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エマニュエル・エメガ:チェルシーやニューカッスル関心の“New オシムヘン”とは?【Hidden Gems FC パート1】

『GOAL』がお送りする新コーナー、「Hidden Gems FC」。かつてレスターで一時代を席巻したエンゴロ・カンテやリヤド・アマフレズのように、キャリア初期はあまり注目が集まっていなかったものの、今や世界最高レベルでの活躍が期待できるポテンシャルを秘めた各国リーグの選手にスポットライトを当てる。

そして「Hidden Gems FC」第1弾は、RCストラスブールで躍動する22歳FWエマニュエル・エメガだ。

今季のリーグ・アン26試合で14ゴール3アシスト、得点ランキングで4位につけるストライカーだが、これまでの歩みは決して順風満帆ではなかった。スパルタ・ロッテルダムでのデビュー後は、ベルギーやオーストリアでもなかなか芽が出ず。それでも2023年に居を移したアルザス地方で自分の居場所を見つけ、チームをチャンピオンズリーグ出場に導こうとしている。ようやく飛躍の準備が整ったのだ。

今回『GOAL』は、今から知っておくべき注目のオランダ代表ストライカーのすべてを紹介する。

  • すべての始まり

    2003年2月3日、デン・ハーグ(オランダ)で双子の兄弟として生まれ、犯罪と貧困が蔓延するシルトゥルス地区で育ったエメガ。それでも彼の才能は早くから片鱗を見せており、11歳の時にはスパルタ・ロッテルダムにスカウトされた。しかし、父親のいない環境で育ったこともあって、元コーチのポール・シモニスからは「問題児」と評価されるなど、当初は問題行動の多い選手であった。

    それでもこのシモニスとの出会いが、エメガ本人も語るように、1人のフットボーラーとして、そして人間として成長する上で大きな意味を持ったという。ロッテルダムの環境とシモニスの適切な指導によって急激に成長を遂げ、17歳でトップチームデビュー。デビュー戦は名門アヤックスとの大一番だった。さらに続くフィテッセ戦でキャリア初ゴールを奪った。彼は最終的に、公式戦39試合で3ゴールをマークしている。

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    転機

    そしてさらなる成長機会を求め、2022年1月にはロイヤル・アントワープへの完全移籍を決断した。しかし、5年契約を結んだ彼の決断はうまくいかず。半年間で1試合の途中出場のみにとどまると、その夏には選手・クラブ双方が契約解除を決断。オーストリアのシュトルム・グラーツへと渡ることになる。

    それでも、このシュトルム・グラーツへの移籍が転機に。公式戦36試合で10ゴール5アシストと輝きを放つと、欧州5大リーグからの注目を集めることに。そして2023年7月、1300万ユーロとされる移籍金でストラスブールへ加入した。そしてフランスの地では、特に前述の通り今季はリーグ・アン最高のストライカーの1人として大活躍。キャリアで最高のシーズンを送っている。

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    ストラスブールの躍進

    今季のストラスブールは、忘れられないシーズンを送っている。エメガをはじめ、アンドレイ・サントス(21歳)やディラン・バクワ(22歳)、ディエゴ・モレイラ(20歳)、ゲラ・ドゥエ(22歳)、ヴァレンティン・バルコ(20歳)といった若き才能に溢れている。イングランド出身の指揮官リアム・ロシニアーも見事な手腕を発揮し、チャンピオンズリーグ出場権を争えるチームとなった(ロシニアーはフランスプロサッカー選手協会の年間最優秀監督候補にもノミネートされている)。

    若手選手が躍動するチームの中で、やはり最も目立つのはエメガだ。ロシニアーの信頼に応え、毎試合のように最前線で奮闘。仮にストラスブールが来季の欧州カップ戦出場権を掴んだとしたら、それはエメガの活躍なしにはあり得なかっただろう。

  • “New オシムヘン”?

    エメガは、ストライカーとして独自の特性を備えています。プロフィール的にはヴィクター・オシメンに似ています。細身の体格ながら身体的に強く、並外れたワークレートを持ち、ゴール前でのポジション取りが優れてエメガの特徴は、ヴィクター・オシムヘンに近いと言っていいだろう。細身ながら身体的な強さを持ち、強烈な運動量とボックス内でのポジション取りに優れている。また状況判断能力も高く、決して利己的なアタッカーではないことも重要だ。これらの強みと自信が合わさったことが今季の結果につながっている。一方で、改善の余地もまだまだある。彼の場合はチャンスの数とゴール数が釣り合っていないこと。決定力には課題を残しているのも確かだ。 また、そのキャラクターも彼を注目すべき1つの理由となっている。見事なループシュートを沈めた1月のマルセイユ戦(1-1)、エメガは対峙したレオナルド・バレルディと何度も衝突した。さらに試合後、『DAZN France』で「バレルディは僕についてこれないから、何度も話しかけたり腕を掴んできたりしたんだろう。小さい行動だね。あれはフットボールじゃない。普段通りにプレーしろよってね」と語った。このことから、彼のキャラクターと自信が伺えるだろう。

  • ステップアップの可能性

    エメガの個人的な目標は明確、オランダ代表でのプレーを熱望している。まだ招集を受けていないことに悔しさを感じていると告白しているが、直近数カ月のパフォーマンスは確かに説得力あるものだった。

    一方でロナルド・クーマン監督は、まだ招集の理由を見いだせていないという。そのため、しばらくはアンダー世代でチャンスを伺うことになりそうだ。今夏に開催されるU-21 EUROが彼にとって勝負の場となりそうだ。

    また、夏の移籍市場でステップアップも期待される。フランス『レキップ』は4月、エメガに対してニューカッスルが関心を示していると報じていた。さらに、ストラスブールと同じく『BlueCo』が所有するチェルシーも連絡を取っているようだ。この夏、プレミアリーグに上陸する可能性は日に日に高まっている。

    荒削りな印象もあるが、確かな輝きを放っているエメガ。まだそれほど知名度は高くないが、今後のフットボール界を席巻してもおかしくはない。そう感じさせる逸材だ。