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プレミアリーグを壊し、マン・Cを初のCL制覇へ。ハーランドが2023年のバロンドールを獲得すべき理由

リオネル・メッシよ、バロンドールを独占した日々は終わった! 新たな王があなたの栄冠を手にする準備が整った。彼の名はアーリング・ハーランド、昨シーズンはマンチェスター・シティで重要なクラブトロフィーを総なめにしながら、53試合で52ゴールを挙げた。

ハーランドのゴールへの飽くなき渇望を原動力に、シティは長くリードしてきたアーセナルを追い詰め、プレミアリーグ3連覇を達成。FAカップでも宿敵マンチェスター・ユナイテッドとの決勝戦を制し、優勝に導いた。

そして最も重要なことは、シティが最も渇望し、ノルウェー人の加入までは達成不可能と思われていたチャンピオンズリーグ制覇を成し遂げたことである。

このような実績があれば、なぜ今年のバロンドールの投票が必要なのか不思議なくらいだ。サッカー界で最も名誉ある個人賞の座をハーランドに譲る者はいない理由を記していく。

  • Erling Haaland Manchester City YogaGetty

    スローダウンすることなく…

    昨年イングランドにやってきたハーランドは、以前在籍していたレッドブル・ザルツブルクではリーグ戦16試合で17ゴール、ボルシア・ドルトムントではブンデスリーガ67試合に出場して62ゴールを記録した。しかし、世界で最もタフなリーグで、これほどの得点率を維持できるとは誰も予想していなかった。

    5,200万ポンドでシティと契約したハーランドは、開幕5試合で連続ハットトリックを含む9ゴールを挙げ、すぐに疑惑の目を覆った。イングランドへのステップアップに遅れをとるどころか、彼はスピードアップし、それまでのどのシーズンよりも多くのゴールを決め、週を追うごとに新記録を更新していった。

    10月までに、ハーランドはプレミアリーグで3回のハットトリックをわずか8試合で達成。これまでの記録保持者はマイケル・オーウェンで、リヴァプールでの達成には48試合を要したというのに…。2月末までには、彼はリーグ戦で27ゴールを決め、セルヒオ・アグエロが持つクラブのプレミアリーグのシーズン最多得点記録を更新した。

    また、アラン・シアラーとアンディ・コールが28年間保持していたプレミアリーグでの1シーズン34ゴールという記録も塗り替えた。彼は、35試合(先発は32試合)に出場し、プレミアリーグで36得点を挙げた。平均77分間に1ゴールだった。

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  • Haaland Grealish 2022-23Getty

    チームメイトとグアルディオラが彼に適応

    前シーズンはほとんどストライカーなしでプレーしていたシティに適応するには時間がかかるだろうとも予想されていた。また、ペップ・グアルディオラの厳しい要求にハーランドがどう適応するかも疑問視されていた。何しろグアルディオラは、ハーランドが最も崇拝していたズラタン・イブラヒモヴィッチと悲惨な関係を築いていたのだから。

    しかし、その考えはすぐに的外れであることが露呈した。ハーランドが新しいチームメイトに順応するどころか、チームメイトが彼に順応したのだ。そして、グアルディオラがこのノルウェー人選手の能力を最大限に引き出すために、夏に新たな戦術プランを練っていたことはすぐに明らかになった。

    ジャック・グリーリッシュは個人プレーに走る傾向を抑えることを余儀なくされ、前シーズンのチーム内得点王だったケヴィン・デ・ブライネは、何よりもまずハーランドに仕えることを奨励された。彼はそれを快諾し、ストライカーに13アシストを提供した。

    グアルディオラのハーランドを最大限に生かそうという意欲は、攻撃的な選手たちだけにとどまらなかった。ジョアン・カンセロや一時はカイル・ウォーカーとの関係を犠牲にしてまで、冒険的なサイドバックの概念を取り払ったのだ。その代わりに、ナタン・アケ、マヌエル・アカンジ、ジョン・ストーンズといった元来センターバックをサイドバックに起用し、ストーンズにいたっては攻撃的なミッドフィルダーへと変貌させた。

    グアルディオラはハーランドに合わせるために、それまでのゲームプランを実質的に一新したのだ。そして、それは見事に功を奏した。

  • Erling Haaland Premier League trophy Manchester City 2022-23Getty

    シティを歴史的チームに

    ハーランドが加入したとき、シティはすでに偉大なチームであり、過去5回のプレミアリーグのうち4回優勝していたのは事実だ。しかし、このノルウェー人FWは、シティをさらに手強いチームにした。

    ボックス内での彼の圧倒的な存在感は、対戦相手が以前のように90分間、シティに対してただ引いて守ることができなくなったことを意味する。また、彼のスピードは、他クラブが高い位置でディフェンスラインを敷き、ハイプレスをかけようとするのを阻止した。

    シティはこれまでプレミアリーグで3連覇を達成したことはなかったが、ハーランドはその偉業に貢献した。2001年と2009年のマンチェスター・ユナイテッドに次いで3チーム目の快挙である。8月から5月上旬までタイトル争いをリードしていたアーセナルを、ハーランド抜きで追い抜くことができただろうか? それは疑わしい。

    ハーランドは、チャンピオンズリーグ制覇というシティの究極の目標を達成するためのラストピースでもあった。グアルディオラはバルセロナの監督に就任してからの3年間に2度、ヨーロッパの頂点に立っていたが、それ以来、その賞は彼の手から逃れ続けていた。バイエルンで3度、シティで1度、準決勝に進んだが、そのたびに優勝を逃していた。

