Four way split Nagelsmann, Allegri, Hasenhuttl and TuchelGetty Images

岐路に立たされるチェルシー。“執行猶予付き”のランパード監督と注目すべき7人の指揮官たち

チェルシーのオーナー、ロマン・アブラモビッチは重要な決断を下さなくてはならない。フランク・ランパードにこだわるか、新しい監督を見つけるか――。

元イングランド代表MFは確かにクラブのレジェンドかもしれないが、8試合中5試合を落としたとあっては、ブルーズのボスは窮地に追いやられたといっても過言ではない。もしアブラモビッチがランパードの首を切る決断をしたとしたら、その代役を担うのは誰だろうか?

かつて監督リストの最上位にいたのは、マウリシオ・ポチェッティーノだった。しかし、この元トッテナム監督は昨年12月末からPSGの指揮官に就任してしまった。次の夏までトップクラスの監督に空きがない状況を考慮すれば、その場しのぎの解決策がまだ除外されていない。

もしランパードが解任されることになれば次期監督は誰になるだろうか。有力候補を見ていってみよう。

  • Thomas Tuchel Montpellier PSG Ligue 1 05122020Getty

    トーマス・トゥヘル:熱意も空きもある

    トゥヘルはチェルシーでの仕事に強い興味があるとみられており、過去には就任するという噂も流れた。

    実際、ブルーズはボルシア・ドルトムントを指揮していたときに調査をしていたことがあった。しかし結果的に判断を見送っている。

    だが、チェルシーはいまだにトゥヘルの代理人と近い関係にあり、トゥヘルが同国出身のティモ・ヴェルナーとカイ・ハヴェルツの実力を最大限引き出すことができると考えているという。また、トゥヘルはクリスチャン・プリシッチをジグナル・イドゥナ・パルク(ドルトムントの本拠地)で指揮したこともある。

    最近PSGを解任されたという事実もあり、トゥヘルはすぐにでも後を継ぐことができるかもしれない。

    しかし、彼の気質とPSGのスポーツダイレクターであるレオナルドとの不仲が、突然かつ痛烈な解任劇に大きな影響を及ぼしていることも忘れてはならない。

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  • Julian Nagelsmann RB Leipzig 2019-20Getty Images

    ユリアン・ナーゲルスマン:ヴェルナー関係で非凡な才能

    RBライプツィヒのユリアン・ナーゲルスマン監督はまだ33歳。だがすでにヨーロッパでもトップクラスの才能を持つ監督と評価されている。

    強い熱意と明確なフットボール哲学を持ち合わせているが、ナーゲルスマンはどちらかというと経験が浅い方だ。監督キャリアで優勝経験がないのも引っかかる。

    その上、今シーズンが終わるまではライプツィヒを離れることを考えていないだろう。クラブは今季、ブンデスリーガのタイトルをバイエルン・ミュンヘンと争っているのだ。

    しかし、思い出しておくべきなのは、チェルシーの悩めるストライカー、ヴェルナーがヨーロッパで一流のアタッカーに成長できたのはナーゲルスマンの功績によるところが大きいことだ。

    「元ボス以外にこのドイツ代表の実力を引き出せる人はいない」とチェルシーが思っていてもおかしくはない。

  • Max AllegriGetty

    マッシミリアーノ・アッレグリ:実績豊富な優勝請負人

    マッシミリアーノ・アッレグリはユヴェントスとの関係を2019年に解消して以来現場を離れている。しかしこのイタリア人ほど高い実績を持っている人は候補の中にいないのではないだろうか。

    ミランも指揮したアッレグリだが、ユヴェントスでセリエAのタイトルを5年連続で獲得し、チャンピオンズリーグ決勝に2回も導いた。

    さらに、チェルシーは長らくアッレグリに関心を持ち続けてきた。アッレグリはプレミアリーグで働きたい思いを隠しておらず、ここ数年は英語のレッスンを受けている。

  • Ralph Hasenhuttl Southampton 2019-20Getty Images

    ラルフ・ハーゼンヒュットル:やり手

    ラルフ・ハーゼンヒュットルのチームはシーズンを半分消化した時点でチェルシーと同勝ち点で並んでいる。しかも、消化試合がチェルシーより1試合少ないことは書き加えておくべきだ。

    彼はプレミアリーグ界隈から称賛を浴びるようなスタイルを築き上げた。これは限られた人的資源の中で働く監督にとって大きな功績だろう。

    サウサンプトンは今夏キープレーヤーを何人か失う可能性がある。例えばストライカーとして活躍するダニー・イングスは退団するかもしれない。そして、それはチェルシーにとってハーゼンヒュットルを引き抜く絶好の機会になりうるのではないか。

