Erling Haaland new contract gfxGetty/GOAL

マンチェスター・シティとハーランド、異例の10年契約が持つ意味:財務違反疑惑への自信とレアル・マドリーの打撃

そう、10年間の長期契約だ。これはチェルシー関係者も驚きだろう。マンチェスター・シティがフットボール史上最長の契約を渡したことは、彼らがアーリング・ハーランドに残りのキャリアすべてをエティハド・スタジアムで過ごしてほしいと思っていること、そしてジョゼップ・グアルディオラ監督が去った後もチームを牽引して欲しいという信頼の表れである。

これまで公式戦126試合で111ゴールを奪ってきたハーランドは、「心から誇りに思うし、幸せだよ。決断は簡単だった」とコメント。チキ・ベギリスタインSDは「この長期契約は、我々のコミットメントと、彼のこのクラブに対する愛情を示すものだ。すでに世界最高の選手の1人だが、まだ若く、これからも成長してくれるはずだ。信じられないような伝説を築くだろう」と期待を込めた。

この契約は、マンチェスター・Cが今後も世界のトップランナーであり続けることを示している。その一方で、新たな銀河系軍団を目論んでいたレアル・マドリーなど、獲得を夢見た他クラブにとって大打撃だろう。この長期契約がフットボール界に意味することを紐解いていく。

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    財務違反容疑に対する自信

    この新契約のニュースを見た他クラブの一部ファンは、シティがプレミアリーグから財務違反容疑で告発を受けて裁判が進行中であることを揶揄し、「ハーランドは今後数年間下部リーグで過ごす運命だ」とも冗談を飛ばした。だが、現実はまったく逆だろう。

    シティとハーランドがこれほどの長期契約を結んだということは、審理の結果によって深刻な損害を受けることがないという完全な自信を示している。ハーランドはシティを愛しているかもしれないが、1シーズンでも2部で過ごすことは絶対にないはずだ。ハーランド陣営は、上層部にその保証を求め、その返答に満足したに違いない。

    これは11月にジョゼップ・グアルディオラ監督が契約を結んだ時も同じだった。シティは、プレミアリーグとの法廷闘争に自信を深めている。

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  • Guardiola Haaland 2022-23Getty

    グアルディオラ退任後のシティ

    グアルディオラとの良好な関係は、ハーランド残留の決め手の1つだ。2022年の契約の際には、指揮官が退任する際には退団を求めることができるという条項を結んでいたとも言われている。「彼と一緒に仕事をするのは本当に楽しい。最高の人物というだけでなく、今まで見た中で最も勤勉な人だよ」と本人は指揮官との関係を語った。

    しかし、グアルディオラがハーランドほど長くシティに在籍することはない。指揮官は、2034年には63歳なる。それまで残留することはないはずだ。だからこそ、ハーランドはグアルディオラが去った後でも、シティにとって最重要選手としてあり続けることを示している。

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    プレミアリーグ最多得点記録更新へ

    ハーランドは契約延長の際、プレミアリーグのディフェンダーたちへ「ごめんね。僕はここに残るよ」と告知している。そしてこれは、現在の最多得点記録を持つアラン・シアラーへのメッセージでもあるだろう。

    260ゴールという偉大な記録を残したシアラーだが、14シーズンで平均18ゴールという記録を残した。しかし、ハーランドはたった87試合で79ゴール。1シーズン平均30ゴール以上だ。このペースで行けば、2031年には歴代最多得点記録保持者となる。新記録を打ち立てるのは時間の問題かもしれない。

  • Florentino Perez Kylian MbappeGetty

    レアル・マドリーは新たな銀河系軍団を断念?

    2022年の移籍前にも、レアル・マドリーはシティの最大のライバルだった。選手や父親、代理人をサンティアゴ・ベルナベウに招き、会談を行っている。しかしカリム・ベンゼマが君臨していたこと、キリアン・エンバペの加入が迫っていることから獲得を躊躇していた。

    それでもマドリーは常に魅力的な移籍先であり、ハーランド自身も移籍の可能性に「わからない」と明言を避けていた。だがこの10年契約により、事実上マドリーに獲得のチャンスは殆ど残っていない。

    マドリーは2019年のエデン・アザールとの契約が失敗に終わった後、法外な移籍金を支払うことを避けてきた。ジュード・ベリンガムを除き、近年はフリー獲得がほとんどである。エンバペはもちろん、アントニオ・リュディガーやダビド・アラバもそうであり、トレント・アレクサンダー=アーノルドもそれを狙っている。もしこの方法でハーランドを狙うなら、2034年まで待たなければならない。それは起こりそうにないはずだ。

  • Erling Haaland Kyle WalkerGetty

    シティ再建の中心に

    グアルディオラは最近、昨年夏の移籍市場で選手獲得のチャンスがあったものの、現スカッドを信頼して断ったことを明かしている。しかし現在の不調を見れば、チーム刷新の必要性は明らかだ。すでにそのプロセスは進行中で、カイル・ウォーカーは退団予定。一方でオマル・マーモウシュやアブドゥコディル・フサノフらとは契約間近に迫っている。

    そんな状況で結んだ24歳のハーランドとの契約は、彼が今後長い間チームの支柱であり続けることを示している。

  • FBL-ENG-PR-LIVERPOOL-MAN CITYAFP

    アーセナルやリヴァプールへのメッセージ

    リヴァプールとはすでに大きな差をつけられ、シティは今季のタイトル争いからは脱落しているかもしれない。だが今回の契約は、リヴァプールやアーセナル、チェルシーといったライバルへ強烈なメッセージとなるはずだ。

    確かにビッグクラブでの試合では“消えがち”で、グアルディオラが何よりも重視した試合のコントロールに貢献できないことは以前から指摘されてきた。しかし、シティはそう考えていない。この契約書を見ると、チーム全体で支えれば、彼が数々の栄光に導いてくれると確信しているようだ。

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