相手に勝利するために足を引っ張られ、ブライトン、マンチェスター・シティ、トッテナムといった強豪に圧倒されたチームとは全く違うチームに変貌するかもしれない。

    テン・ハーグも、ユナイテッド在任中にとってきた消極的なアプローチとは違う、まったく新しいプレースタイルへの扉を開く可能性があることを認めている。

    「より現実的に調整しなければならないこともある。でも、もしピッチに選手がいて、使える選手でポジションを埋めることができれば、とてもいいサッカーができると思っている」

  • Andre Onana Man Utd 2023-24Getty

    オナナに必要なパートナー

    テン・ハーグがユナイテッドに雇われたのは、アヤックスでの成功が評価されたからだ。アヤックスはヨーロッパで最もエキサイティングなチームのひとつに変貌を遂げ、2019年のチャンピオンズリーグ決勝ではサンティアゴ・ベルナベウでレアル・マドリーを圧倒し、ユヴェントスも退けてせみた。

    テン・ハーグは就任後最初の2試合でブライトンとブレントフォードにボロボロにされた後、ユナイテッドがどのようにプレーするかについての初期の考えを捨てざるを得なかったからだ。

    しかし、夏にダビド・デ・ヘアを退団させ、アンドレ・オナナと契約したテン・ハーグの冷酷な決断は、ユナイテッドをボールを持ってより魅力的なチームにしたいという彼の願望を強調するものだった。

    オナナの加入によって、これまでとは違ったスタイルが生まれるはずだったが、その代わりにユナイテッドは以前とは正反対の問題に直面することになった。マルティネスはシーズンの大半を負傷で棒に振り、ハリー・マグワイアは目覚ましい復活を遂げたとはいえ、プレス回避能力は凡庸。ヴィクトル・リンデロフやジョニー・エヴァンスも、複雑なパス回しやプレッシャーに翻弄されるよりは、前線にボールを放り込むほうがはるかに楽なようだ。

    しかし、メイヌーによって、ユナイテッドはついに自陣でボールを奪い、さらにフィールドでボールを再利用しようとする選手を手に入れた。彼はオナナと波長が合い、ユナイテッドが必要なときに試合をスローダウンさせることができる存在だ。最終ラインにベストメンバーが揃えば、テン・ハーグの理想に近づけるだろう。

  • Kobbie MainooGetty

    供給と危険の排除

    しかし、彼は華麗なショートパスを出すことだけを狙っているわけではない。エヴァートン戦では、アントニー・マルシャルやマーカス・ラッシュフォードをスペースに走らせるボールも供給していた。

    彼のプレービジョンとパス能力は、プレミアリーグでの初ゴールを待ち望んでいるラスムス・ホイルンドの能力を最大限に引き出すこともできるだろう。このデンマーク人ストライカーは巧みに背後を狙うが、必要なパスを受けられず、フラストレーションを溜め込んでいる。

    メイヌーはまた、ユナイテッドが守備的MFに求めるもうひとつの条件、「意識」と「意欲」も満たしている。前半には、ドミニク・カルヴァート=ルーウィンがオナナにセーブされた後のリバウンドをドワイト・マクニールが押し込みにかかった際、いち早く駆け戻ってボールを掻き出す見事なゴールラインクリアランスを見せた。

  • Kobbie Mainoo Man Utd 2022-23Getty

    ユナイテッドの救世主に?

    どんな若手の緊急事態にも言えることだが、メイヌーを称賛する声の中には、たとえそれが素晴らしいパフォーマンスだったとしても、彼がまだ18歳で「リーグ戦で1度スタメン出場しただけということを忘れるな」という声もある。

    「印象的だったし、それで浮かれても仕方がない。現実問題として、彼はまだ17、18歳だし、やるべきことはたくさんある」とネビルも警告する。

    「それがなければ、そもそもマンチェスター・ユナイテッドでプレーすることはできないし、エリック・テン・ハーグに選ばれることもない」

    理想を言えば、シティがリコ・ルイスを、以前はフィル・フォーデンを登用したように、ユナイテッドもメイヌーを深みにはまり込ませるのではなく、少しずつ出場時間を増やしていくことができるだろう。それを示すかのように、指揮官はガラタサライでの先発を見送った。

    それでも、57分から出場したメイヌーはこの狂気のような雰囲気での試合で、またもや18歳らしからぬパフォーマンスを披露した。エヴァートン戦で多くの人に感じさせた可能性が間違っていないことを再び証明してみせたのだ。

    リーグ戦で復調気配を見せているユナイテッドだが、欧州の舞台では早々に脱落する可能性もある。それでも、メイヌーの台頭は長い目で見れば非常にポジティブなものであるとともに、代えがたい財産だ。この18歳の若者は、名門が完全復権を遂げる上でのキーマンになり得るだろう。