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カンガルーレザーから「SILKYWRAP」へ。スパイクのプロが語る新素材の特長とは?

 日本人の「足」を探求し続けるアシックスが、日本で企画し神戸にあるアシックススポーツ工学研究所で研究を進めて生まれた「DS LIGHT」シリーズ。今年は同シリーズ25周年を迎えた記念の年でもあるが、その最後を彩るべく12月12日、新素材「SILKYWRAP(シルキーラップ)」を搭載した最新モデル「DS LIGHT X-FLY PRO 3」が発売された。新素材を用いたスパイクにはどんな機能や特長があり、現役部活生たちのどんなプレーを助けてくれるのか?

 今回GOALでは、新スパイクを紐解くべく、それぞれのジャンルのプロを招いて対談を企画。サッカーの言語化に長けた解説者・指導者の林陵平さん、サッカーショップKAMOから日々店頭で部活生たちに接する足(シューズ)のエキスパート・フットマイスター3名、アシックスジャパン・サッカーシューズ企画担当の総勢5名が語り合った。

◆対談参加者
林陵平さん(写真中央)
サッカーショップKAMO
 シニアフットマイスター 吉村卓也さん(写真左から二人目)
 渋谷店 店長 / フットマイスター 松尾侑亮さん(写真右から二人目)
 札幌パルコ店 店長 / フットマイスター 小田啓嗣さん(写真左端)
アシックスジャパン サッカーシューズ企画担当 山辺高大さん(写真右端)

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    思い出は「履いて結果を出せた」スパイク

    本編の前に、サッカーショップKAMOのフットマイスターについて少し説明すると、「各店舗にいる足(シューズ)に詳しいスタッフの知識を特化し、突き抜けた集団を作ろう」ということで今年からスタートしたサッカーショップKAMO独自の資格だ。厳しい試験に合格したフットマイスターは、店頭で部活生の悩みに接し、解決策を見付ける立場でもある。対談は、林さんが育成年代のころの思い出を聞くことからスタートした。

    アシックス山辺高大さん(以下山辺) 林さんは育成年代のころ、どのような観点でスパイクを選んでいましたか?

    林陵平さん(以下林) 育成年代の時はとにかく自分に合うスパイク、かっこいいスパイクを選びたいという気持ちが大きかったですね。お店にいってざっと全部を見て、欲しいと思ったスパイクを選んでいました。もちろん、値段とも相談して。

    山辺 自分に合っているという観点も大きいようですが、印象に残っているスパイクはありますか?

     プロになってからは、履いて結果を出せたスパイクが「合っていたスパイク」だったと思います。FWだったら得点。自分が結果を残せた試合で履いていたスパイクが印象に残っています。ゲン担ぎみたいにもなるんですよね。活躍した試合のスパイクを大事なゲームでも履くことをすごく意識していました。

    山辺 シニアフットマイスターの吉村さん、店頭でそういった買い方をされる方はいらっしゃいますか?

    サッカーショップKAMO吉村卓也さん(以下吉村) いらっしゃいます。ただ、それが「正しい履き方かどうか」は別なんです。「足に合っていないのになぜなのかな?」と聞くと、「良い思い出があるから」と返ってくる。それを僕らが全否定して「合ってないですよ」と言うのも難しい。そこは話し合いながら決めていきます。こちらの考えすべてを 無理やり押し付けませんが、サッカーという競技は「足がすごく大事な競技」なので、フィット感やサイズ感がとても大事。あまりにも間違っているなと感じる場合は、軌道修正して合ったスパイクをおすすめしています。

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    天然皮革と人工皮革のいいとこ取りの新素材

     「フィット感」はアシックスのスパイクの大きな特長だ。今回発売された「DS LIGHT X-FLY PRO 3」に用いられた新素材「SILKYWRAP(シルキーラップ)」はその特長をさらに強化した。一言で言えば、天然皮革と人工皮革のいいとこ取り。今回5人はピッチで実際に試し履きをし、ボールを蹴ったうえでの印象を語る。

     まず、履いた瞬間に「いいスパイクだな」「フィットするな」と感じました。足に馴染む。あと軽くてびっくりしました。

    山辺  DS LIGHT X-FLY PRO 3は、スピードコンセプトのスパイクで約195グラムの軽さ(26.5㎝片足)とスプリントしやすいアウトソールを採用しています。今回、素足感覚に必要な「柔らかさ」「フィット感」、そして耐久性に優れた新素材のシルキーラップをアッパー材に使用しています。

     ボールを触ってもトラップしても、自分の素足で触っているような感覚で足に馴染みやすかった。新しいスパイクを1回目に履いた時は基本的に硬さがあって、馴染むまでちょっと時間かかるんですが、履いた瞬間からすごく自分の足に馴染みました。天然皮革のような柔らかさもあってすごくフィットしました。

    山辺 実際店頭で選ぶ際にも「触った感じ」は大切だと思います。フットマイスターの皆さんは、特長である柔らかさをどう感じましたか?

    サッカーショップKAMO小田啓嗣さん(以下小田) 店頭に並んでいるシューズを持って触ってもらうことが一番お客さまに伝えやすいんです。このシルキーラップを手に持った瞬間の第一印象が「柔らかい」なので、とても特長が分かりやすいです。

    山辺 シルキーラップは伸びた後の回復率が高いのも特長です。林さんは、天然皮革と人工皮革の違いをどう感じていましたか?

