2020シーズンより新型コロナウイルスの影響で大きな混乱がもたらされているJリーグ。2020シーズンは2月21~23日の明治安田生命J1、J2リーグ開幕節のみが行われ、第2節からは延期、3月3日にNPBと連携して専門家チームを招いて「新型コロナウイルス対策連絡会議」を発足し、様々な対策を講じてきた。
2021シーズンも、新型コロナに関連した多くの事項に対処を強いられる。これまで、そして最新の会議ではどのようなことが話し合われ、決定されたのだろうか。
2月8日に行われた第25回新型コロナウイルス対策連絡会議後の会見にて、新規でない外国籍の入国者の待期期間(14日間)について、政府に緩和を要望する方針であることを伝えていたJリーグ。12日の臨時実行委員会後の会見では、より具体的な内容が明かされた。
Jリーグの村井満チェアマンは、「入場数制限、海外からの帰国者の待機期間の緩和、それから試合そのものの開催時刻、現状(午後)8時までに試合を終えるというレギュレーションになっていますが、こうした内容に関して政府に対して我々スポーツ界としての姿勢の表明をして参りました」と報告している。
すでにNPBの斉藤惇コミッショナーとともに萩生田文部科学大臣のもとを訪れ、大きく分けて3つの要望を出したことを説明した。
海外からの帰国者の待機期間については、専門家の提言に基づいて「10日間」への緩和を要請。「帰国後10日くらいにPCR検査を行うのが最も正確に捕捉できるのではないか」と伝えたとのことだ。
また、村井チェアマンは試合の開催時刻について「当然、街中での飲食店の制限が、アルコールが7時までで飲食店が8時までということであれば、スタジアムの中での営業はそれに準じます」としつつも、「競技そのものに関しては8時以降の活動自体を認めていただけないか」との要望を出したと語った。
そして、緊急事態宣言下の地域における観客数は、収容可能数の50%か5000人の少ない方が上限に定められており、2万人を超える大規模なスタジアムでも5000人が最大となるが、割合での適応を促したようだ。
「萩生田文部科学大臣にお訪ねしていく中で、現状の5000人基準という考え方を人数基準というよりはパーセンテージを運用していく方が、理にかなっているのではないか、というところを申し伝えております」
一方で「スポーツ界としてしっかりガイドラインを遵守していくこと」と「大切な情報をお客様にお伝えする時にコンタクト情報をしっかり我々も努力すること」を強調。
続けて、「さまざまな試合会場でのデータ、我々もストックしているものを政府にお届けすることで、一緒に安全なスタジアム運営とよりフレキシブルな対応をお願いして協力していくことも申し合わせた」と、政府の新型コロナ対策に貢献していく意志があるうえでの要望であることを伝えている。
第2回実行委員会後のメディアブリーフィングでは、リーグ戦開幕後の観客数制限について説明された。J1リーグの開幕が2月26日に控えているため、昨季終了時の観客収容人数50%までを上限とする方針からの変更を強いられている。
一方で、2020シーズンの有観客試合再開時には収容人数の50%か5000人の少ない方を全クラブ一律で観客数上限としていたが、それは全国に緊急事態宣言が全国を対象としていたためとのこと。今回は発出中の地域とそうでない地域に分かれるため、3つの場合に応じた対応となった。
■ホーム:緊急事態区域、アウェー:緊急事態区域・区域外とも
■ホーム:緊急事態区域外、アウェー:緊急事態区域
■ホーム:緊急事態区域外、アウェー:緊急事態区域外
Jリーグの説明によれば、該当カードのホーム、アウェーどちらかのクラブが籍を置く地域に緊急事態宣言が発出されている場合は、ビジター席の設置はなし。人数上限は、緊急事態宣言区域で開催される試合のみ「5000人かつ50%」となり、それ以外は「50%」が適用される。また、キックオフ時刻も同様に緊急事態宣言区域でのみ20時までに終了することとなった。
また、緊急事態宣言が解除された場合、その地域では段階的に入場者数を緩和。収容可能数が2万人以上のスタジアムでは「最低1試合は上限30%まで、ビジター席は任意で設置」される。一方、収容可能数が2万人に満たないスタジアムであれば「上限50%、ビジター席の設置は任意」だ。その段階を経て、最終的に「上限50%、ビジター席は原則3%以上が必須で設置」に移行する。
