Rento-Takaoka(C)Getty Images

W杯得点ランク首位に…U-17日本代表、突如現れた新星FW高岡伶颯とは?”偶然ではない”中学県選抜から世界の舞台での大暴れ

「攻守でエネルギッシュだし、チームのために戦ってくれる」といった言葉と共に、「物怖じしないからね」とも評してきた。未知の相手にもビビらず、全力で惜しみなく戦えて、そして点も取れるストライカー。U-17ワールドカップでの戦いを通じ、高岡はそんなイメージを発信し続けている。

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    未発掘のタレントからW杯でのブレイクへ

    グループステージ3試合で4得点。しかも欧州のポーランド、南米のアルゼンチン、そしてアフリカのセネガルと「三者三様、まるで異なるキャラクターを持った3チーム」(森山監督)を相手に、しかもすべて接戦となる中でゴールという結果を残してきた。偶然の産物ではあるまい。

    4ゴールは日本の全得点を叩き出しているということでもあり、大会全体を観ても、17日時点で得点ランク首位タイ。すでにフルミネンセのトップチームにデビュー済みのブラジル期待のFWカウアン・エリアスと並び立っている。

    そんな高岡だが、チーム結成当初から代表メンバーに名を連ねていた選手ではない。「絶対に日本のどこかに埋もれている選手がいる」と森山監督が未発掘のタレントを求めて情報網を広げる中で、昨年途中から浮かび上がってきたタレントだった。

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    指揮官も驚いたメンタリティ

    早生まれの高校2年生である高岡はU-17年代だけでなく、一つ下のU-16年代の代表資格もある。このため、「まずは一つ下で呼んでみて様子を観たい」と、U-16日本代表へと招集。その様子を観察していた森山監督から「(アジア予選で)ぶっつけに近くなるけど、それでも呼んでみたくなるものがあった」と合格点をもらった。

    スピードやアジリティと持久力を併せ持つ個性に加え、森山監督が買ったのはメンタリティの部分だ。公立の中学校から地方の高校でプレーし、「中学でも県のトレセン止まりだった」(高岡)というケースだと、「代表に来ると途端に萎縮してしまう選手も多い」(森山監督)。だが高岡は、「知らない選手にも積極的に話し掛けて輪に入っていってプレーでも表現していた」と、経験豊富な指揮官も驚くアグレッシブさを披露。好感触を得て、U-17日本代表にも招集されることとなった。

    初めての本格的な国際大会の公式戦となった6月のAFC U17アジアカップでは、持ち味の猛烈なプレッシング、果敢なランニング、そしてゴールへの姿勢も表現したが、ゴールという結果には余り恵まれなかった。本人も「反省するところばかりの大会だった」と振り返るが、あらためて自分のプレーを整理してトレーニングに励んだという成果を持ち込んだU-17ワールドカップでは、本能任せのプレーではなく、「しっかり見て判断してプレーできている」と好プレーを連発。タフな戦いが続く中で結果を残し続けている。

    そして、すっかり満足しているかと言えば、そうではない。

    ほとんど口癖の「まだまだです」のコメントは健在で、「自分のお父さんは2点取って喜んでいたら、『ハットトリックだな』と言ってくる人。これだと『まだまだ』なんです」と笑って言いつつ、「自分は満足していないし、きっと家族も満足していないと思う」と言い切る。

    次のラウンド16で対峙する相手は、ヨーロッパを代表する強豪のスペイン。今大会も圧倒的な強さを見せてグループステージを突破しており、将来を嘱望される選手がひしめくビッグチームだ。

    ただ、高岡は「楽しいしかない」と目を輝かせつつ、こう意気込む。

    「A代表もW杯でスペインとやって勝っていた。自分たちもどん欲にA代表みたいに戦えば勝てると思う。自分も結果を出して、ベスト16の壁を突破したい」

    U-17日本代表のトップスコアラーは、「まだまだ」止まるつもりはなさそうだ。