9月9日の国際親善試合で日本代表とも対戦するドイツ代表。不調が騒がれる中で迎える今回の一戦は、指揮官の進退にも影響すると見られており、通常のフレンドリーマッチとは異なった試合となるかもしれない。【取材・文=藤丸リオ】
(C)Getty images
(C)Getty images9月連戦後に指揮官交代の可能性
昨年11月のカタール・ワールドカップ(W杯)で2大会連続となるグループステージ敗退に終わって以降、ドイツ代表はさらなる混沌の渦に巻き込まれている。
今年に入って5度の国際親善試合を行ったが、その成績は1勝1分3敗。6月シリーズではウクライナ代表にこそ3-3の引き分けを演じたが、ポーランド代表とコロンビア代表を相手にした2試合では内容も含めて勝利に値するパフォーマンスを残せずに完敗を喫した。
これほどまでに結果が出なければ、もちろん国内メディアやサポーターは黙っていない。来年に迫る自国開催となる欧州選手権2024が近づく中、選手たち以上に指揮官であるハンジ・フリック監督やサッカー協会に対してヘイトが集中。指揮官交代の是非が問われるような状況となっている。
特にカタールW杯以降の戦いでは、さまざまなシステムや配置を試しているものの、手応えが感じられるパフォーマンスを見せることができず。メンバーも毎試合変わる状況で、チームの戦い方が確立できていないことに対する批判が多くなっている。指揮官は来年に向けたトライをしている状況だと説明しているが、結果がついてこないことや内容的な進歩がないことで、試合を重ねるごとに不満が高まっているのが現実だ。
そこで迎える今回の日本代表戦とフランス代表戦の2試合は、進退を懸けた連戦になるとも言われている。ドイツのメディアに聞いても、どちらか一方でも負ければ退任の可能性があるとしており、フリック監督にとっては負けられない試合が続くことになる。
そんな中でケガ人等が出ており、また少しメンバーが変わった今回のドイツ代表。新たなメンバーでどんなパフォーマンスを見せられるのか。日本戦は多くの注目が集まる一戦となりそうだ。
(C)Getty images後任として有力視されるのは?
指揮官交代が囁かれる中、有力候補として最も名前が挙がるのが前バイエルン・ミュンヘン指揮官のユリアン・ナーゲルスマン氏だ。
プロ選手としての実績はほとんどないものの、20歳で現役を引退してから指導者の道を歩んだナーゲルスマン氏は、2016年からトップチームの指揮を執ったホッフェンハイムで、クラブ史上初となるチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得。その後、ライプツィヒでも結果を残すと、2021年からはバイエルンの指揮官に就任した。
ただ、バイエルンではリーグ優勝を飾ったものの、主力選手やクラブ幹部との関係性の悪化などビッグクラブでの難しさをさまざまな意味で実感することに。志半ばの解任以降、現在はフリーとなっている。
実績やフリーである状況を考えれば、一番の選択肢となるが、ドイツサッカー協会との関係性については不透明なところも多い。36歳の若さで代表を指揮できるのか。注目の一人となる。
(C)Getty images現実的ではない候補者たち
次に長らく候補として挙がっているのが、リヴァプールのユルゲン・クロップ監督と現在フリーのジネディーヌ・ジダン氏だ。
ただ、候補に挙がってはいるものの、両者が就任することはなかなか難しいと言っていいだろう。クロップ監督にはすでに水面下で接触したことが取り上げられているが、リヴァプールの状況もあって断ったとも言われており、クラブを辞めてまで就任する可能性は低い。もちろんドイツサイドからすれば、実績等を含めて申し分ない監督であることは間違いない。それでも、このタイミングで指揮官交代を選択するのであれば、チャンスはあまりないはずだ。
また、レアル・マドリーで素晴らしい実績を残したジダン氏も候補には入るが、こちらもそこまで可能性が高いとは言えない。元来、ドイツサッカー協会が監督に指名する人物は同国の指揮官である。来年に迫ったEURO2024を考えて指揮官交代するにあたり、ドイツ人以外の人物が就任する未来は想像できないため、“ドイツ代表のジダン監督”が実現する可能性は極めて低いだろう。
前述したように、指揮官交代となればドイツ人指導者になる可能性が高く、実績があることを考慮すると、かなり該当する人物が限られる状況でもある。そうなると、例えばヨアヒム・レーヴが短期間だけ復帰したり、レジェンドに頼ったりといったこともあるかもしれない。このように極めて難しい状況だからこそ、フリック監督が残ることも大いにあり得るだろう。