なお、20日に埼玉スタジアム2002で開催が予定されている最初の公式戦、『FUJI XEROX SUPER CUP 2021』の川崎フロンターレvsガンバ大阪についても、5000人までを観客収容上限とすることが発表された。
大規模イベント開催、都道府県をまたぐ移動に関する政府による自粛要求も緩和されているものの、無観客から再開した昨季と違い、2021シーズンのJリーグは観客を迎えてスタートすることになる。
メディアブリーフィングに出席した村井満チェアマンは、「サポーターの皆様に昨年色々とご協力いただいたおかげで、今回は開幕からお客様を迎えられる可能性が非常に大きい状況。今年もしっかりと準備しながら一緒にスポーツを盛り上げていければと思っております。ご協力をお願いしたいと思います」と改めて感謝と協力を呼びかけた。
Jリーグは2月8日、第25回新型コロナウイルス対策連絡会議後のウェブ会見をNPBと合同で行った。10都府県で緊急事態宣言が3月7日まで延長されており、Jリーグでは様々な事項への対応が必要とされている。
直近では20日の『FUJI XEROX SUPER CUP2021』で川崎フロンターレとガンバ大阪が埼玉スタジアム2002で対戦するが、両クラブの本拠地、開催スタジアムが緊急事態宣言下の地域のため、Jリーグの村井満チェアマンは超厳戒態勢での開催になると発言。収容人数の50%ではなく、5000人を上限とする観客制限で準備を進めていることを伝えた。
一方で明治安田生命Jリーグの開幕について、村井チェアマンは50%以下という観客制限でも開催が可能な地域があることを強調している。
「26日の時点で緊急事態宣言がどのような状態かを見極めながら、フレキシブルに対応できるように準備を進めています。超厳戒態勢と厳戒態勢、両面で対応できるように考えています。特に今回、10都府県で緊急事態宣言が延長されているわけですが、開幕戦となると全国規模になって、その中のエリアによっては緊急事態宣言がない、通常の50%ル―ルが適用できるチームもあります」
そして、今回の会見で大きなテーマとなったことのもう一つは、外国籍選手の入国制限だ。日本政府は「緊急事態解除宣言が発せられるまでの間、全ての対象国・地域とのビジネストラック及びレジデンストラックの運用を停止し、両トラックによる外国人の新規入国を認めません。また、ビジネストラックによる日本人及び在留資格保持者について、帰国・再入国時の14日間待機の緩和措置を認めない」と強い制限をかけている。
今回の対策連絡会議では、14日間という自主隔離期間についても議論されたとのこと。専門家チームの三鴨廣繁教授は「14日間ルールというものがあるが、例えば(新型コロナ以外の理由で)入院とかされた方は10日間が経てば検査もしないで無罪放免となる。その一方で濃厚接触者は2週間ちゃんとというルールがあって、これ実は我々病院関係でも甚だ矛盾を感じて、色々と考えていた」とし、以下のように説明した。
「かなり前に決めたルールがそのまま生きているので、いわゆる科学の進展、データの収集とともにある程度、政府と腹を割って話し合うことも必要だと、そういったことが議論されました。アスリート、プロ野球やJリーグだけがと言われるのではなくて、科学的にこうだからこういう風に変革していくんだという姿勢をもってやっていくのが良かろうということが話し合われたと理解しております」
アスリートのみならず社会全体の問題も絡めつつ、Jリーグとプロ野球が「科学的に(エビデンスを提示して)政府と折衝、要請をしていかなくてはならない」とも強調した三鴨教授。村井チェアマンも同様にその意義を感じているようだ。
「昨年の今頃、まったくPCR検査も目途も立たない状況の中でPCR検査もなく確実に感染拡大を防止していくために考えられていた2週間という期間と、ある程度一定の検査体制が整いつつある現状ではエビデンス等々を考えると、短縮が具体的に説明できるものもあるかと思っています。医療現場の話も出たんですが、例えば2週間、医療現場に従事する方が隔離されてしまうと医療現場が回らなくなる。いわゆる社会の生産性そのものを改善するためにも、合理的に期間短縮を図ることは一点の理があるなと思っています」
続けて、「新規入国に関してはまだまだ我々スポーツ界が単独でできるエビダンスがない状況で、ここはもう少し議論を深めていかなければいけないと思っています。2つの重要要請テーマがありますが、場合によってはステップを踏んで(隔離)期間短縮から要請に入り、同時進行で新規入国の課題も議論していくのかなと思います」と今後に政府と議論すべき事項を整理した。
