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18歳の逸材、エイデン・ヘブンとは何者か?アーセナルからマンチェスター・ユナイテッドへ引き抜かれた“Next ピケ”

マンチェスター・ユナイテッドとアーセナル。2000年代前半に覇権を争った両チームは、現在もプレミアリーグを代表する激しいライバル関係を築いてきた。特にマンチェスター・Uは、2012年にロビン・ファン・ペルシ、2018年にアレクシス・サンチェスと当時のエースを引き抜くと、最近では若き逸材にシフト。昨夏には育成組織でゴールを量産していたチド・オビ=マルティンを、そして1月には将来を背負って立つと期待されるセンターバック、エイデン・ヘブンを獲得している。リサンドロ・マルティネスと競争できる逸材として、将来性豊かな18歳をほぼ無料で手に入れたのだ。

マンチェスター・Uは1937年以来、すべての公式戦にアカデミー出身の選手を起用してきた。近年は若手発掘へさらに力を入れており、もちろん自チームのスターになることを期待しているが、将来的に価値を高めて売却することも視野に入れている。今回は、マンチェスター・Uへの移籍が決まったU-18イングランド代表の逸材を特集する。

  • Ayden Heaven ArsenalGetty

    すべての始まり

    ヘブンはロンドン北部で育ち、地元のエドモントン・ユナイテッドに加入。その後ウェストハム・アカデミーに加入し、選手としての第一歩を踏み出した。しかし、フランク・ランパード、リオ・ファーディナンド、ジョー・コール、デクラン・ライスといったスターを輩出した名門の壁は厚く、12歳の時に退団を強いられることに。それでも、ヘブンは諦めなかった。当時のことをアーセナル公式HPで語っている。

    「最初は落ち込んだよ。何年もそこにいたからね。でも、トップチームのアカデミーに戻れる力があると信じていた。僕の物語は終わっていない。まだ先があるってね」

    その後はアマチュアチームでトレーニングを続け、チェルシーのトライアルを受けたが不合格に。またしても挫折を経験した。さらに、フラムへの加入は長距離移動を理由に家族は難色を示す。そして2019年11月、13歳になってまもなくアーセナルがエイルエンド・アカデミーに勧誘し、加入が決まっている。

    「その頃にアーセナルが接触してくれたんだ。運が良かったと思う。まず第一にファンだったし、ヘイルエンドは車で15分なんだ。すべてがうまくいったね。正式に契約が決まった時は最高の気分だった。応援していたクラブと契約できて、母も涙を流して喜んでくれたよ」

    ヘイルエンドでは当初ボックス・トゥ・ボックスのMFとして活躍したが、徐々にポジションを下げ、U-18チームではセンターバックとしてレギュラーを掴んでいる。

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  • Ayden HeavenGetty Images Sport

    大ブレイク

    ユースチームでは順調にステップアップすると、UEFAユースリーグでの活躍が認められ、2023-24シーズンのチャンピオンズリーグ・ラウンド16 1stレグでは遠征メンバー入り。昨夏のプレシーズンツアーにも帯同。マンチェスター・ユナイテッド戦は先制点につながるミスもあったが、メンタリティの強さを発揮。落ち着いたリズムを取り戻し、逆転勝利に貢献している。

    ミケル・アルテタ監督も、ヘブンのパフォーマンスには満足だった。「非常に素晴らしい。17歳でこうしたビッグマッチで同じことができる選手はほとんどいないよ。世界最速の選手とのデュエルに敗れたが、それは起こり得る。しかし、その後の対応、落ち着き、クオリティ、彼が示したボディランゲージは、すべてが素晴らしい。とても満足しているよ」

  • アーセナルの宿敵へ

    新シーズンも引き続きトップチームでトレーニングを積み、10月にはリーグカップのプレストン戦(3-0)で10分間出場した。しかし、アーセナルとプロ契約を結ぶことはなかった。プレミアリーグデビューを果たせない中で、数多くのクラブが接触していたからだ。ブンデスリーガの名門、フランクフルトも練習に勧誘していたことがわかっている。

    しかし、最終的に逸材を射止めたのは、アーセナルの宿敵であった。アーセナルは契約へ向けて最大限の努力を見せたが、1月のマーケット最終盤でオールド・トラッフォードへの移籍が決定。報道によると、ヘブンはトップチームの選手として獲得されたという。

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    最大の強みとは?

    188cmの長身と強靭なフィジカルを誇るヘブンは、セットプレーや空中戦で頼れる選手だ。さらにプレス耐性も高く、ビルドアップでも貢献可能。さらに注目すべきは、そのメンタリティだ。アーセナル番記者チャールズ・ワッツは、前述のマンチェスター・U戦を以下のように語っている。

    「ホイルンドに翻弄された後、彼にとって厳しい試合になると思っていた。だが、そこからのプレーは素晴らしかったね。多くの人が感銘を受けたのは、その苦境を跳ね返すメンタリティだ。挫折を経験したものの、トレーニングで見せた姿勢は関係者の間で絶賛されている。だからこそ、アーセナルは手放したくなかったのだ」

  • 改善点は?

    しかし、彼のプレーのほとんどは左足であり、右足を使うことはほとんどない。トップレベルのDFは両足が使えることがスタンダードになっているため、真っ先に改善すべきだろう。

    またパスの選択肢も近い場所が多く、ロングレンジのパスも覚えなければならない。さらにDFにポジションを移したのは昨シーズンであることを考えると、基本的な守備の技術は学んでいかなければならない。

  • Gerard PiqueGetty

    Next ジェラール・ピケ?

    サー・アレックス・ファーガソンの最大の過ちの1つは、2008年にたった500万ポンドでジェラール・ピケをバルセロナに放出したことと言われている。そしてヘブンは、彼と多くの共通点を持っている。

    身長もほぼ同じで、キャリア初期はMFとしてプレーし徐々にDFへとポジションを移していったのも同じだ。また、キャリア初期に致命的なミスを犯しているのもまったく一緒だ。また、両選手の境遇にもいくつかの共通点がある。当時ピケがユナイテッドのトップチームに昇格する道は、リオ・ファーディナンドとネマニャ・ヴィディッチの強力なコンビによって阻まれていた。一方、ヘブンもガブリエウとウィリアン・サリバという高すぎる壁に直面していた。

    両者には様々な共通点がある。そしてバルセロナへと渡ったピケが何を成し遂げたのかは、一目瞭然だ。ヘブンは偉大な“先輩”を見習うべきかもしれない。

  • Ayden Heaven ArsenalGetty

    “赤い悪魔”の中核へ

    ヘブンは間もなくユナイテッドのトップチームで練習を行う予定だが、コンディション調整のためにU-21チームへの参加も予想される。しかし、トップチームは今すぐにでも左利きのセンターバックを必要としている。シーズン終了までに登録メンバーに名を連ね、FAカップで実力を示すチャンスが訪れてもおかしくはない。うまくいけば、来季開幕までにマルティネスの控えとしてファーストチョイスになることも可能だろう。

    ユナイテッドは、2~3年後にヘブンが3バックを統率すること、オビ=マルティンがエースとしてゴールを量産することを夢見ているはずだ。