昨シーズン、マンチェスター・シティがマンチェスター・ユナイテッドから逃げ切り、2季ぶりのプレミアリーグ優勝を果たした。一方で、リヴァプールとチェルシーはレスターを引きずり下ろしてチャンピオンズリーグ出場権を獲得している。そんな昨シーズンはどの選手がどれだけのインパクトを残したか記憶にあるだろうか。
2021-22シーズンの開幕を直前に控えたいま、昨季のプレミアリーグベストイレブンを振り返っていこう。
Getty Images昨シーズン、マンチェスター・シティがマンチェスター・ユナイテッドから逃げ切り、2季ぶりのプレミアリーグ優勝を果たした。一方で、リヴァプールとチェルシーはレスターを引きずり下ろしてチャンピオンズリーグ出場権を獲得している。そんな昨シーズンはどの選手がどれだけのインパクトを残したか記憶にあるだろうか。
2021-22シーズンの開幕を直前に控えたいま、昨季のプレミアリーグベストイレブンを振り返っていこう。
Getty Images昨季のマルティネスはブラッド・フリーデルの記録に並ぶ16試合のクリーンシートを達成したのだ。失点の多かったディーン・スミスのチームがトップクラスに食い込むのに大いに貢献した。
マルティネスはプレミアリーグでシュートセーブ数3位(15本)に位置し、防いだゴール数では2位(9.71点)に輝いた。これは『WyScout』による統計値で、ゴールキーパーのセーブ数を相手のシュートにより期待されるゴール数(xG)から割り出したものだ。
だが、マルティネスのもたらした影響はシュートストップだけにとどまらない。他のキーパーが弾いたりパンチングするようなシュートやクロスをキャッチできるだけの技術を持っており、それは他の追随を許さない。この技術のおかげで、アストン・ヴィラの組織は完璧に再構成できた。
マルティネスの吸い付くようなキャッチングによって、アストン・ヴィラはピッチ上で切り替え、形勢を立て直すことができる。加えて今夏はコパ・アメリカでも見事な活躍を見せ、悲願の優勝の立役者となった。
Getty Imagesマンチェスター・シティのシーズンを象徴する選手といえばカンセロ以外にいないだろう。カンセロはインテリジェンスが高く、ユーティリティ性も備える。2020-21シーズンを通して左か右のサイドバックとしてプレーしたが、それは便宜上のポジションだ。実際のカンセロはピッチ上のどこにでも顔を出した。
偽サイドバックとしての影響力は衝撃的で、時折ケヴィン・デ・ブライネのように右のハーフスペースに進んでいく動きを見せた。
シティのリーグ優勝において重要だったのは、戦術が予想できないことだった。これはサイドバックをローテーションさせながら挑んだペップ・グアルディオラによる策略だ。選手構成を選べばどんなポジションにも展開できた。3バック、両サイドがオーバーラップする戦術、中盤に二人増やす、一人ゲームメーカーを増やす、など様々な配置を繰り出してきた。
カンセロはこれらの戦術すべてでプレーできるクラブ唯一の選手。しかもどちらのサイドでもプレーできるのだ。
Getty Imagesフォファナはここまで目覚ましい活躍を続けてきた。
ブレンダン・ロジャーズはデビューシーズンのフォファナに、ここまで頼ることができるとは考えてもみなかっただろう。だが、アグレッシブなスタイルと予測技術によって、フォファナはすでにプレミアリーグで最も称賛を受けるセンターバックの一人となった。
事実、フォファナはインターセプト数でリーグ4位(1試合平均2.2回)につけ、守備的MFが独占する項目に堂々ランクイン。これはフォファナのプレースタイルを物語る数値だ。フォファナは最終ラインから飛び出して敵のプレーを断ち切る動きを好む。これは3バックで特に功を奏する、注目に値する特徴だ。彼がプレシーズンに負った大ケガにより、前半戦を欠場するというのはレスターにとって大きな痛手となるだろう。
Getty Images昨夏プレミアリーグに新たに参戦した外国籍選手は、ほとんどがイングランドで難しいシーズンを送ってきた。昨年この国はかなりの期間をロックダウンの中で過ごしてきたのだから、それは理解できることだ。
だからこそ顕著に目立ったのは、ルベン・ディアスがマンチェスター・シティで岩のように堅い守備を見せたことだ。
ディアスはシティのフィールドプレイヤーの中で最多のリーグ戦先発出場数(32試合)を記録した。ディアスのパワーと激しい運動量が買われた結果アイメリク・ラポルテは試合に出られなくなったが、それだけではなく、ジョン・ストーンズのパフォーマンスを向上させるに至った。
ヴァンサン・コンパニ不在により1年間多大な影響を受けたシティだったが、ついに今後10年間チームを担えるディフェンスリーダーを発見したのだった。
Getty Images間違いなく昨シーズンのマンチェスター・ユナイテッドにおいて最もコンスタントに活躍した選手。ショーは見事に自身のポテンシャルを発揮してみせた。オーレ・グンナー・スールシャールが彼に成長を求めることがあるとすれば、ラストパスの精度だけだろう。
この1年で守備のポジショニングが改善され、ずさんなミスがなくなった。彼に残されていることは、自身のプレーに創造性を加えることだけだ。今夏のEURO2020はイングランド代表としても堅実なプレーを見せた。
Getty Images人は最近の物事の印象に左右されがちなので、ギュンドアンは記憶から忘れ去られ、ベストイレブンに入れなかったかもしれない。だが、12月と1月に重要な役割を果たしたことは決して忘れてはいけない。マンチェスター・シティにとってこの2か月が調子を上向かせるのに重要だったのだから。
冬季の12試合で11ゴールを挙げたギュンドアンは、シティの中盤で高度な役割を担い、チーム再生の触媒として機能した。ギュンドアンが舵を取ったあの期間がなければ、グアルディオラが3度目のプレミアリーグ優勝を果たすこともなかっただろう。
だが、このドイツ代表がチームを首位に押し上げた原因は得点力ではなく、彼のパス能力の高さと、目立たないながら確実に放っていた中盤での存在感によるものだ。
グアルディオラはパンデミックがフットボール界に与えた変化に誰よりも速く対応した。疲労やプレス強度の低下に対抗するためゆっくりとしたポゼッションサッカーを推し進めたのだ。チームのペースを作れるギュンドアンは、この変化においてなくてはならない存在だった。
Getty Images昨季のウェスト・ハムの素晴らしい出来は、どのチームよりも評価されるべきものだろう。そして、ソーチェクをおいてほかにデイヴィッド・モイーズのパワフルなカウンターサッカーを表現できる選手はいただろうか?
