bundes_top(C)Getty Images

ブンデスリーガ再開、日本代表W杯戦士たちに注目。絶対的なキング、救世主的存在、正念場…それぞれの現状は?

  • kamada(C)Getty Images

    鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)

    鎌田大地自身はカタールワールドカップでのプレーパフォーマンスに満足していないかもしれない。それはアイントラハト・フランクフルトでは大会直前まで好パフォーマンスを続け、自身もワールドカップでの飛躍に半ば確信に近い感情を抱いていたからだ。

    「26歳で迎える今回の大会は年齢的にも絶好のタイミングだと思いますからね」

    そう語っていた鎌田はカタールで、躍進する日本代表の黒子的な役割を担うことになった。間違いなくチームの中軸として重要な責務を負い、実際に日本代表が戦った全4試合のピッチにも立った。ただし、森保一監督率いる日本代表で見せた彼のプレーは、現所属クラブであるフランクフルトでの役割とはかなり様相が異なった。今季のフランクフルトでの鎌田はチーム全体をコーディネイトする絶対的な”キング”として君臨している。したがって”カタールの鎌田”は、今の彼の実像を表してはいない。

    フランクフルトのオリヴァー・グラスナー監督は昨年8月の今季ブンデスリーガ開幕からの試行錯誤を経て、ランダル・コロ・ムアニの1トップ、マリオ・ゲッツェとイェスパー・リンドシュトロームのインサイドハーフというアタッカー陣の後方に位置するダブルボランチの一角に鎌田を据える超攻撃的布陣の機能性を高めることに成功した。ミドルエリアを縦横無尽に駆ける権利を得た鎌田は、そのポジションで新境地を開拓し、攻守両面で多大な影響力を発揮するキープレーヤーへと成長を果たした。

    鎌田が所属するフランクフルトのブンデスリーガ再開初戦はホームでのシャルケ戦。日本代表キャプテンの吉田麻也がバックラインを仕切る相手に対し、獰猛なフランクフルト攻撃陣の背後で”ヒットマン”の眼差しを宿した鎌田が手ぐすねを引く。不完全燃焼だったカタールでの戦いを終え、ここから鎌田大地のプロサッカー人生第2章が始まる。

  • 広告
  • endo(C)Getty Images

    遠藤航(シュトゥットガルト)

    日本代表の大黒柱として尽力した遠藤航がカタールW杯で抱いた落胆は周囲の想像以上に大きなものだったように思う。大会前、彼はこの大会での日本の躍進を確信していたし、だからこそグループステージ初戦のドイツ代表戦や同第3戦のスペイン戦勝利も必然なものと受け入れていた節がある。そして決勝トーナメント・ラウンド16のクロアチア代表戦も相手をリスペクトしつつ、それでも勝利できない相手ではないと威風堂々と立ち向かって死闘を演じた。そして沈着冷静でPKが得意な遠藤はPK戦の最終キッカー・5番手として控えたが、結局彼にキックの機会は与えられず、日本代表は無念の敗退を喫した。

    それでも遠藤は本来の主戦場であるドイツ・ブンデスリーガでまた、平然と自らの職務を遂行するだろう。現在のシュトゥットガルトはリーグ成績が伸び悩み、ペジェグリーノ・マタラッツォ監督が解任され、ミヒャエル・ヴィマー暫定監督を経てウィンターブレイク明けからハンブルガーSV、ヴォルフスブルク、そして2010-2013にシュトゥットガルトの指揮官を歴任したブルーノ・ラッバディア監督を招聘して巻き返しを図る。現地誌の『Kicker』ではラッバディア監督が引き続き遠藤にキャプテンマークを託すとも報道されており、遠藤は残留争いに巻き込まれているチームの精神的支柱としても高い影響力を及ぼすだろう。何より遠藤は昨季のブンデスリーガ最終節で残留を決める劇的なヘディングシュートを決めており、すでに正念場での神通力を内外に示している。

    表向きはクールに、それでも内面は熱く。遠藤は彼らしい所作で、ヨーロッパの舞台に君臨し続ける。

  • ito(C)Getty Images

    伊藤洋輝(シュトゥットガルト)

