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【日本代表 ワールドカップ・グループステージ突破法】オランダの弱点は?予選無失点のチュニジアをどう攻める?欧州PO勢で警戒すべきは…西紙副編集長が分析

2026年ワールドカップ(W杯)予選を最速で勝ち抜け、8大会連続の出場権を獲得した日本代表。そして現地時間5日にグループステージの組み合わせ抽選会が行われ、グループFに所属することが決まった。日本代表のグループステージ日程は以下の通り。※日本時間

▽6月15日(5:00)

vsオランダ代表

▽6月20日(13:00)

vsチュニジア代表

▽6月26日(8:00)

欧州予選プレーオフ・パスB勝者

しかし、長年に渡って日本代表の分析を続けるスペイン大手紙『as』の副編集長を務めるハビ・シジェス氏は、この組み合わせについて「歓迎すべきものとは言い難い」と語る。今回は、同氏に対戦国の特徴を分析してもらいつつ、日本代表がどう戦うべきかを紐解いていく。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』副編集長

翻訳=江間慎一郎

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    組み合わせは「歓迎」できない?

    今回のW杯の抽選結果は、日本代表にとって歓迎すべきものとは言い難い。欧州勢2チーム、一定の強さがあるアフリカ勢1チームとの組み合わせは、決して手放しで喜べるものではなく、ミスを許される余地も少ない。森保一率いるサムライたちは、高難易度の挑戦に望まなくてはならないのだ。

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    オランダの弱点は?

    EURO1988で優勝し、W杯では1974年、1978年、2010年で準優勝……オランダはもちろん、最も乗り越えるのが難しい壁だ。ポット1に入った欧州勢の中ではほかのチームほどの威光はないかもしれないが、近年の彼らはかつての“強いオランダ”像を取り戻しつつある。EURO2024では準決勝進出を果たし、今年3月のネーションズリーグでは準々決勝でEURO王者スペインを大いに苦しめ、むしろ彼らの方が勝ち抜きに値したほどだった。

    ロナルド・クーマン率いるオランダには、力のある選手たちもいれば、確固たるゲームプランもある。基本システムは彼らのフットボールの伝統と言える1-4-3-3(スペインのフォーメーションはGKから表記)で、時折1-4-2-3-1も使用。ボールは絶対的に自分たちのものとして、両ウイングの突破、中盤や前線の選手のライン間の連係で相手を崩しにかかる。

    彼らの強みは中盤にある。フレンキー・デ・ヨング、ライアン・フラーフェンベルフ、タイアニ・ラインデルスは完璧な組み合わせだ。彼らは3人ともボール保持力、判断力、個人技に優れており、激しいアップダウンをこなすことができる。オランダのゲーム支配は彼らによる支配と言っても差し支えない。

    デ・ヨングにはバルセロナで磨き上げた配球力があり、ラインデルスはボールの持ち運びと2列目からの飛び出しで相手に打撃を与える。そして前線では左サイドのコーディ・ガクポがその圧倒的なドリブル能力で崩しの起点となり、代表通算55得点のメンフィス・デパイが今なお“9番”として猛威を振るう。

    彼らの中盤と前線は非常に強力な面子が揃っているが、今も世界最高のセンターバックの一人に数えられるフィルジル・ファン・ダイクが統率するDFラインも充実している。少し不安が残るのが左サイドバックで、現在はナタン・アケとミッキー・ファン・デ・フェンが、レギュラーの座を争っている。

    オランダは眩いスター選手たちを何人も擁しているが、それでもいくつかの弱点を抱えている。例えば攻撃時には、ガクポらウイングの1対1に頼り過ぎて、攻め方が単調になってしまう。それにも関連する話だが、クーマンは守備を重視するタイプの監督で、そのために選手たちを後方に引かせすぎてしまい、いまいち攻め切れないことがある。W杯予選では凝り固まったパフォーマンスで、ポーランドと2度ドローゲームを演じていたが、それは森保ジャパンにとって明るい材料と言えるだろう。

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    チュニジアの「強さ」

    またアフリカ勢のチュニジアも、決して簡単な相手ではない。アフリカ予選を9勝1分け22得点0失点と、無敗&無失点で勝ち抜け、最近のブラジルとの親善試合を引き分け(1-1)たことが、彼らの強さを表している。

    彼らはまさに一枚岩のチームだ。FW、MF、DFの各ラインがよくまとまっており、カバーリングでのミスもほぼない。屈強なセンターバックのヤシン・メリアー、ボランチとして攻守の安定を取るエリス・スキリが、このチームの競争力の象徴だ。

    チュニジア監督サミ・トラベルシは、1-4-3-3か1-4-2-3-1を使用することが多いが、ブラジル戦は5バックで臨んだ。何度もシステムを変えることで混乱をきたすチームもあるが、チュニジアは指揮官のそうした戦術的介入が機能している……まあ守備面同様、攻撃面も自由がほとんど与えられないため、もっとうまく攻められるのでは、という感覚を覚えるのも確かだが。

    最も面白い選手はバーンリーでプレーする攻撃的MFハンニバル・メイブリで、ガルビ、マストゥーリ、サアドといった選手も興味深い。チュニジアはこれから臨むアフリカネーションズカップが、ワールドカップに向けた試金石にも、チームをさらに団結させる糧にもなるだろう。

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    欧州予選プレーオフ勢で警戒すべきは…

    日本が対戦する欧州勢のもう一チームは、ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニアによる欧州予選プレーオフ・パスBの勝者に。一番有名なのはスウェーデンかもしれないが、予選での低迷ぶりによってその地位を落としている。スウェーデンがウクライナに勝つことは、決して容易ではないだろう。

    スウェーデンを率いるグラハム・ポッターは混乱に陥るチームを立て直し、アレクサンデル・イサクとヴィクトル・ギェケレシュのコンビを機能させる任務を負っている。彼らのほかルーカス・ベリヴァルやルーニー・バルドグジ、デヤン・クルゼフスキ、アンソニー・エランガといった選手を揃えているのだから、W杯出場にふさわしいのは間違いない。だが、これまでのところそのプレーは予測しやすく、守備面での不安も残っている。

    だからこそウクライナが、戦争下にある国の誇りを胸に、彼らの出場を阻む可能性も十分にある。彼らもアナトリー・トルビン 、イリア・ザバルニー、ビタリー・マイコレンコ、イェホル・ヤルモリュク、ヘオルヒー・スダコフ、ヴィクトル・ツィガンコフ、ヴラディスラフ・ヴァナト、アルテム・ドフビク……と、役者は揃っている。

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    もう一歩先へ

    今回の大会で、日本はベスト16からもう一歩先へ進むことを求められている。「良い感触を残す」、「良い印象を残す」だけでは、もう物足りない。しかし今回のグループは、ドイツやスペインと同居した前大会のグループとはまた異なる難しさがあり、最大限の集中が必要となる。オランダを含めて手の届かない相手はいない。が、楽な相手も慢心する相手もいない。日本は一試合一試合で、自分たちの才能とこれまでの努力の価値を示す必要がある。

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