     天然皮革だと足に馴染みやすくて自分の足の形になるんですけど、雨の日とかに履いたら伸びたまま戻らなくなってしまうことがありました。雨のあとの晴れた日に履くと、「あれ、ちょっと緩いな?」って感じることもあって。人工皮革はある程度そのままの形なので、フィットしにくさがある。でも、このシルキーラップだと、雨の日のあとの晴れの日に履いても、フィットしてくれるというのはすごく助かりますね。

    小田 林さんにお伺いしたいのですが、お店に来てくれる高校生はシュートやキックを重視している選手が多いんですけど、試し履きしてみて、キック時のインパクトやフィーリングをどう感じましたか?

     インパクトもしっかり当たりますし、履きやすかったですよ。パスもシュートもドリブルも全部いけるんじゃないかなって感じました。

    山辺 サッカーショップKAMOさんとしてはどんなお客さまにすすめたいですか?

    小田 フィット感で言えば、どの(ポジションの)選手でもいいなと思ったのですが、 今回アウトソールも一新されて、より一歩目の踏み出しだったり、グリップだったりが強くなっています。前線の選手、最後のスピードを武器にしている選手に、よりおすすめできるかなと感じました。

    山辺 ほかに、店頭で接する部活生からの具体的な悩みがあれば教えてください。

    サッカーショップKAMO松尾侑亮さん(以下松尾) 足幅ですね。幅が広い悩み、細身の方の悩み。甲の高さや 薄さ、それぞれ異なります。例えば細身の足幅の選手がシューズの中で緩さが気になるとプレーのしにくさにつながります。今度のシルキーラップは伸びて戻る機能が高いため、細身の選手にもおすすめできます。

    吉村 幅というテーマでいきますと、お母さんとお子さんが来るときの悩みはほぼ「幅広」なんです。「息子、幅広なんです」と相談を受けても実際に足を見るとそうではないことも多い。子どもさんは大人の僕らが感じるフィット感だとちょっとキツいと感じるようで、そこはしっかり会話しながら選んでもらっています。

    松尾 あとはケガを減らしたいという悩みも多いですね。

    山辺 ケガ予防は正直難しいのですが、ものづくりをしっかりする中でサポートはできると思っています。

    松尾 アシックスさんのスパイクはアウトソール中足部分の構造がしっかりしていて、体重移動といったそういう動きの部分での安定感はありますので、おすすめしやすいです。

    山辺 林さんは足幅などで悩みはありませんでしたか?

     それはほぼなかったですね。強いて言えばサイズが大きいところ。29cmなので、買いに行っても当時は在庫がないこともありました。

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    サッカーをたくさん見ることでの成長

    東京ヴェルディ1969ユースでの現役高校生時代から、明治大学体育会サッカー部を経てプロ選手へ。そして、現在はサッカーに打ち込む若者たちを教える立場になった林さん。今年はJFA公認Proライセンスの取得に向けて邁進してきた。対談の最後に、元プロ選手として、指導者として現役高校生選手たちに取り組んでほしいことを聞いた。

    山辺 アシックスとしても現役部活生の成長のために、という思いは使命としてあるのですが、林さんから現役部活生にアドバイスをするとすれば。

     努力をすることは当たり前なので、自分の特長と苦手なものは何かを意識することですね。自分を理解すれば、どこに向かって努力をすればいいが分かると思います。自分が必要のないものはやらなければいいし、必要とするものを努力すればいい。そこを間違うと正しい努力にならないので、自分を見つめ直すことがすごく大事だと思います。

    山辺 まずはどういったところから?

     ポジションにもよりますが、自分の特長を伸ばすことと、弱みがあるのならその弱みも少しずつ消していくことも大事。プロになるためにはすごく重要な部分だと思います。人によってそこは全然違うとは思いますが、「自分を知る」ことですね。そのためには、サッカーをたくさん見ることです。たくさん見ることによって、自分がピッチに立った時に、何が必要なのか理解できるので。サッカーは足でするスポーツですが、頭でするスポーツでもあります。自分がそのピッチに立って何ができるかを理解すると、より成長しやすくなると思います。なので、僕の解説を聞いてください(笑)。

    山辺 今はサッカー解説者として何試合くらい見ておられるのですか?

     1か月で大体100試合ぐらい見ています。高校生たちのみんながプレミアリーグを好きであればプレミアを見てほしいです。

    山辺 その中で、スパイクの変化やプレーの変化は感じますか?

     スパイクで言えば、本当にいろいろなタイプが出てきていますね。だからこそ、自分に合ったものを早く見つけてほしいと思います。サッカーで言えば、スピードは上がりましたし、フィジカル的な能力がなければ、いくらテクニックがあっても今のサッカーには通用しないと思います。スピード、スタミナ、あとはパワーですね、筋力トレーニング。そこは育成年代にとっても重要だと思います。プロになった時も、そのフィジカル的な要素がなければ 選手としての成功はほぼできないといます。 あとはプレーした後のリカバリー能力。一定の時間の中でどれだけ回復して、また次の90分間を戦えるかもすごく大事だと思います。

    山辺 高校生選手がすぐ取り組めるリカバリーのための方法はありますか?

     間違いなく食事です。僕も大学の時、試合に出られない時期がありました。大学1年の時で何かを変えないとプロになれないと思った時に、サッカーではなくて食事を変えたんです。食事を変えたことによって身体が動くようになって、試合に出られるようにもなりました。 本当に食事は大切です。

     食事の質を求めていけばより成長につながります。自分に必要なものタンパク質とかですね。あと、お菓子も揚げ物も食べませんでした。簡単なことですけれど、カップラーメンを食べないとか、そういうことをしていくだけで全然変わっていくものだと思います。

    山辺  現役部活生やサッカー選手が成長していくポイントは、「自分をしっかり知ること」、「フィジカル」、そして「食事」、この3つが大切だということがわかりました。本日はありがとうございました。

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