    伊藤洋輝は良い意味で自信家だ。ドイツの舞台でも一切物怖じせず、チームメイトに指図し、敵には躊躇なく個人勝負を仕掛ける。彼のバックボーンには自らが備えるプレースキルへの絶対的な信頼があり、それをピッチ上に落とし込めばあらゆる事象を必ず克服できると思っている。

    ブンデスリーガのミックスゾーンでの伊藤の振る舞いも良い意味で不敵だ。しぶしぶ取材対応に応える仕草をしながら、結局時間を掛けて丁寧に質問に答えてくれる。そして、その発言の節々にドイツ・ブンデスリーガで戦う自負が垣間見られる。

    2021年7月1日にジュビロ磐田からシュトゥットガルトへ期限付きで移籍した伊藤は短期間でその存在価値を高め、左ストッパーのレギュラーを奪取して完全移籍を成し遂げ、日本代表に選出されてカタールW杯にも出場した。

    しかし、今冬の伊藤はドイツでの初めての試練に直面している。ブンデスリーガ第10節のボーフム戦で今季初のスタメン落ちを喫すると、続く第11節のドルトムント戦ではベンチ入りメンバーからも外れた。第12節以降はミヒャエル・ヴィマー暫定監督がシステムを3-3-2-2から4-3-3へ変更したことでセンターバックの一角としてスタメンに復帰したが、ウィンターブレイク明けからチームの指揮を執るブルーノ・ラッバディア監督が前任者と同じシステムを踏襲するかは分からない。

    ただし、一時伊藤からストッパーのレギュラーポジションを奪取したかに見えたダン・アクセル・ザガドゥが負傷離脱した影響もあり、再開初戦のマインツ戦では伊藤のスターティングメンバー入りが予想されている。まずは、その仕切り直しのゲームで、伊藤は自らの力を再び内外に誇示しなければならない。

  • ENJOYED THIS STORY?

    Add GOAL.com as a preferred source on Google to see more of our reporting

  • asano(C)Getty Images

    浅野拓磨(ボーフム)

    昨年9月のドイツ・ブンデスリーガ第6節・シャルケ戦、試合開始から僅か4分を経過したところで右膝の内側靭帯を断裂した浅野拓磨は、それでも悲願のW杯出場を目指して懸命にリハビリに励んで森保一監督の指名を受け、日本代表メンバー入りを果たした。そしてドイツ代表戦で値千金の逆転ゴールを決めた彼は、これまで自らの力を認めてこなかった者たちに対して感情を爆発させ、プロサッカー選手としての矜持と意地を示した。

    普段の浅野はエキセントリックな性格ではなく、むしろ思慮深く、周囲を慮る温和な人物である。そんな浅野が激しく感情を爆発させた事実に、これまでの彼が被ってきた精神的負担やプレッシャーの苛烈さをうかがい知ることができる。 

    ボーフムの浅野は明確にチームの主軸だ。ただし今のボーフムはチーム全体にアラート信号が鳴り響いている。ウィンターブレイク前までのリーグ順位は15試合を終えて4勝1分10敗の勝ち点13で降格圏の17位。最下位のシャルケとは勝ち点4差あり、ブンデスリーガ2部・3位との入れ替え戦に回る16位・シュトゥットガルト、そして残留圏の15位・ヘルタ・ベルリンとは勝ち点1差と、確かに挽回の余地は多々ある。しかし一昨季の1部昇格の功労者であるトーマス・ライス監督が成績不振で解任され、暫定監督を挟んでトーマス・レッシュ新監督が率いてからは5勝4敗と勝ち越しているものの、未だ降格圏に位置している状況は看過できない。

    それでも、チームが窮地に陥る中で、負傷が癒え、W杯で得難い経験を積んだ浅野が戻ってくる。これまで主に右ウイングで起用されてきた浅野を、レッシュ監督がどう評価するのか。いずれにしても浅野は、チームの救世主的存在としてブンデスのピッチに再び立つ。

  • yoshida(C)Getty Images

    吉田麻也(シャルケ)

    シャルケの吉田麻也は苦境に喘ぐチームの最後尾で奮闘を続けている。その中で、ドイツ・ブンデスリーガで最下位に低迷し、現状では降格最有力という不名誉なレッテルを貼られているチームのバックラインを束ねる辛苦は想像を絶するものがある。

