Ibrahimovic van der Vaart(C)Getty images

「今度はわざと両足をへし折ってやる!」イブラヒモヴィッチvsファン・デル・ファールト、憎しみ合うキッカケとなった事件

緑色のネットには、2本の黒いテープで固定された宿敵の写真が貼られている。ラファエル・ファン・デル・ファールトはもう一度深く息を吸い込み、クラブを振りかぶって、ズラタン・イブラヒモヴィッチの顔にゴルフボールを叩きつけた。そして右拳を高く突き上げている。

2012年、当時29歳だったファン・デル・ファールトは、トッテナム時代に出演したテレビ番組で「これまでゴルフをしたことはなかったけど、すぐに打ったよ」と子どものように喜んでいた。

なぜ、アヤックス時代に共闘したこの両者は長年に渡って憎しみ合うことになったのだろうか?

  • 2004年8月の事件

    おそらく彼らは、ずっと以前から密かにいがみ合っていたに違いない。その対立が初めて公になったのは、2004年8月中旬の親善試合だった。当時アヤックスに所属していた2人は、それぞれの代表チームのユニフォームを着て同じピッチにいた。オランダ代表がホームにスウェーデン代表を迎えての一戦だった。

    試合開始直後、イブラヒモヴィッチがボックス手前でボールを奪うと。ファン・デル・ファールトを含む数選手が彼にタックルを見舞った。イブラヒモヴィッチはボールをキープしようとしたものの、スリップしてバランスを崩すことに。そして立て直そうとした瞬間、ファン・デル・ファールトの足首を蹴ってしまった。

    これが意図的だったのか、そうではなかったのか……真相は本人にしかわからない。審判はプレーを続行し、マティアス・ジョンソンがスウェーデンに先制ゴールをもたらした。そしてファン・デル・ファールトは担架で運ばれ、そのまま病院へ搬送されている。

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  • 決定的な事件

    そして試合翌日、ファン・デル・ファールトは故意に負傷させられたと公に非難した。一方でイブラヒモヴィッチは、直後に電話をかけて「君の負傷は残念だが、意図的なものじゃない」と伝えている。しかし、オランダ代表MFはそれをうまく理解できなかったようだ。その後も意図的に蹴られたと繰り返し主張している(数年後の『talkSPORT』のインタビューではそれを否定し、代わりに本人へ謝罪したとも主張しているが…)。

    この対立は、アヤックスのロッカールームで再び顔を合わせた時にさらに激化した。イブラヒモヴィッチは「もう一度そんなことを言うなら、両足をへし折ってやる! 今度は故意にな!」と怒鳴りつけた。ファン・デル・ファールトは、本人曰く「私も怒鳴り返して、すぐにその場を立ち去った」そうだ。

    こうした事件がきっかけとなり、両者の関係は破綻。長年憎しみ合うことになった。当時のアヤックスのロッカールームにも深い亀裂が走ったという。ファン・デル・ファールトは、「彼の味方をする者もいれば、私の味方もいた。結局、彼が去らなければならない状況になった」と語っている。世界的な注目を集めていたイブラヒモヴィッチは、結局2004年にユヴェントスへと移籍した。

  • 世紀のゴールの瞬間は…

    しかしあの事件からイブラヒモヴィッチの移籍まで、アヤックスでは2試合が残っていた。もちろんファン・デル・ファールトはケガのために欠場。一方のイブラヒモヴィッチは、NACブレダ戦で歴史に残るゴールを決めた。相手を次々に抜き去って、夢のような独走弾を叩き込んでいる。

    世紀のゴールにスタジアム中が熱狂する中、カメラはVIP席を映し出した。そこには、無表情で座るファン・デル・ファールトの姿があった。

    イブラヒモヴィッチは「あいつの反応はあいつの問題。俺は全く気にしていなかった。翌日にはユヴェントスと契約したしな」と語った。それ以来、お互いに別々のチームに所属しながら、長年に渡って憎しみ合うことになっている。

    なお、現在の両者の関係は正常化しているとのこと。2024年、ファン・デル・ファールトは「彼は嫌なやつだった。私は嫌いだった。だが、彼のゴールはいつも楽しんでいた」と振り返っている。しかし、依然として直接会うことはないとのこと。

    「私は彼を心から尊敬している。いつか再会して、あのことを笑い飛ばしたい。私は大きな過ちを犯したし、彼もそうだ。お互いに若く、巨大なエゴがあったんだ。時にはゴルフクラブを握って、お互いの顔にボールを打ち込むことなんてあったしね……」

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