2021年度第1回Jリーグ理事会後の会見では、様々な決議・報告事項が伝えられた。特に競技関係のルール組みについて多くが決定されている。
中でも、新型コロナ禍の影響で明確化が求められていた試合中止に関する対応については、エントリー人数13名を基軸として整理。代替日を模索する前提であることを強調しつつも、様々な理由により開催不可能な場合は「みなし開催」とすることとなった。
また、五輪期間中に代替日が設置される可能性について、フットボール本部の黒田本部長は「現時点でないとは言い切れません。ただ、ご存知の通りオリンピック代表の期間中でもありますので、選手が代表の方で、というクラブもあるかもしれないので、個々中止になった試合を見ながら、入れるところに入れていくということになる」と否定はしていない。
明治安田生命JリーグとJリーグYBCルヴァンカップにおいて、昨シーズン同様に交代枠は5名、交代回数はハーフタイムを除いて3回までとしている。
また、国際サッカー評議会(IFAB)より通達のあった「脳振盪による交代の追加における試行」については、育成年代も含むJリーグの公式試合すべて及びプレシーズンマッチにおいて導入が決定。交代のルールは以下の通りとなった。
【脳振盪による交代の原則】
※育成年代など通常交代可能人数とベンチの人数が同じ大会での運用を想定
【交代の回数】
2021シーズンもコロナ禍において選手への負担が大きいこと、感染予防のためボトルの共有を不可としていて試合中に給水しずらい環境が続くため、原則として飲水タイムが設けられる。ただし、両チームが合意した場合は飲水タイムを設けないことも可能となった。
※WBGT値:気温、湿度、日射・輻射などの周辺熱環境を総合して計測する暑さ指数。JFA「熱中症対策ガイドライン」にて飲水タイムを行う際の基準が定められている。
通常年には用いられていたルヴァン杯でのU-21先発出場ルール。2021シーズンであれば「2021年12月31日において満年齢21歳以下の日本国籍選手を1名以上先発に含める」というルールとなるが、公式試合のエントリー下限人数が13名と定められているため、昨年から引き続き適用されない。
明治安田生命Jリーグ、JリーグYBCルヴァンカップでは、トップチーム登録、第2種トップ可および特別指定選手合計13名(ゴールキーパーを必ず1名含む)がエントリー下限人数として設定。どちらかのチームがそれを満たせず、代替開催日やスタジアムが確保できない場合、当該試合を開催したものとみなして結果をつける。
【リーグ戦、ルヴァン杯】
【ルヴァン杯決勝】
なお、帰責性は原則としてエントリー人数を満たせなかったクラブにあるものとされ、それは新型コロナウイルスの影響で選手数が確保できなかった場合も含む。
これについて村井チェアマンは「感染者、それから感染者を出したクラブ、感染に関する観点で責任を求めるものではないということが大前提。ただ、不測の事態に備えてチーム編成できるような準備をしてくださいというようなことを、今シーズンはスタート前から重ねて(クラブに)申し上げています」と説明している。
2月20日に川崎フロンターレvsガンバ大阪のカードが埼玉スタジアム2002で予定されている「FUJI XEROX SUPER CUP 2021」。開催日3日前の正午までにどちらかのチームのエントリー要件が未充足などで出場不可と確定した場合、2020シーズンJ1リーグの上位チーム順に代わって出場する。また、開催日の3日前の正午以降にどちらかのチームの出場不可が確定した場合は中止を余儀なくされる。
第23回新型コロナウイルス対策連絡会議後の会見では、緊急事態宣言が発出されている最中ではあるが、各クラブが予定するキャンプについて様々な事項を検討したことが伝えられた。
専門家チームの三鴨廣繁教授は、シーズンスタートの時期を考えればキャンプの延期や中止の決定は考えにくいと語っている。
「キャンプをしなければシーズンが始まらないのはアスリートとして当然。キャンプをいかに自治体と協和しながらやっていけるかを話し合いました。シーズンということを考えたらキャンプはこの時期しかない。基本的にキャンプを延期するという議論はなく、いかに安全にやるかに(議論が)集中しました」
そして、キャンプに臨むにあたっては各自治体の理解が得られていることが原則だとし、出発前に全クラブがJリーグ提供のPCR検査を実施すること、キャンプ中も週に1回の頻度で検査することが説明された。
【2021年】
【2020年】