    シャルケの吉田は大声で仲間にコーチングの声を発する姿が度々見られる。15試合で32失点はボーフムの同36失点に次ぎリーグワースト2位。守備整備が急務な中、シーズン序盤のシャルケは吉田と組むセンターバックのパートナーがなかなか決まらずに大量失点を重ねていた。

    しかし、ボーフムを解任されたトーマス・ライス監督が10月下旬に電撃的にシャルケの指揮官に就任したのを境にヘニング・マトリチャーニが左CBで固定されてからは守備が安定してきた感がある。その間のリーグ戦成績も1勝4敗と結果が出ていないが、敗戦したゲームはいずれも2失点以上喫しておらず、W杯開幕直前の第15節・バイエルン・ミュンヘン戦も時間帯によっては攻勢を強める中で0-2のスコアで終えている。

    吉田にはチームリーダー的な役割をも当然求められている。今季のチームキャプテンはエースストライカーのシモン・テロッデだが、フィールドプレーヤーの最後尾に位置する吉田がリーダーシップを取る意味は大きく、チーム全体を引き締める効力を高めている。英語でのコミュニケーションも問題無し。彼自身、初めてのブンデス挑戦でも気後れする所作は全く見られない。

    シャルケのリーグ再開初戦は鎌田大地、ランダル・コロ・ムアニ、マリオ・ゲッツェらを擁する強敵のアイントラハト・フランクフルトが相手だが、その強力アタッカー陣を止めることができれば、吉田もチームも自信を取り戻せるだろう。

    シーズンはまだ折り返したばかりだ。ドイツ国内屈指の人気を誇るノルトライン・ヴェストファーレン州の雄が、ここから反撃を開始する。

  • doan(C)Getty Images

    堂安律(フライブルク)

    フライブルクのゲームを現地で実際に観戦すると、堂安律が如何にチーム内で信頼を得ているかが如実に分かる。例えば左サイドバックのクリスティアン・ギュンターが自陣奥深くでボール保持すると、約80メートルくらい対角に離れた小柄な堂安が手を上げてボールを要求している姿が見える。ギュンターはそれを視認するやいなや、間髪入れずに強烈なサイドチェンジフィードを放ち、堂安の足元にボールをピタリと付けてみせる。

    『堂安ならば一発で戦況を打開し、必ずチャンスを作ってくれる』。チームメイトの誰もが堂安の実力を深く認識している。近接する仲間も、遠く離れた味方も必ず堂安のことを探している。現在のドイツ・ブンデスリーガで2位に躍進し、UEFAヨーロッパリーグでも決勝トーナメント進出を決めたフライブルクで、堂安はその影響力を格段に高めている。

    知将と謳われるフライブルクのクリスティアン・シュトライヒ監督からの信頼も絶大だ。過密日程の中でも堂安を右ウイング、もしくは右サイドMFのファーストチョイスに定める指揮官は、攻撃の担い手として、あるいはフィニッシャーとして堂安に攻撃の全権を託している感がある。そして堂安もその期待に応え、小さな身体からは想像できない鋼のようなフィジカルと高速スピードの両輪を駆使したドリブルで敵陣を切り裂き、返す刀で相手の急所スペースへ飛び込んで、W杯のドイツ代表戦で見せたような機敏なボレー、あるいはスペイン代表戦で見せた豪快な左足シュートを放って相手ゴールを強襲する。

    ブンデスリーガでの堂安は個人勝負で圧倒的な力を見せつける正真正銘のタレントだ。彼の視界を遮るものは何もない。ヨーロッパ制覇の夢、そしてブンデスリーガ10連覇中のバイエルン・ミュンヘンを盟主の座から引きずり落とす最右翼のチームで、彼の輝きはますます増していくだろう。

    フライブルクの直近の注目試合はリーグ再開から2戦目のホーム、アイントラハト・フランクフルトのゲームだ。個人的な注目はずばり、フランクフルトのリベロ・長谷部誠と堂安のマッチアップ勝負である。

  • itakura(C)Getty Images

    板倉滉(ボルシア・メンヘングラードバッハ)

