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賛否両論のガビ。バルセロナの10代は「チンピラ」か、チャビ二世か?

ガビがチャンピオンズリーグのポルト戦でもらった2枚目のイエローカードは、バカげたものだった。バルセロナは1点リードで、ポルトの選手がガビの横を通り過ぎようとした時、ボールの後ろには10人の選手がいたのだ。だが、ガビは自制できなかった。脇をすり抜けようとする相手選手のシャツをつかんでしまったのだ――相手をスローダウンさせることもできずに。

すでにガビはイエローカードを1枚もらっていたため、退場となった。このバルセロナの10代選手にとって、プロ入りして2度目の退場処分だった。

ガビがそれまでに築いてきた評判に比べると、これは驚くべきことだった。ガビはサッカーファンの間で賛否両論の選手である。当初は中盤でチャビの後継者として注目された、ラ・マシア最新の卒業生の一人であるMFはすっかり変わりつつある。

ガビは現監督ほどテクニックに優れてもいなければ、上品でもない。逆に、バルセロナのサポーターに言わせれば、ガビはチャビに欠けていたすべての動きができる。ボールのないところでの容赦ない暴れん坊は、ボールがある時には決定的なパスを出すことも魔法のような瞬間を生み出すこともできる選手なのだ。それ以外の人々にとっては、ガビは過大評価されている代表格であり、ずるがしこく、危険な場所に向う見ずに突っこんでいく選手である。

どちらが本当のガビなのか、あるいは両方を持ち合わせているのか。チャビ監督監督にとって、ガビはただ、その両方が完璧に混ざった選手なのかもしれない。喉から手が出るほど欲しいMFであり、他のチームからは憎まれる選手なのだ。

  • Gavi 2021Getty Images

    バルサトップチームでの始まり

    この論争は、ガビがバルサに入った当初にはまったくなかったものである。多くのラ・マシア出身選手と同じく、ガビはバルサの暗黒の時代にトップチームに昇格した。リオネル・メッシがパリへの失敗の旅に出た後、当時のロナルド・クーマン監督に呼ばれたのだ。

    当時17歳のガビにとって、それは長い間待ち望んでいたことだった。ガビは、わずか11歳でバルサのアカデミーに入り、実年齢より4歳上のグループで日常的にプレーしていた。自分より前にアカデミーを卒業したアンス・ファティがトップチームにいるのを見て、次は自分だと刺激を受けたようだった。

    そして、ガビは苦悩するチームのレギュラーとなった。2021年10月のインターナショナル・ブレイク前、バルセロナはラ・リーガの9位で、レアル・マドリーより勝ち点で「5」劣っていた。チャンピオンズリーグのグループステージでも勝ち点を1ポイントもとれずに最下位に沈んでいた。当時のクーマン監督はブラウグラナのシーズンで良かったのはガビだけだったと認めていた。

    「あの若さで、彼はどうプレーすればよいか知っていることを示した」

    当時スペイン代表の監督だったルイス・エンリケも同意見だった。エンリケはガビを信頼し、10月6日に行われたネーションズリーグの準決勝で、ガビを先発メンバーに抜擢すると、彼に背番号9を渡し、セルヒオ・ブスケツとコケもいる中盤に配置したのである。ガビは83分間プレーし、スペイン代表は2-1で勝利した。ガビは4日後の決勝でも再び先発し、フランスに敗れたものの74分間プレーした。

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  • Pablo Gavi Spain

    スペインのアイドル

    他の多くのスペインの若手と同じく、ほどなくガビはサッカー界全体から注目されるようになった。チャビ監督やイニエスタを生んだ同じアカデミーから、またしても若きMFで、テクニックに優れた若者が現れたのである。ルイス・エンリケも期待をあおるのに少なからず貢献した。スペイン代表の監督としてガビを史上最年少で代表デビューさせ、試合後、彼のプレーを絶賛したのだ。

    「学校か家の庭でやっているかのようにプレーしていた。これほど素晴らしい才能と性格をもった選手に会えてうれしい」と、2021年10月に語っている。

    それ以後、ガビはほとんどの試合に出ている。バルサの苦悩は続き、結局クーマンはクリスマス前にクビになったが、ガビはチームに残った。2021-22シーズンにクラブと代表で57試合に招集され、44試合に先発した。苦しむバルサの中盤のどこででもプレーし、さらに、台頭してきたペドリとともに中盤のホープとなった。たちまち2人は、バルセロナに新たな成功の時代をもたらす「チャビとイニエスタの再来」と騒がれるようになった。

    翌年の夏までに、ガビはヨーロッパで最も輝かしい才能の持ち主とみなされるようになった。ルイス・エンリケはガビのことを「今まさに爆発している火山」と呼んだ。その最高潮はゴールデン・ボーイ賞の受賞で、2022年11月、エドゥアルド・カマヴィンガ、ジュード・ベリンガム、ジャマル・ムシアラを差し置いて、ガビが受賞したのである。すでに頂点に登りつめたように思われた。

