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ラ・リーガ制覇のバルセロナ。強固な守備構築も、チャビに残された課題は魅力的な攻撃の復活

2021年11月にバルセロナの職を引き受けたチャビは、クラブとの深いつながりを口にした。自分は根っからの「クレ」であると断言し、彼はファンが何を求めているかを理解していた。勝つこと、そしてその過程で感動を与えるという使命感も知っていた。彼はヨハン・クライフやペップ・グアルディオラについて言及していたが、最も重要なことは、「バルサのDNA」を体現すると強調したことだ。

彼の言葉を借りれば、それはかつての栄光のサッカーに戻ることを意味する。バルサは勝つだけでなく、その姿も美しく見せると、彼は主張した。この主張は、ロナルド・クーマンの下で、低調かつ、うまくいかないフットボールを強いられてきたファンにとって、安心感を与えるものだった。ファンは、それがトータルフットボールでもティキ・タカでもないことは知っていたが、きれいなものになるはずだった。

しかし、今のバルサはそうではない。エスパニョールとのダービーで4-2と勝利し、タイトルを決めたにもかかわらず、ブラウグラナはほとんど無味乾燥で理路整然としている。

3年ぶりのラ・リーガ優勝という結果が示すように、非常に優れたチームであるが、グアルディオラというよりは、ジョゼ・モウリーニョのようなチームである。チャビは最初の目標を達成したが、いわゆるバルサ流のやり方ですべてを行うことができないことが露呈してしまった。そのため、ファンにとって未来はそれほどワクワクさせるようなものとはならないかもしれない。

  • Xavi - BusquetsGetty

    強固な屋台骨

    チャビは評価されるべきだろう。バルセロナは長い間、まとまったアイデンティティを欠いており、今季が始まった当初は、ディフェンディングチャンピオンで偉大なライバルであるレアル・マドリーに大きく遅れをとっているように見えた。少なくともスペインでは、純粋なフットボールのクオリティを競う戦いにおいてバルサは常に挑戦者だった。

    指揮官はすぐに、マドリーを力で打ち負かそうとしても勝てないことを悟った。その代わり、堅実で、現実を見るようにした。ボールをよく保持し、瞬間的に目を見張るようなサッカーができることも示したが、このチームは強固な背骨と卓越したディフェンスで成り立っている。今シーズン、リーガのホームでは2失点しか許しておらず、GKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンはリーグ最多のクリーンシート記録を樹立している。

    一方、セルヒオ・ブスケツは、ある種の復活を遂げた。1年半の間、守備の回復を待ち望んでいたブスケツは、より深い位置でプレーすることを許されるようになった。もうすぐ退団するキャプテンには、インターセプト、タックル、パスが要求されるだけだ。これらは、彼が得意とするところである。

    ガビの進化も助けになった。ゴールデンボーイに輝いたガビは、バルセロナの伝説的な選手と比較されることが多いが、実際は異なる。チャビやアンドレス・イニエスタのような選手でなく、縮小され、技術的に進歩した元レアル・マドリーのペペのような存在である。

    タックルに飛び込み、相手を執拗に追いかけ回し、90分間嫌がられるのだ。相手にとっては完全な厄介者だが、それが功を奏し、バルサに必要な中盤の噛み合わせを与えている。

    ロベルト・レヴァンドフスキは、以前は欠けていたフィジカルを前線で発揮し、その強靭な体躯を活かしてCBを攻撃することを躊躇しない。

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  • AraujoGetty Images

    想定外の領域での改善

    チャビの就任は、バルセロナの攻撃的な選手たちの育成に何を意味するのか、楽観的に受け止められていた。ガビとペドリの技術的な向上、そして、低迷していたフレンキー・デ・ヨングの復活のカギになると考えられていたのである。しかし、チャビが最も苦手としていた守備の分野で、バルセロナが最も成長したのは嬉しい誤算だった。

    その最たるのが、ロナルド・アラウホだ。ウルグアイ代表のセンターバックは、トップクラスのディフェンダーになるための身体能力を備えていたが、その直感と技術的な能力はしばしば疑問視されていた。ケガが多く、契約満了が迫っており、ボールを扱うのが苦手なこともあって、その危険性は増すばかりだった。しかし、その後、彼は新しい契約を結び、健康を維持し、さらに重要なことに、著しく落ち着いた選手となった。

    アラウホは現在、欧州の同ポジションで最高の選手の一人であることは疑いない。彼のスピードと運動量は、より速い展開に対応することができ、その一方で、向上し続けるパス能力によって、バルサに在籍していた初期よりもはるかにプレスに強くなっている。

    同じことが、アンドレアス・クリステンセンにも言える。チェルシーが手放すことを望んでいた選手であるクリステンセンは、フリーエージェントで獲得した幸運な戦力から、バルセロナの4バックの要となる選手に変身した。アラウホの守備的な存在感から恩恵を受けているのは確かだが、彼の補完的なパス能力は、このコンビのバランスを見事に取っている。

