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大切なのは日韓戦を「どう通過するか」:U-17日本代表、連覇をかけたアジア杯決勝へ!注目の選手に導く監督の手腕とは

タイにて開催されている「U-17 アジアカップ」。連覇をかけて出場しているU-17 日本代表は、初戦こそウズベキスタンと引き分け(1-1)に終わったものの、その後ベトナム(4-1)、インド(8-4)、オーストラリア(3-1)、イラン(3-0)と4連勝を達成し、目標であったU-17ワールドカップ出場を決めるとともに、決勝戦の舞台まで勝ち上がった。

そうして迎えるファイナルの相手は、ライバル韓国。ビッグゲームを前に「観ている人に『アジアもやるな』と思わせるゲームにしたい」と森山佳郎監督も意気込んでおり、タイトルをかけた日韓戦は白熱必至だ。

今回は、現地で取材を続けるジャーナリスト、川端暁彦氏に今大会を戦うU-17 日本代表の戦いを紐解いてもらった。チームや監督の特徴に注目の選手、そして決勝戦で求められることは何なのだろうか?

取材・文=川端暁彦

  • Jepang U-17 260623AFC

    いよいよ決勝戦へ

    17歳以下のアジア王者を決め、U-17ワールドカップに出場するアジア代表をも決定するAFC U-17アジアカップ。その決勝戦が日本時間の7月2日21時から、東南アジアのタイにて開催される。迎える相手は“おとなり”韓国である。

    「アジアの頂上決戦。観ている人に『アジアもやるな』と思わせるゲームにしたい」

    そんな言葉でこの試合への期待を語った森山佳郎監督は「ワクワクしている」ともコメント。このフレーズはこの指揮官が選手に送る定番フレーズでもある。

    チームにとって最大の山場だった準々決勝のオーストラリア戦。「勝てば世界大会出場、負ければ敗退」というわかりやすいシチュエーションだったこの試合は、かつてないプレッシャーを選手たちが感じた状態でもあった。ここでも指揮官は選手たちに「ワクワクしているか?」と呼び掛けた。

    「このプレッシャーを楽しめないやつはサッカー選手としてやっていけないぞ。こういうときこそ、ワクワク、メラメラしていこう」

    このマインドセットこそ、森山監督のチームを象徴する考え方だ。今大会は優勝や世界大会出場といった外的な目標に加え、「1試合ずつチームとしても個人としても成長していく」という内的な目標も掲げた。「この代表を経たとき、少しでも大きくなってくれれば」と、この代表を通過点として捉えるのは指揮官の一貫した目線でもある。

    時に厳しく、時に熱く、時に笑いも取りながら選手たちに語りかける内容は一貫して「成長」するためにどうあるべきかということにある。

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  • Gaku Nawata - Jepang U-17AFC

    好循環を作り決勝戦へ

    今大会もウズベキスタンとの初戦で1-1のドロースタートと快調な手出しにはならなかったが、そこで出た反省材料を次の試合に糧にして、また次の試合で出た課題をその次へフィードバックするというサイクルを重ねてチームと個人をブラッシュアップさせている。

    先発メンバーも基本的に固定せず、初戦から約半数を入れ替えたベトナムとの第2戦に4-0と快勝すると、そこからGK含めて7名を入れ替えたインド戦は8-4という極端なスコアで勝利。相手の猛追を許した試合展開は反省だらけだったと言えるが、それもまた選手たちに新しい自覚を促す材料となっている。

    そしてオーストラリアとの決戦となった準々決勝は、「前半は攻守に狙いとするサッカーができた」と辛口の指揮官も満足する内容で2-0と押し切り、後半は相手の反撃を1点に抑えつつ3-1と快勝。続くイラン戦は相手の良さを出させることなく3-0と圧勝し、この決勝へ駒を進めてきた。

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    注目の選手は?

    チームの軸になっているのはFW道脇豊(ロアッソ熊本)。高校2年生ながら、すでにJ2リーグにも出場を重ねている長身FWは、その高さを活かして第1戦と第2戦でヘディングでのゴールを奪うと、準々決勝でもクールなシュートを決めてここまで3得点を挙げている。

    相手から最も警戒される選手にもなっているが、高さやスピードといったわかりやすい身体的特長だけでなく、動き出しの上手さや確かなシューティング技術なども光っている。日韓戦に向けては「まずは1点取って得点ランク首位タイに並んで、もう1点取って単独得点王を」と意気込む。

    一方、精神的な柱になっているのは、ここまで唯一の全試合スタメン出場となっているキャプテンの左サイドバック、小杉啓太(湘南ベルマーレU-18)だ。素早く粘り強く、そして予測も鋭いディフェンス力は、日本以外の関係者からも軒並み高く評価されており、幾多のピンチを救ってきた。

    また森山監督が「本当に頼れるキャプテン」と言うように、ピッチ外でも選手たちをまとめ、成長する方向へと足並みを揃えさせることでも大きな貢献を見せている。

    戦術的には、この小杉をディフェンスに残して守備時の4-4-2から攻撃時に3-4-2-1へ「右肩上がり」に変化するシステムがチームの特徴となる。攻撃自慢の右サイドバック、柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18)を高い位置に押し出し、特別な突破力を持つ川村楽人(東京ヴェルディユース)、左足のキックが魅力の吉永夢希(神村学園高等部)といった一芸を持つ左サイドのアタッカーをワイドに張らせる形だ。

    技術に加えて戦術的なセンスも光る佐藤龍之介(FC東京U-18)が右サイドMFから右シャドーの位置へとスライドし、器用さと鋭さを併せ持つ名和田我空(神村学園高等部)が左のシャドーへ落ちて、道脇と合わせて1トップ2シャドーの形を作るのが基本形。出る選手の個性によって変化も付けられるこの形がここまで5試合19得点という結果にも繋がっている。

  • Korea Selatan U-17AFC

    韓国との決勝戦へ

    決勝の相手となる韓国について、森山監督は「今までで最大の難敵。U-17ワールドカップレベルの試合に」と評価する。攻守に質の高いタレントを擁するだけでなく、「コンパクトに連動して戦ってくる」戦術的な強度の高さも、「アジアのこれまでの相手とはまるで違う」と言う。

    U-17ワールドカップ本大会での上位進出を現実的な目標として狙う日韓両国にとって、ここでの激突はお互いの現在地を確認するような試合になるかもしれない。U-17年代の代表が「通過点」であることは言うまでもないが、それは無意味というわけではなく、「どう通過するか」が大切になるということである。

    日本サッカーの未来を担う選手たちが、決勝での日韓戦というステージを「どう通過するか」。ぜひ目撃してもらいたい。