Japan-Spain(C)Getty Images

スペインに健闘も惜敗…3大会連続16強でW杯敗退のU-17日本代表。この敗戦から始まる「大海原へ」の道のり

「善戦した」と解釈もできる結末で、試合を観戦した海外の記者からは日本の監督・選手に賛辞も贈られていたが、それは「格下と思っていた日本が思いのほか頑張っていた」という視線から生じた言葉だろう。日本の選手たちが掴みにいった成果とは異なるものだった。

  • ◼︎勝機があった前半

    まったく手応えのない試合だったわけではない。序盤はスペインに「ボールを持たせる形」(MF佐藤龍之介=FC東京U-18)にしておくのはゲームプラン通りで、途中から日本の流れに持っていくというペースメイキングも想定通り。開始早々の8分に喫した失点は痛恨だったが、前半の途中からは完全に日本ペースに。

    40分には、事前の分析で狙っていた佐藤のフリーランニングからの攻撃で、最後は「あのスペースを使って決め切るために先発で送り出した」FW名和田我空(神村学園高)の一発で同点に追い付いてみせた。

    「守備でかなり意図的にボールを奪えて攻撃でもかなりボールを動かすことができて、スコア以外はこれ以上ない前半だった」(森山佳郎監督)

    シュート数も6対3と日本が上回っていた。ただ、あらためて振り返れば、勝機があったのはこの前半。序盤の失点が最後まで響く形になった。

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    ◼︎個々の挑戦は続く

    後半は中2日の連戦となる中で「どうしても疲弊してしまっていた」(森山監督)選手たちの守備時の強度が低下し、ファーストDFがボールに行けない場面が頻出。攻守のバランスが崩れて一方的なスペインペースへ試合の天秤は傾いてしまった。

    スペインは交代で投入される年少組の才能豊かな選手たちも躍動。飛び級招集の15歳、イゴール・オヨノ(ビジャレアル)はその身体的な特長で日本DFを追い詰め、16歳の技巧派ウイング、パウロ・イアゴ(レアル・マドリー)は多彩なスキルとセンスの良さで日本を脅かし続けた。

    ハイレベルな相手の防戦に努めた日本守備陣は健闘していたが、「分析でも相手のパターンとして注意されていた」(DF本多康太郎=湘南U-18)という形から切り崩されてしまう。

    73分、エースFWマルク・ギウ(バルセロナ)が一瞬の隙を突いて日本の最終ライン裏へと飛び出し、ゴールを奪い取ってみせた。

    「相手の9番(マルク・ギウ)はバルサでのデビュー戦でそうだったように、斜めへ走る形でゴールを決められた。こちらが4人も5人もDFがいるときに、出し手と受け手の関係性だけで解決してしまう質があった」(森山監督)

    この時間帯を耐え切れず、勝ち越しゴールを奪われたことでほぼ勝負あり。その後は交代選手を送り出してバランスを崩すことを覚悟しての攻勢をかけたが、疲労している選手と勢いを持って試合に入った選手が同時にピッチにいる中で連係も噛み合わず、ほとんどチャンスは作れぬまま、タイムアップを迎えることとなった。

    試合後、森山監督は「世界中のどの国と当たっても怖がることなく戦えるメンタリティは持たせてあげられたと思う」としつつ、スペインとの差があったことも認める。

    その上で選手たちについて「相当頑張ったのは間違いない。ものすごく頑張ったと思う」とねぎらいつつ、「この悔しさはW杯でしか晴らせないというところで、自分で掴むまで成長をしてほしい」とエールを贈った。

    チームとしての活動はこれで一区切りとなるが、彼ら個々の挑戦は「ここから大海原へと出て行く段階」(森山監督)。プロのステージで、そしてU-20や五輪、A代表と続く日の丸を付けての戦いへ。その挑戦は、一度の敗戦で終わるものではない。