その年には「年代別日本代表って何だ?」と思っていた選手が、U-16日本代表にも初選出されることとなる。「信じられなかった」という代表での経験は「本当に貴重だった」と言うものの、チームでは「悩むことのほうが多かった」と言う。
「代表に入っているのに試合に出られなかったり、出られるようになってからも大事な試合に絡めなかったり…。やっぱり、いろいろなことがありましたから」
全部を振り切って自分のプレーを出せるようになったというのは「やっぱり3年生になってからだと思います」と言う。悔しい経験も共有してきた仲間たちと、全力でぶつかっていった最終学年での戦いはやはり特別な記憶として残っている。
「弱い代だとか言われていて、でも自分はその評価が腑に落ちなかったので、最後にある程度の結果を出せたのは良かったです」
ただ、その口から真っ先に出てくるのは「インターハイの大津戦が…」とか「プレミアリーグの参入戦でも負けちゃって……」といった大事な試合を落とした苦い記憶の数々。その一番の記憶は、全国高校サッカー選手権大会の決勝で星稜高校に延長戦の末、2-4と敗れたことだろう。
「1年間を通して大事な試合で勝てなかったんですよね。あえて悪い言い方をすると、相手を舐めてしまうところがあったんだと思います」
そこで味わった悔しさこそ、前橋育英のこの学年の原動力であり、原点にもなっている。
「それはありました。優勝した高校の選手よりこのあと良い結果を残してサッカーを引退したいということは、終わったあとにもみんなで話していました」
まさにその言葉どおりに、高校を旅立った選手たちは、その後それぞれのステージで大きな成長を見せることになる。
「やっぱり、みんなサッカー好きだし、真面目だから。変なことで諦めたりとかもないし、みんなが1年1年積み重ねて成長していけるようなメンツでした」
いまはプロのステージで同じピッチに立つことも珍しくない。
「J1で戦うこともあるから、うん、そこでは毎回毎回、刺激を受けています。勝っても負けても、やっぱり昔から知っているので、『アイツここ伸びてるなあ』とか感じられるし、刺激を受けられる。そういうことがたくさんありましたね」
今季は浦和レッズへ移籍。そこには小泉と吉田という高校時代の同級生が待っている。「1年1年積み重ねてきた」彼らにとって、この再会は奇縁ではあるものの、奇跡ではあるまい。