ソーチェクとデクラン・ライスの二人は驚くほど器用に中盤に鎮座し、ハマーズはプレッシャーを受けても対応できるようにした。ソーチェクはライスに比べてタックル、ブロック、クリアの数が多く、空中のデュエル数でもリーグトップ(450回)を数えた。
ソーチェクは攻撃でも危険な存在感を放ち、10ゴールを記録。MFの中ではブルーノ・フェルナンデスとギュンドアンに次ぐ3位であった。
ウェスト・ハムは自陣深くにこもり、実力に勝る相手を自陣のファイナルサードに引き寄せた。そしてセットプレーでゴールを奪取。ソーチェクはこのプランのすべてのフェーズにおいて他の追随を許さない力を発揮していた。
Gettyスタッツだけを見れば、フェルナンデスの18ゴール11アシストという記録は、最高のプレミアリーグ凱旋だったと言える。だが、このポルトガル人が過大評価されていると感じる理由は、このうち9ゴールがPKによるものだということだ。
だが、フェルナンデスは得点やアシストだけを記録したわけではない。スールシャール監督の個性的な戦術の中で、フェルナンデスこそがチームをピッチでまとめあげ、チャンスを作ってきたのだ。
『WyScout』のデータによると、フェルナンデスはリーグ2位につける36回のチャンスを創出し、「スマートパス」(相手のディフェンスラインを破る創造的で有効なパス)の数は91を数える。さらに「ディープ・コンプリーション」(相手ゴールから20m以内を狙った、クロス以外のパス)は117、さらに「セカンド・アシスト」(アシストの一つ前のパス)は7を記録した。
言い換えれば、フェルナンデスは最高の「ライン・ブレイカー」であり、リーグ屈指のクリエイティブなパサーだということになる。常に敵をパスで貫き、ユナイテッドを前進させてきた。
Getty Images後半の12試合をケガで欠場しなければ、グリーリッシュは年間最優秀選手の候補に入っていたかもしれない。だが、シーズンのほぼ3分の1を棒に振ったことで、代わりにベストイレブンに加えられることになった。
アストン・ヴィラのキャプテンは、キーパス(37本)と被ファウル数(108回)でリーグトップに立っている。だが、彼の重要性を議論するのにスタッツはあまり必要ではない。グリーリッシュはボールを保持して難なく動き回り、たくさんのディフェンダーを引き連れながらチームメイトに広いスペースを作り上げる。
欠場した試合数を考えれば、彼の創造性は驚くべきものだ。もしシーズン通して活動できていたら、アストン・ヴィラはチェルシーを押しのけてチャンピオンズリーグ参戦可能な4位につけていたかもしれない。
イングランド代表としても存在感を発揮したグリーリッシュは新シーズン、マンチェスター・シティに活動の場を移した。ヴィラの象徴であった選手がグアルディオラの下でどのようなプレーを見せるかはファンの誰もが興味を抱いている。
Getty Imagesソン・フンミンも最近の印象に悩まされる選手だ。だが、スパーズのサポーターが失敗だったと認識している昨シーズンにおいて、17ゴール10アシストを積み重ね、非常にポジティブなインパクトを残したことは見逃してはいけない。
おそらく、トッテナムのファンにとってもっとも印象的だったのは、マンチェスター・ユナイテッドに1-3で負けた後のソンの感情的なインタビューだったかもしれない。ジョゼ・モウリーニョの毒気をかいくぐりスパーズをヨーロッパのコンペティションに連れて行こうとして、ソンがどれほど努力したかを示す瞬間だった。
結局、ソンは調子を落とし、その後ガレス・ベイルがトッテナムの中心を担ったことでチームはヨーロッパ・カンファレンス・リーグに滑り込むことができた。
だが、シーズン序盤、9試合で10得点を記録したほどの影響力を忘れてはならない。もちろん、2020-21シーズン前半に見せた、ハリー・ケインとの素晴らしいパートナー関係もだ。
Getty Imagesケインの自己改善能力はまるでロナウドのようだ。この28歳は自分のことを9番というより10番の選手だと思っているようだが、ジョゼ・モウリーニョの指揮下で、ついにこの主張を証明する自由を与えられたのだった。
その結果は実に驚くべきものだった。ケインが併せ持つチャンスメイカーとフィニッシャーの能力を表現する新しい単語が必要であることを我々は理解した。「偽9番」や、「9.5番」ではなく、「19番」つまり9番と10番の両方の役割を融合させたようなものだ。
ケインは今シーズン23ゴールを挙げ、ゴールデンブートを獲得。さらに14アシストを記録し、アシストランクでもトップに立っている。彼の今夏の行く末には多くの視線が注がれているところだ。