    ハーランドがチームに加わったことで、彼はついに障壁を乗り越え、ヨーロッパの貴族バイエルンとレアル・マドリーを見事にノックアウトし、最終的にはイスタンブールでの決勝で頑強なインテルに勝利した。トルコでの勝利により、ファンが聞き飽きた1999年のマンチェスター・ユナイテッドの偉業に倣い、イングランド・サッカー界で2チーム目となる3冠を達成することに。それはすべてハーランドのおかげなのだ。

  • Lionel Messi PSG 2022-23Getty Images

    メッシより完璧なシーズン

    ほぼ完璧なシーズンを送ったとはいえ、ハーランドは今年のバロンドールをめぐって手強い相手と対峙している。7度の受賞歴を誇るメッシが史上最高の選手の一人であることに異論を挟む者はいない。そして昨シーズン、メッシはついにワールドカップを手にし、アルゼンチンの勝利に貢献した。

    しかし、カタールでの英雄的活躍はさておき、昨シーズンのメッシの活躍は他に何があっただろうか? 彼の所属するパリ・サンジェルマンは、リーグ・アンのタイトル争いではもたつき、クープ・ドゥ・フランスではベスト16で敗退した。そして、メッシがパリに招聘された理由であるチャンピオンズリーグでまたしても失敗した。

    PSGはグループリーグ首位通過を逃し、バイエルンとベスト16で対戦することに。メッシはバイエルンとの2試合で存在感を失っていたが、それは前シーズン、同じ舞台でレアル・マドリーに敗れた時と同じであった。

    チャンピオンズリーグ敗退でメッシのシーズンは事実上終わりを告げ、PSGでの最後の数カ月は悪夢となった。サウジアラビアでの商業活動のために練習を欠席し、クラブのファンからはブーイングを浴び、ナセル・アル・ケライフィ会長からは中傷された。

    メッシは7月に『ムンド・デポルティーボ』で「PSGでの2年間は幸せではなかった。楽しめなかったし、家庭生活にも影響があった」と認め、ネイマールはさらに率直に、メッシとのフランスでの生活について「僕たちは地獄のような日々を過ごした」と明かした。

  • Erling Haaland Manchester City 2023-24Getty

    メッシは過去、ハーランドは現在と未来に生きる

    メッシは間違いなくワールドカップのベストプレーヤーであり、ゴールデンボールを獲得するなど、相応の報いを受けた。また、2月にはカタールでの活躍が評価され、FIFA最優秀選手賞も受賞した。このアルゼンチン人は、9か月前に母国を栄光へと導いたことで、すでに十分な栄冠を手にしているのだ。

    10月のパリでのバロンドールの授賞式はすでにワールドカップから約1年が経過している頃。それ以来、彼はPSGを追われ、現在はMLSのインテル・マイアミで実質的なキャリアを終えている。彼は新しいチームをリーグスカップの栄光へと導き、毎週セレブリティやスターに酔いしれるファンたちに見守られながら、素晴らしい時間を過ごしている。しかし、彼はもはやトップレベルでプレーしているわけではなく、チームメイトも30代半ばを過ぎている。

    一方、ハーランドは世界最高のチーム、世界最高のリーグ、世界最高の監督の下でプレーしている。新シーズンの開幕から快調な滑り出しを見せ、開幕から4試合で6ゴール、そのうちのひとつが、前回出場したフラム戦でのハットトリックである。また、UEFA年間最優秀選手とPFA年間最優秀選手にも選ばれたばかりだ。

    正直なところ、メッシはサッカー界の過去の人である。引退を目前に控え、最後のワールドツアーを楽しんでいる。対照的に、ハーランドはサッカーの現在であり、未来である。

  • Champions League final Man CityGetty

    これ以上何ができるのか?

    メッシがハーランドを上回っているのはワールドカップだけだが、ノルウェー人はサッカー大国で育たなかったという不運のせいで、この大会には出場できない。実際、ノルウェーではサッカーはスキーやアイスホッケーに次ぐ人気スポーツですらない。

    ノルウェーは1998年以来ワールドカップの出場権を獲得しておらず、ライバルが出場しなかった大会での活躍を理由にメッシにバロンドールを与えるのは不公平極まりない。2人を比較できるのはチャンピオンズリーグだ。

    かつてはメッシの独壇場だった。メッシはバルサで4度の欧州制覇を成し遂げ、121ゴールでクリスティアーノ・ロナウドに次ぐ歴代2位の数字を残している。

    しかし、今はハーランドの領分である。ノルウェー人の彼は7歳の頃からこの大会に魅了され、携帯電話の着信音はこの大会の音楽だ。ザルツブルグでの初陣では、わずか6試合の出場にもかかわらず8得点を挙げ、昨シーズンは12ゴールで得点王に輝いた。

    RBライプツィヒ戦では、11年ぶりにノックアウトマッチで5得点を挙げた。グアルディオラが後半早々に彼を交代させなければ、ハーランドはアルゼンチン人の記録を更新していたかもしれない。ハーランドが同コンペティションで歴史を作っていた同じ月、メッシはバイエルン戦で足を引きずっていた。

    シティは次のラウンドでバイエルンと対戦し、ハーランドは2試合でゴールを決めた。準決勝のレアル・マドリー戦や決勝のインテル戦ではネットを揺らすことはできなかったが、彼の存在と脅威がピッチの他のエリアで相手を脅かし、シティはトロフィーを手にした。

    メッシが最後にチャンピオンズリーグを制したのは、28歳になる直前の2015年だった。ハーランドは、アルゼンチン人がかつて「あの美しいカップ」と表現したものを、彼のキャリアが終わるまでにあと数回掲げることになるのだろう。

    メッシが世界のサッカー界に君臨する姿は美しかったが、彼の時代は終わりを告げ、私たちは今、アーリング・ハーランドの時代に生きている。その記念として、ハーランドにバロンドールを贈るのが一番だろう。