ラグビー部、野球部などが全国大会に名を連ねる東海大大阪仰星。サッカー部にとっては7年ぶり6回目の全国となる。黄色と黒のストライプを纏うチームは、219校が加盟する激戦区を勝ち抜いて全国切符をつかんだ。ここでは、2011年から母校で指揮を執る中務雅之監督の話を中心に、結束力を高めるチームにフォーカスする。(取材・文=川端暁彦)
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©ASICS■練習前に必ず行う落ち葉拾い
2017年1月7日、埼玉スタジアム2002で行われた第95回全国高校サッカー選手権大会準決勝。初優勝を狙う優勝候補筆頭、青森山田の前に立ちふさがったのが、初の4強進出を果たしていた東海大仰星(当時、現・東海大大阪仰星)だった。準々決勝では前年度王者の東福岡をタフな勝負の末に下した東海大仰星は、この試合もチャレンジャーとしての真っ向勝負を展開。激闘の末、1-2の敗戦となった。後に初優勝を果たした黒田剛監督(当時、現・FC町田ゼルビア監督)は「東海大仰星との試合が一番キツかった」と振り返っている。
あれから6年、その東海大大阪仰星が「選手権」に帰って来た。
枚方市にある東海大大阪仰星のグラウンドを訪ねると、前回出場時と最も違う光景が目に入ってくる。緑一面の人工芝グラウンドだ。4強に入った2017年から導入され、当時に比べると選手たちのプレー環境は大幅に改善されている。
一方、当時と変わらないのは運用面で、強豪であるラグビー部と半面ずつに分割しての使用が基本的な利用法だ。全国を代表する強豪であるラグビー部から自然と刺激を受けられる環境とも言える。
ただ、中務監督は結果を出して人工芝のピッチになった点について「それで失われるものもある」ことを意識していると言う。
「いまの子どもたちはピッチのサイズを言えないことが多いんです。それは彼らが悪いとかではなく、単純に土のグラウンドに白線を引くという経験をしていないから。グラウンドに来れば、土を整備する時間などもなく、すぐに練習ができるようになっています。ただ、そうした恵まれた状況が必ず選手にとってプラスになるとは限らないんです」(中務監督)
練習前に必ず行うという落ち葉拾いは、そうした意識を養うためでもある。みんなで使うグラウンドをしっかり整え、感謝の気持ちを持って臨む。部の伝統になっていた前提は、崩していない。
©ASICS■「タレントが集まっているチームではない」
指揮官は「勝って何か心の部分が変わるかと言えば、そういうことじゃないと思うんです」と言う。それは恐らく、あの7年前の大会を経て、あらためて痛感していることなのだろう。
「今回も大阪予選の決勝で履正社さんに勝って(4-0で勝利)、みなさんから『快勝ですね』とかおっしゃっていただいていますが、実際はそうではありません。僕らが逆の立場になることも十分にあった試合でした。勝つチームがあって負けるチームがあるのが勝負の世界で、その差はわずかです。自分たちが負けることも当然あるわけで、だから勝ったときに負けた側への気持ちというのも忘れてはいけないと思っています」
主将を務めるFW水永直太朗が「そんなにタレントが集まっているチームではないですから」と率直に言うように、東海大大阪仰星には中学時代から名を轟かせていたような選手は多くない。水永もまた、高校に入ってからFWへコンバートされて才能を開花させた一人である。そういう選手たちの3年間の成長ぶりを評価する声も多い。ただ、こうした見方にも中務監督は「勝ったから、そう言われやすくなっただけですよ」と、やんわりと否定する。
「日々の心の成長によってサッカー選手としても成長し、そしてチームで団結して結果を掴む。そこを目指しているのは確かです。ありがたいことに大学を経てプロになるような選手も増えてきています。いまの選手の中にはプロを目指している子もいるでしょう。サッカーに打ち込んでいるのだから、そこを目指して努力するのは良いことだと思います。ただ、たとえサッカー選手になれたとしても、引退した先のセカンドキャリアもあります。世の中のことをしっかり学んでいく姿勢を持って行動していけることが大切だと思っています。そして誰かから必要とされるような人になっていってほしいんです」
もしかすると矛盾するように感じられるかもしれないが、こうした姿勢で選手を指導しているからこそ、東海大大阪仰星のピッチ上での強みもあるように感じられる。水永主将が「団結力とか、普段の生活からキッチリやっていくことは負けていないと思います」と言うように、日常から積み上げた強さがある。
©ASICS■初戦の相手は全国の常連・矢板中央
「選手権で初めて東海大大阪仰星を観る人に注目してほしいポイントはありますか」
中務監督にそんな問いをぶつけると、「お互いの関係性、実直さを生徒から感じてもらえればと思っています。応援も含めてウチの学校の良さをしっかり出していきたいですね」と言い切る。一体感を持って全員で助け合いながら、タフに戦い抜く。日常から培った強さこそ、東海大大阪仰星の真骨頂だ。
初戦の相手は全国の常連である栃木代表、矢板中央高校。タフネスを前面に押し出して戦う強豪だが、「初戦で厳しい相手とやれるのは彼らの成長に繋がる。我々は挑戦者なので、まずトライしていきたいですね」と意気込みつつ、「大会に参加する以上はできるだけ高いところを目指すけれど、肩に力を入れ過ぎないのも大事。まず正しい準備がしっかりできるかにフォーカスしたいです」と語る。この試合に向かう過程を重視するのも東海大大阪仰星らしさなのだろう。奇しくも水永主将からも「まず試合に向かっていく中での準備をしっかりやっていきたい」という言葉が聞かれた。
最後に、生徒たちにとってどういう選手権になってほしいかを聞くと、こんな答えが返ってきた。
「必要なトライとエラーを繰り返しながら、仲間との結びつきをさらに強くして、限られたチームしか掴むことのできないものを目指す。その過程で色んな形の成長を、それぞれが掴んでほしいなと思っています」(中務監督)。
初戦の舞台は12月29日、等々力陸上競技場。東海大大阪仰星にとっては7年ぶりの、生徒たちにとっては初めての檜舞台。「しっかりと準備した上で、目の前の試合へ真摯に向き合っていきたいと思っています」(中務監督)。
©ASICS【TRY! ASICS! を実施】
ASICSが学校や店頭で実施する「TRY! ASICS!」。これは、選手がスパイクを実際に「履いてみる」だけではなく「プレーして試す」こともできるイベントだ。この日、東海大大阪仰星で開催され、選手たちは「DS LIGHT」シリーズ4タイプから自身のプレースタイルに合ったスパイクをセレクト。走る感触やボールを蹴る感触を試していた。以下、試し履きした個人の感想をお届けする。
「フィット感がとても良くて、ボールが蹴りやすかった」(DS LIGHT X-FLY PRO 2/FW 水永主将)、「ヒールの部分が(ホールドされて)力強く踏ん張れる」(DS LIGHT X-FLY 5/MF 辻修斗)、「ムダな重さを全然感じずにプレーできた」(DS LIGHT ACROS PRO 2/FW金田柊真)、「軽くて 足にフィットして快適。速く走れそう」(DS LIGHT ACROS 2/MF 芳田慶達)。
鳥かごやシュート練習などでも、チームメート同士の結束力が伝わってきたこの日。選手権で躍動する選手たちに期待したい。
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