アーセナルは今シーズン、どのポジションを見ても望みが薄い状態に見える。そんな状態の中、ミケル・アルテタの幅広い戦術が見定めにくくなっている。
大まかに言えば、アルテタは恩師であるペップ・グアルディオラの、ポジションを変えながら複雑なパスでプレスをかいくぐる戦術を模倣したいのだ。これが実現できればアーセナルはファイナルサードに素早く切り込むことができると目論んでいるのだ。問題は、この戦術を行うにはエリートクラスの選手が必要であるということ。マシンの一部が詰まってしまうと、システム全体が崩壊してしまうのだ。
アルテタには冨安健洋のような選手がもっと必要だ。ポリバレントな選手で、右サイドバックとセンターバックをこなす冨安は、ボローニャから1600万ポンド(約24億3000万円)で加入。身長が高く、パワフルで、両足が使えるディフェンダーであり、アーセナルを攻撃と守備の両面から立て直せる存在だ。
冨安を右サイドバックに据えると、不均衡だったアルテタのフォーメーションはよりスムーズに動くだろう。4-2-3-1と3-4-3を組み合わせようというアルテタの望みを変えずにゆくには、ボール保持時にはこの22歳をスリーバックの一角に下げることで、災いの起こるバックラインを底上げする。そうすればキーラン・ティアニーも逆サイドから攻撃に参加させることができ、フォワードにボールを供給できそうだ。
だが、冨安はポゼッション能力も高く、必要があれば中盤のギャップを埋めることもできる。また、右ウイングバックで先発すれば賢いオーバーラップも期待できるだろう。
実際はかなり異なるタイプのプレーヤーだが、ちょうどカイル・ウォーカーとグアルディオラの関係のように、冨安はアルテタに戦術的な拡張性をもたらしそうだ。