    もちろんその場合、セインツは監督の穴を埋めるような要望をするはずだ。たとえヨーロッパの5大リーグでメジャータイトルを獲得したことがない監督だったとしてもだ。

    しかしチェルシーは、支払う価値のある対価だと感じるはず。ハーゼンヒュットルはブンデスリーガの様々な階層でほぼ15年に渡る監督経験がある。ライプツィヒではティモ・ヴェルナーを指導した経験もあり、チェルシーで悩めるドイツ人ストライカーの復活にも一役買うかもしれない。

  • 2019-07-15-Andriy-Shevchenko(C)Getty images

    アンドリー・シェフチェンコ:可能性は低いがオーナーの友人

    チェルシーでストライカーを務めたアンドリー・シェフチェンコは、今回の監督人事ではあまり現実的な選択肢ではない。だがウクライナ代表での成功とロマン・アブラモビッチとの関係を考えると除外しにくい候補でもある。

    シェフチェンコが長い時間を過ごしたミランを退団し、2006年にチェルシーへやってくるきっかけとなったのは、他でもないアブラモビッチの説得があったからだ。

    さらに、シェフチェンコはそろそろクラブ経営に関わりたいと思っている。ただ、それは今年のEUROでウクライナを率いた後になるかもしれないが…。

  • Ralf RangnickDepo Photos

    ラルフ・ラングニック:インフルエンサー

    チェルシーの後任候補の中で、ラルフ・ラングニック以上に監督界隈からのリスペクトを受けている人物はいないだろう。

    リヴァプールのユルゲン・クロップ監督はこのドイツ人のメソッドに刺激を受けており、ナーゲルスマン、ハーゼンヒュットル、そしてトゥヘルもラングニックのアイデアに影響を受けている。

    ラングニックはライプツィヒとザルツブルクでレッドブルのプロジェクトの中心人物であった。監督としてもダイレクターとしても活動していたのだ。

    現時点では、アッレグリのようにラングニックはほぼ2年間現場から遠ざかっており、チェルシーの後任として最有力候補かどうかはいまひとつはっきりしない。しかし、スカウティング、リクルーティング、若手育成のどれを取っても素晴らしい実績があるため、考慮に入れられていたとしても驚きではない。

  • Brendan Rodgers Leicester City 2019-20Getty Images

    ブレンダン・ロジャース:放蕩息子

    ブレンダン・ロジャースはチェルシーのアカデミーの指揮を経験し、自身がイングランドで最高レベルの監督であることを証明した。その後スウォンジー、リヴァプール、セルティックと渡り歩いて、今では優勝争いに絡むレスター・シティの監督だ。

    実際、指揮を取るフォクシーズはファンタスティックだ。火曜日にホームで行われたナイトゲームでは、キングパワー・スタジアムでチェルシーを2-0と叩きのめし、風前の灯のランパードにとどめを刺した。

    しかし、ロジャースが後任監督の最有力候補であるとしても、スタンフォード・ブリッジでは広くリスペクトを受けているとは言いがたい。クラブの影響力ある立場の人たちを苛立たせるようなコメントを残した過去があるのだ。

    それならば、火曜日に関係を修復しようとしたことは大きな意味があることかもしれない。試合前には「ユースの監督をやっていた頃、チェルシーは素晴らしいクラブだった。彼らをとてもリスペクトしているんだ」と語っていた。

    しかし、ロジャースとレスターの契約は4年半残っている。チェルシーにとって違約金は大変高額なものになるだろう。

  • Frank Lampard Chelsea 2021Getty Images

    フランク・ランパード:執行猶予?

    チェルシーがランパードを我慢強く見守っていくという線は薄くなりつつあると思われる。

    だが、ランパードの主張はこうだ。ユルゲン・クロップがリヴァプールをイングランドフットボールの頂点に返り咲かせた、そのときに許されたくらいの時間が与えられるべきだ、と。

    ロッカールームでの選手からの支持は厚いままだということは好材料だろう。だが、ランパード自身の権威は敗戦のために薄らいでおり、チームへの批判は増すばかりだ。

    チェルシーの熱狂的なファンはランパードを支持し続けており、次のホームゲームで何らかの意思表示を行うことを計画しているだろう。それは、アブラモビッチにクラブのレジェンドを諦めないでほしいと訴えるためだ。

    それがランパードをこの地位に留まらせるのに十分かは分からない。特にこれだけの後任候補がいるのだから…。