    昨季、ブンデスリーガ2部・シャルケでの板倉滉のプレーパフォーマンスは凄まじかった。2部首位を堅持していたチームの中で、板倉はバックラインに位置しながら半ばプレーメーカーとして振る舞い、チーム全体を束ねる統率者と化していた。抜群の基本技術、意外性のあるプレー選択、そしてディフェンダーの絶対条件であるフィジカルと、多岐に渡るプレースキルを高次元で兼ね備えたニュータイプのDFとして、彼の評価は月日を経る毎に高まり、ついにはシャルケを1部へと復帰させる原動力となった。

    シャルケは当然マンチェスター・シティからのレンタルで所属している板倉の完全移籍での獲得を目指したが、経営難に喘ぐクラブは移籍金が高騰した板倉の保有が叶わなかった。しかし彼が示した確かな実績を他のブンデスリーガクラブが見逃すわけもなく、シャルケと同じくノルトライン・ヴェストファーレン州に属する街をホームとするボルシア・メンヘングラードバッハが板倉の獲得に成功し、晴れて2022-2023シーズンで戦う舞台が整った。

    しかし、ここで板倉にアクシデントが発生する。シーズンが開幕し、当然のようにセンターバックのレギュラーとして試合出場を続けていた最中の9月中旬のトレーニングで左膝内側側副靱帯損傷を負い、カタールワールドカップが迫る中で約2か月の戦線離脱を強いられたのだ。

    それでも板倉は過酷なリハビリを経て日本代表メンバーに選出され、グループステージでは吉田麻也と組んでバックライン中央に立ち続けた。ただ、シャルケやメンヘングラードバッハでのプレーを観たきた者からすると、カタールでの板倉は万全の状態ではないように思えた。スペイン代表戦で警告を受けて累積で決勝トーナメント・ラウンド16のクロアチア代表戦に出場できないことを知った板倉はロッカールームで号泣したが、それは『まだまだ自分の力はこんなものじゃない』という焦燥にも似た思いが内包されていたようにも思う。

    おそらく不完全燃焼で終わったカタールでの戦いを経て、板倉はメンヘングラードバッハの主軸として新たなる目標へと向かう。フィジカル勝負の傾向が強いブンデスリーガで、ファンタジックなセンターバックがセンセーションを巻き起こす。

  • tanaka(C)Getty Images

    田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)

    昨季、川崎フロンターレからドイツ・ブンデスリーガ2部のフォルトゥナ・デュッセルドルフへ期限付き移籍で加入した田中碧は、チーム成績が伸び悩む中で彼自身のプレーパフォーマンスも停滞し、満足のいく結果を得られなかったように思う。もちろんブンデスリーガ2部特有のフィジカル勝負や、シンプルに縦へ速く、そして空中戦バトルが頻発するゲーム傾向に晒される中で、本来の田中が備えるポテンシャルを十全に発揮するタイミングをなかなか掴めなかった面もある。

    それでも、昨年4月末にクラブが買取オプションを行使して完全移籍契約を交わしてから迎えたW杯シーズンの今季、田中は昨季よりもハイペースで出場時間を伸ばし、主に3-1-4-2の右インサイドハーフでチームの主軸を成している。また、真横の左インサイドハーフでアペルカンプ真大が起用されている点も田中のプレーレベルを引き上げているのかもしれない。アンカーのマルセル・ゾボトカと形成する中盤トライアングルは今季のデュッセルドルフの生命線であり、昨季途中からチームを指揮するダニエル・ティウーヌ監督も田中、アペルカンプ、ゾボトカの3人に全幅の信頼を置いている。

    17試合を終えた時点のデュッセルドルフの成績は8勝2分7敗の勝ち点26で7位に位置し、首位のダルムシュタットと勝ち点10差、2位・ハンブルガーSVとは勝ち点8差、そして1部・16位との入れ替え戦に回る3位・ハイデンハイムとは勝ち点7差と、まだまだ1部昇格の可能性を十分に残している。

    チームにとっても田中にとっても、重要なシーズンが続く。

    <1/20(金)ブンデス再開!再開節は日本人所属クラブ全試合無料配信!>『ブンデスリーガLIVEアプリ』7日間無料トライアル実施中!
  • bundes_kv_new_pt1_light_02

    ブンデスリーガ再開節、スカパー!が日本人所属クラブ全試合無料配信

    詳細はコチラ

0