EURO1988で優勝し、W杯では1974年、1978年、2010年で準優勝……オランダはもちろん、最も乗り越えるのが難しい壁だ。ポット1に入った欧州勢の中ではほかのチームほどの威光はないかもしれないが、近年の彼らはかつての“強いオランダ”像を取り戻しつつある。EURO2024では準決勝進出を果たし、今年3月のネーションズリーグでは準々決勝でEURO王者スペインを大いに苦しめ、むしろ彼らの方が勝ち抜きに値したほどだった。
ロナルド・クーマン率いるオランダには、力のある選手たちもいれば、確固たるゲームプランもある。基本システムは彼らのフットボールの伝統と言える1-4-3-3(スペインのフォーメーションはGKから表記)で、時折1-4-2-3-1も使用。ボールは絶対的に自分たちのものとして、両ウイングの突破、中盤や前線の選手のライン間の連係で相手を崩しにかかる。
彼らの強みは中盤にある。フレンキー・デ・ヨング、ライアン・フラーフェンベルフ、タイアニ・ラインデルスは完璧な組み合わせだ。彼らは3人ともボール保持力、判断力、個人技に優れており、激しいアップダウンをこなすことができる。オランダのゲーム支配は彼らによる支配と言っても差し支えない。
デ・ヨングにはバルセロナで磨き上げた配球力があり、ラインデルスはボールの持ち運びと2列目からの飛び出しで相手に打撃を与える。そして前線では左サイドのコーディ・ガクポがその圧倒的なドリブル能力で崩しの起点となり、代表通算55得点のメンフィス・デパイが今なお“9番”として猛威を振るう。
彼らの中盤と前線は非常に強力な面子が揃っているが、今も世界最高のセンターバックの一人に数えられるフィルジル・ファン・ダイクが統率するDFラインも充実している。少し不安が残るのが左サイドバックで、現在はナタン・アケとミッキー・ファン・デ・フェンが、レギュラーの座を争っている。
オランダは眩いスター選手たちを何人も擁しているが、それでもいくつかの弱点を抱えている。例えば攻撃時には、ガクポらウイングの1対1に頼り過ぎて、攻め方が単調になってしまう。それにも関連する話だが、クーマンは守備を重視するタイプの監督で、そのために選手たちを後方に引かせすぎてしまい、いまいち攻め切れないことがある。W杯予選では凝り固まったパフォーマンスで、ポーランドと2度ドローゲームを演じていたが、それは森保ジャパンにとって明るい材料と言えるだろう。