Club World Cup qualification debate GFXGetty/GOAL

バルセロナもリヴァプールもいないのに…クラブワールドカップは本当に「世界一を決める大会」と言えるのか?

今年4月、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長はローズボウルの演壇に上がり、FIFAクラブワールドカップ(CWC)2025について高らかに宣言した。6つの連盟に所属する32クラブが参加するこの大会は、「世界86カ国に所属する選手たち」が集まり、「歴史上初めて世界一を決める大会」になると――。

果たして、本当にそうなのだろうか? 本当に世界中のトップクラブがアメリカの地に集結し、勝者こそ「世界最高のクラブ」と言えるのだろうか?

  • FBL-FIFA-CWC-LAFC-AMERICAAFP

    参加条件

    フットボールは世界的なスポーツではあるが、経済格差によって近年はますます欧州中心の傾向が強まっている。だからこそクラブW杯を刷新するにあたり、FIFAは世界で最も有名なクラブ(つまりヨーロッパの強豪だ)たちの参加を保障する必要があった。

    新生クラブW杯の基本的な参加条件は、2021年~2024年までの間に各大陸連盟のタイトルを獲得した全てのチーム。しかし、FIFAは各連盟の相対的な強さに基づいて追加の招集枠を付与した。これにより、OFC(オセアニアサッカー連盟)から1クラブ、CAF(アフリカサッカー連盟)、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)、AFC(アジアサッカー連盟)から4クラブ、CONMEBOL(南米サッカー連盟)から6クラブ、UEFA(欧州サッカー連盟)から12クラブが参加することになっている。

    しかし残念ながら、この“予選”プロセスは明らかな意図を感じるものとなっている。

  • 広告
  • Al Ahli v Kawasaki Frontale: AFC Champions League Elite FinalGetty Images Sport

    “現在の”最高のチーム

    過去4年間の結果を考慮するというのは理解できるが、これが“現在の”最高のチームを集めるというコンセプトには適していない。

    例を上げると、モンテレイ(メキシコ)は2021年のCONCACAFチャンピオンズカップで優勝して以来、いかなるタイトルも手にしていない。今年のリーガMXでも、プレーオフ準々決勝を突破できなかった。これはウィダード(モロッコ)も同じであり、2022年のCAFチャンピオンズリーグを制したものの、今年はこの大会にすら出場できていない。

    一方で、CAF(ピラミッドFC)、CONCACAF(クルス・アスル)、AFC(アル・アハリ)の現王者はこの大会に参加できない。これがインファンティーノが言う「世界最高の32チームがアメリカに集結する」大会なのだろうか。

  • FC Barcelona v Villarreal CF - La Liga EA SportsGetty Images Sport

    王者不在の大会

    UEFAの参加12チームも同じだ。

    幸いにも今季のチャンピオンズリーグで決勝に進んだパリ・サンジェルマンとインテルは、UEFAランキングのおかげで参加権利を得ている。しかし、イングランド、イタリア、スペイン、ポルトガルの現チャンピオンも不在である。

    3シーズンで2度もスクデットを獲得したナポリ、ポルトガルリーグ連覇を達成したスポルティングCP、そして宿敵レアル・マドリーを1シーズンで4度も撃破し、ラ・リーガとコパ・デル・レイのニ冠を達成したバルセロナもいないのである。

  • FBL-ENG-PR-LIVERPOOL-CRYSTAL PALACEAFP

    リヴァプールも参加できず

    そして、今季のプレミアリーグを独走したリヴァプールも参加しない。UEFAの出場枠が与えられた時点のUEFAランキングは8位(現在は4位)だったが、各協会から最多2クラブというルールによって権利を得られなかった。代わりに出場するのは、2021年のチャンピオンズリーグ王者であるチェルシー。だが彼らは同大会に2年間出場しておらず、ビッグイヤー経験者もリース・ジェームズしか残っていない。

    リヴァプール、バルセロナ、ナポリといったトップクラブが参加できず、代わりにUEFAランキング44位のレッドブル・ザルツブルクが参加する……やはり違和感は拭えないだろう。

  • FBL-MLS-USA-MIAMI-COLUMBUSAFP

    歪んだ開催国枠

    そして極めつけは、クラブW杯の「開催国枠」だ。

    当初は2024年のMLSカップ優勝チームに与えられるものと予想されていたが、プレーオフが始まる前に、インテル・マイアミがサポーターズ・シールド(MLSレギュラーシーズンで最高成績を収めたチームに贈られる賞)を獲得したため、彼らに権利を与えることになっている。

    この決断の背景は、間違いなくリオネル・メッシだろう。インファンティーノは知名度や集客率を上げるため、史上最高の選手とされるフットボール界のアイコンの参加を強引に認めたのだ(大会前に「参加クラブの1つがクリスティアーノ・ロナウドを獲得する」と発言したことがこれを裏付けている)。

    会長はインテル・マイアミが「正当な参加者」であって「ピッチ上最高のクラブ」と主張しているが、結局12月7日にMLSカップ優勝を達成したのはLAギャラクシーだ。インテル・マイアミといえば、プレーオフ1回戦で敗退している。そのタイミングで「アメリカで最高のクラブは?」と聞いた時、インテル・マイアミの名前を挙げるファンはほとんどいないはずである。結局彼らは「人気」と「金」のため、都合良く参加条件を捻じ曲げていったのである。

  •  President of FIFA Gianni Infantino speaks next to the trophy during the 2025 FIFA Club World Cup Draw ceremony Getty Images

    “誇大広告”

    確かに、参加チームの多様性を考えれば数多くの国から様々なクラブが参加することは大きな意義もある。そして、チャンピオンズリーグや各国リーグで必ずしも「最高」のクラブが優勝するわけではない。それはフットボールファンであれば誰もがわかっていることだ。

    だが問題は、FIFAとインファンティーノがこのクラブW杯の「権威を上げるため」、もっと言えば「カネを集めるため」に出場枠を都合の良いように変更したことである。はっきり言って、この大会の参加条件に公平性は感じられない。

    そしてリヴァプールやバルセロナもいないこのクラブW杯を、「現・世界トップ32チームを集めた」と宣伝するのは、“誇大広告”と言っても過言ではないだろう。