  • Captura TV Gavi Athletic Barcelona 12032023

    限界を押し上げることのできる選手

    だが、ガビは必ずしも世界中から愛されたわけではなかった。ゴールデン・ボーイ賞の他の候補者たちはボール扱いが非常にうまく、ハイライト動画が作られ、商品として扱われたが、ガビは他のところで好まれた。実際、この10代には厄介な傾向のようなものがあり、それが助長されていったのだ。

    ガビはスペイン代表の背番号9に値する選手だったかもしれないが、ゴールを量産するストライカーではなく、攻撃的MFですらなかった。ガビが重宝されたのは、他の部分だ。飛びこんでタックルしたり、相手を倒したり、ボールを奪う意欲は並外れていた。スペイン代表としてのデビュー戦ひとつ取っても、ピッチで最も多くのデュエルを貫徹していた。

    2022年のワールドカップでも、ガビは単独でムシアラやレオン・ゴレツカ、ヨズア・キミッヒを翻弄し、ドイツの中盤を切り裂こうとした。その後のビジャレアル戦では無謀なタックルをいくつも行い、ボールのないところで何度も相手選手を押したり、シャツをつかんだりした。だが、否定的なニュースやメディアへの不満も、とてつもなく効果的であった。バルサは中盤に刺激が必要であり、ガビがそれをもたらしたのだ。

    そしてもちろん、バルサのファンにとって、ガビの衝突や傷、悪行はルールの範囲内のことであった。実際、ガビは自分の限界を押し上げることのできる選手である。アトレティック・クルブ戦で突進を止めるために頭から恐れずにタックルに行ったという事実がある。あるいは、スペインのスーパーカップ決勝でトニ・クロースと容赦ないデュエルを繰り広げたこともある。こうしたことは、イニエスタやチャビはしなかった。

  • Vinicius GaviGetty

    マドリディスタからの批判

    当然のことながらガビを中傷する最大の勢力はレアル・マドリーのファンたちだ。マドリディスタなるもの、バルサの選手を嫌うことにいささかの躊躇もない。それがライバルクラブというものだ。

    だが、ガビは彼らにことさらネタを与えている。2023年1月のクラシコでは、ダニ・セバージョスがガビの髪の毛をひっぱり、そのすぐ後にデュエルで彼を引きずり倒した。そのせいで口論と押し合いが始まった。

    次に両チームが対戦したとき、対立は頂点に達した。ガビはまったくボールと関係ないところで、セバージョスに突進した。残りの試合時間中ずっと飛びかかってタックルをしまくり、イエローカードが何枚も出てもおかしくないような状態だった。だが不可解なことに、ガビは1枚もカードをもらうことなく試合終了となった。

    この試合はレアル・マドリー寄りのメディアには格好の標的となり、彼らはガビを、サッカー選手としてルールに従わない「チンピラ」だと言った。ガビにボール扱いの才能があるというのは過大評価で、ゴールデン・ボーイ賞にふさわしくないと主張したのだ。

    それに対してチャビ監督は、全面的にガビを弁護し、非難について、こう言った。

    「問題はガビがバルサの選手であることだ。他のチームの選手だったら、問題も美徳になっていたかもしれない。彼は将来性豊かで、これからとてつもないキャリアを積んでいくだろう。彼はスペインで最高の選手の一人であり、今のサッカー界で最高のミッドフィルダーの一人だ」

  • Gavi Villarreal Barcelona LaLiga 2023-24Getty Images

    チームに不可欠な存在

    だが、ここ数週間、ガビは変わるよう求められている。バルサに来てから、ガビはほとんどいつも、正統派ではない4-4-2のフォーメーションの左サイドか、インサイド・ウイングとして起用されてきた。しかし今シーズンはジョアン・フェリックスが加入したおかげで、ガビはもっと中央よりも役割を与えられ、イルカイ・ギュンドアンとオリオール・ロメウが後ろに控える攻撃的MFとしてプレーしている。かつては好きなように動きまわっていた暴れん坊が、今や、中央でじっとしていなければならなくなったのだ。

    それでも、指揮官はガビの重要性を強調する。

    「実のところ、今ガビをピッチに投入しないわけにはいかない。ガビはチームに魂を与え、強さや、適切なリズムやリカバリーを与えてくれる。彼の情熱は他の選手に伝播する」

    フレンキー・デ・ヨングやペドリ、ハフィーニャがみな負傷しているブラウグラナには、攻撃を手助けする選手が必要だ。とてつもない才能を持つ「チンピラ」は、それを与えてくれるかもしれない。

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