    確かに、最終ラインにはいくつかの問題がある。若手のアレハンドロ・バルデは攻撃的ゆえにカウンターアタックに弱いことが多い。ジュール・クンデは即席の右サイドバックで、本人も苦戦していることを公言している。それでも、テア・シュテーゲンを中心とした守備陣はリーガ制覇に大きく貢献した。

  • Dembele LewandowskiGetty Images

    不確実な攻撃

    後方が強固であることは、必ずしもクラブの理念に対する大きな裏切りではない。バルセロナは長年にわたり、記憶に残るディフェンスユニットを編成し、サッカー史上最高のセンターバックを何人も擁してきた。

    しかし、今のチームはボールを保持することにおいてそれほど秀でてはいない。

    リオネル・メッシの全盛期とグアルディオラの革命を知るファンは、崇高な攻撃サッカーを常に求めている。それは、チャビを含むバルセロナのすべての監督に課せられた重荷でもある。だが結局のところ、メッシ抜きであのような戦いを再現することは不可能なのだ。

    そのため、チャビは自分のイメージでバルサの攻撃を構築しようと試みてきた。それは果たしてレヴァンドフスキの加入により、ひとつの正解を見つけた。

    公式はこうだ。ウスマン・デンベレの1対1の駆け引きでサイドからチャンスを提供する。ペドリとデ・ヨングが裏を狙うパスを出し、レヴァンドフスキが中央で高いフィニッシュ能力を活かすというものだ。

    しかし、欠点もある。バルセロナは中央での創造的な存在感を欠いており、チームが自分たちに対して展開しがちな低い守備ブロックに直面したとき、しばしばアイディアがない。また、左ウイングにもまとまりがない。バルデは運動量が多いものの、レヴァンドフスキやセントラルMFとの連携を確立していない。右サイドのクンデは、攻撃的なオプションを提供することができず、CBに近い存在だ。

    その結果、低い得点力ながら快適な試合が続いた。バルセロナは今シーズンのラ・リーガで14試合を1点差で勝利し、1試合の平均得点は2点以下、下位のクラブに対しても大差での勝利は少なかった。要するに、バルセロナは守備の面では説得力があるが、その他の面では極めて不確実な存在なのである。

  • Lionel Messi Barcelona Champions League trophyGetty

    解決策は?

    そのため、過去2年間、クラブ内部の自然な反応としてメッシに目を向けるようになった。この夏、メッシが獲得できる可能性は十分にあり、年俸分のスペースを確保することは金銭的に不可能に近いが、ワールドカップ優勝者が来シーズン再びカンプ・ノウでプレーしている可能性はある。

    バルサが抱える攻撃の悩みを解決するために、史上最高のクリエイティブ・プレーヤーを獲得するのは、理にかなった案だ。

    しかし、パリ・サンジェルマンでみられたように、そう単純な話ではない。メッシは素晴らしいことをすることができるし、するつもりだが、そのためには周囲の人間が犠牲になる必要がある。

    チャビは監督として抜け目のない戦術家ではあるが、バルセロナの現在の攻撃的脅威にメッシを加えながら、バランスを確保する明白な方法をすぐに見つけるのは不可能に近い。メッシが慣れ親しんだ地ですぐに結果を残す可能性は十分にあるが、その分、他の選手が犠牲になることは間違いない。

    実際のところ、どうなるか予測するのは難しい。だが、言えることはメッシがバルセロナ全体を向上させる、または優れた攻撃スタイルを取り戻すという保証はどこにもない。

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    来年は?

    バルセロナの未来は決して安泰ではない。

    現在、ライバルであるレアル・マドリーがさらなる向上を果たそうとしている。今夏、ジュード・ベリンガムとの契約を目前にしており、さらに多くの選手が後に続くかもしれない。ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ、フェデ・バルベルデも成長していき、すでにワールドクラスの仲間入りをした。また、アトレティコ・マドリーはシーズン後半に調子を取り戻したようで、来年はより厄介な相手となるはずだ。

    ブラウグラナは改善しなければならない。今シーズンは、タイトルを獲得できる素晴らしいシーズンであり、成功に恵まれず、財政破綻の危機に瀕していたクラブに希望の光を灯した一年だった。チャビは最初の任務を果たし、カンプ・ノウに価値あるトロフィーをもたらした。

    しかし、2つ目の課題である、バルセロナらしい攻撃的なサッカーを約束したことは、いまだ達成されようとしていない。そして、それこそが真の問題かもしれない。

    今のところ、バルサは見ていてかなり退屈で、現在のスタイル、つまり攻撃の噛み合わせと気迫の欠如は持続不可能である。もし、当初に主張したバルサのDNAを見つけられなければ、ブラウグラナは長くトップに立つことはできないかもしれない。